過去企画 | ナノ

!高校編A
!合同合宿編



何故こうなったのか。
つゆりは溜息を吐きたくなるのをぐっと堪えた。


「きゃああああーちゃん可愛いっ!」
「次はどの衣装にしようかなー!」
「あっ次はこれにしません!?」


改めてつゆりは思った。
女子って怖いな、と。


事は今から三十分前程遡る。
つゆり、桃井とキセキの世代で何がきっかけでそうなったのか思い出したくないが、兎に角王様ゲームが始まったのだ。


「王様だーれだ!」
「あ、僕ですね」
「黒子っちっスか!
じゃあ命令をお願いするっス!」
「黒ちーん変な命令は止めてよねー」
「それではゲームに面白みが無いでしょう」
「全くだ」
「わ、私!テツ君なら何されても・・・良いよ・・・?」
「桃井ちゃんそれは色んな意味で危ないから止めておいた方が良いよ」
「そういうつゆりも今回はスキルを使うのは無しだからな」
「おいおい僕は戦闘は兎も角、こういうゲームでそんな事をする訳無いじゃないか。
なんなら『実力勝負アンスキルド』を使っても良いんだぜ?」

つゆりが今言ったスキルに黒子達は首を傾げた。
いくら友人関係であろうと一京という膨大なスキルの数を全て把握している訳が無いので無言で彼女に説明を促すと返ってきた言葉は以下の通り。


実力勝負アンスキルド』、スキルを使わないスキル。
詳細は三分間限定で自身のスキルを全面無効化、全面禁止にさせる能力。

不敵な微笑を浮かべるつゆりに赤司はう、と気まずそうに視線をずらす。

「・・・えと、安心院さん赤司君続けて良いでしょうか?」
「ああ、黒子君。
うん構わないよ」
「では・・・三番の方、コスプレしてきて下さい」

三番、と言われ改めて自分の手元に目を移す番号。
緊張と不安が混じっていたが違う番号にほう、と安堵の息を吐く者が数名。
その矢先に声を上げたのは。

「あ、僕だ」
「・・・・・・・・・安心院さんですか?」
「・・・何かの間違いなのだよ」
「・・・え、嘘だろ?」
「うん、ほら」
「・・・本当っスね」

誰もが予想だにしなかった(ぶっちゃけると誰もが黄瀬辺りだろうと予想していた)人物に目を丸くする。
しかしつゆりの、あっけらかんとした「じゃあ着替えてくるよ」と軽いノリで指示通りに動こうとする姿に皆は二の句が告げないまま見送るのだった。



  △▼△



「これで良いかい?」
「・・・か、可愛い!」

着物を纏った姿で現れたつゆり。
艶やかな黒髪と相俟って大和撫子という言葉が相応しいと言える。
つゆりのその姿がさっと顔を赤らめる者数名がいる中、桃井はつゆりの元へ嬉々とした様子で横に立った。

「桃井ちゃん?」
「あーちゃん、髪の毛もいじろう!
私がやってあげるから!後、きちっとこなすんじゃなくてもっとこう・・・!」
「・・・節度が保たれる範囲で宜しく頼むよ」
「勿論!
待っててね赤司君あーちゃんをもっと可愛くしてくるからね!」
「頼むぞ桃井」

即答で返した赤司に満足したのか、桃井は親指を上に立てて再び赤司達の前から姿を消した。
そして根本的なツッコミを誰もしなかったのだが、それに気付いた者は残念ながらいなかった。

それはつまり。

「着物はコスプレとは違うのではないのか」

である。



そして現在。
騒ぎを聞きつけたリコも参戦し、つゆりは着せ替え人形と化していた。
・・・王様ゲームではなかったのか。

つゆりはそう言ってやりたかったが言っても聞いていないだろう。
聞いたとしても黙殺するのが目に見えている。


「出来た!
じゃああーちゃん行こっか!」
「・・・頭が重いんだけど。
ていうかこの道具は一体何処から出てきたんだよ」
『企業秘密!』
「・・・」

企業って何処の企業だ、というつゆりのツッコミは空に霧散した。




そしてこのカオスっぷりにリコと桃井は揃って目を逸らしたくなった。
しまったやりすぎた、と後悔してももう遅い。

「わっはっはっは、一応こう言うべきかな『わっちを買ってくんなまし』って」
「うん分かったー」
「紫原!?」
「お前意味を分かって言っているのか!?」
「黒子っちがあんな命令を出すから・・・!」
「・・・すみません僕もまさかこうなるとは思わなかったです」

阿鼻叫喚、地獄絵図。
そんな四字熟語が似合う空間の中、つゆりの笑顔があくどく輝いている。

「・・・おい何なんだよこの部屋・・・」
「おや花宮君じゃないか」
「っ安心院・・・!?」

花宮が目を見開いたのも無理はない。
何故なら今の彼女の姿は花魁にも似た服装と髪型だったからだ。
・・・何処から調達したんだ、あれか一京分の一のスキルか。

「花宮君、否・・・『旦那様、どうかわっちを買ってくんなまし』」
「・・・(ビシィッ)」
(((((可哀想な奴・・・)))))

豹の眼レオパルドアイ』、邪眼を司るスキルを使った訳でもないのに花宮は見事石化した。
健全な男子高生には刺激が強すぎたらしい。

・・・しかも彼女は絶対に確信犯だ。
そして隣りにいる赤い幼馴染が嫉妬の炎を出しているのは自分達の目の錯覚か。
・・・・・・うん、錯覚で、あってほしい、なぁ・・・。


「・・・つゆり」
「うん?何だい征十郎君?」
「こっちに、来い」
「うん?・・・分かったよ」

無表情でぽん、と自身の隣りを指す赤司につゆりは一瞬間を空けるも、すぐに微笑する。
・・・その微笑だけ見れば絶世の美少女なのに。天使みたいに可愛いのに。
だが残念ながら中身は確信犯の愉快犯だ。
赤司が十手先を見据えているなら彼女は百手先を見据えている。

それ位格の違う相手なのだ。
だがそれ故に赤司は彼女を手元に置きたがる。
最早それは執着と言っても良い。


「それじゃあ征十郎君。失礼するよ」
「?・・・っ」

「ちょっとちょっと!?」
「あーちゃんっ・・・!」

すり、と彼女の華奢な両腕が赤司の首筋に回る。
リコと桃井の静止など気にも留めていないようで、つゆりの行為は続行されたまま。

「大好きだぜ征十郎君!」
「っっ!!」

満面の笑顔ともに贈られる最高の言葉。
赤司にとって最大級の破壊力を持つ言葉により赤司は髪の色と同じ位赤面した。


「――――っっ!」
「わっはっはっはっ、赤面する征十郎君なんてレア中のレアだよ。
黒子君達、写真を撮るなら今だぜ?」
「そうしたいのは山々ですが、殺されたくはないので止めておきます」
「黒子に同感なのだよ」
「てか今この場にいる時点で制裁が来るんじゃないか不安で仕方ないっス・・・」
「赤ちん顔真っ赤ー」
「こんな赤司初めて見るな!流石安心院だぜ!」

キセキ達を一喝したいが顔の熱が中々ひかない。
その事を誰よりも分かっている赤司が顔を上げるのはそれから十分後の事だった。

  彼女は誰よりも無敵で素敵な女帝様!

お待たせしました、200,000hit企画第十九弾は恵様に捧げます!
リク内容には伊月も、と書かれていましたがすみません書ききれなかったですorz
ですが赤司が振り回されるシーンは一番楽しかった(笑
企画に参加して下さり有難う御座いました!

20130721