過去企画 | ナノ

!両想い



「ゲーム?」
「ええ。一緒にやりませんか?」

栞がトキヤの手元を見ると確かにテレビゲームのコントローラーが二つ。
・・・珍しい、というか彼とゲームというのが繋がらない。
それ位レアだ。

「トキヤ君の私物?」
「いえ、ゲーム本体は音也のです」
「・・・・・・因みに何のゲーム?」
「今度発売するゲームですよ。
因みにパーティーゲームです」
「・・・私、ゲームあまりした事がないけど」
「私もありませんよ。
お互い初めてですし、丁度良いのでは?」
「・・・」

ふむ、と細く白い指先が栞の顎に触れる。
数瞬考え込む素振りを見せた後、こくりと無表情で頷いた。

「うん、やる」
「!」
「確か次の仕事は無邪気にゲームに熱中する様子をCMで、って聞いているから良い練習になるし」
「・・・・・・栞さん、休日まで仕事の事を考えなくても良いと思います」
「トキヤ君には負けると思う」


音也や翔辺りがいれば、確実にどちらも職業病だと突っ込まれただろうが、悲しいかな二人にその自覚はなかった。



  ♂♀



「・・・どのキャラクターにしようかな」
「では私はこの緑の恐竜で」
「・・・・・・じゃあ、私は」
「この姫はどうですか?」
「否、その従者のキノコにする」
「・・・」

キャラクターを決めると、次の画面にはミニゲームも含めて沢山の種類のゲームが映った。

「・・・どのゲームにしましょうか?」
「トキヤ君に任せるよ」
「・・・順に見ていきましょうか」

カチカチ、と進めていくと初心者でも簡単に出来そうなものが幾つかあったのでそれを試しにしてみる事に。

「っと、これは」
「ん、」
「っ栞さんそれは卑怯、」
「・・・」


「あ、」
「お返しです、よ!」
「・・・む」


かち、ポチポチ、かこかこ、


「・・・え」
「ふっ・・・」

栞の無表情が一瞬崩れ、きょとりと黒曜石の双眸が僅かに、本当に僅かに瞠るのをトキヤは見逃さなかった。
彼女の表情を直視し、その所為で笑いがこみ上げ声が込み上げてくる。



・・・しまった。


テレビの画面にはトキヤが勝利したという英単語。
その間も栞の表情は徐々に崩れていく。

「・・・トキヤ君・・・」
「すみませ、ですが・・・」

ジト目で自分を見る彼女。

・・・あ、その表情は初めてかもしれませんね。


くつくつと笑うトキヤの胸中は愛しさで溢れてくる。
嗚呼、本当に。


「貴女の、反応が可愛らしくてつい。
すみません」
「・・・可愛くない」
「可愛いですよ」
「笑わないのに?」
「それは貴女の思い込みですよ。
私はよく笑っているところを見ますし、今も少し拗ねているでしょう」
「・・・」

・・・ほら、今もまた。


ぐっと其処で沈黙した彼女の姿に図星だと感付いたトキヤがまた笑ったのは別の話。


+おまけ+

「ねえトキヤー羽島さんがゲームをしてるCM見たー?」
「当たり前です」
「俺全然楽しんでいるように見えないんだけどトキヤどう思う?」
「馬鹿にしているんですか、恋人の表情の見抜けなくてどうします。
・・・結構楽しんでましたね。
ゲームに不慣れなので四苦八苦していましたが」
(・・・やっぱりトキヤ、凄い)

  未体験ゾーン、開拓

お待たせしました、200,000hit企画第十四弾は羅流様に捧げます!
『花雪』はほのぼののイメージなので今回もそれに合わせて書かせて頂きました。
トキヤと主人公ってゲームするというイメージがなかったのでとても新鮮な気分でした(笑
ゲームのイメージは皆様ご存知のアレのつもりです(*^^*)

20130305