過去企画 | ナノ

!高校編A
!霧崎第一生徒
!花宮→主人公



時々、自分達ではない誰かを見ている彼女が気に食わない。
まるで自分達など、自分の事なんて興味が無いと言っているようで。

彼女、安心院つゆりという存在が心から腹立たしくて仕方が無かった。



  △▼△



「なあ合コン行かね!?」

山崎がそう言った場所は体育館。
そして時間帯は放課後。
もっと詳しく言うなら部活の合間を縫っての休憩時間。

そんな山崎の突然の提案に他のメンバーは冷たく一蹴した。

「興味無いな」
「そんな面倒な所なんて行くかバァカ」
「一人で行って来ればー?」

因みに上から古橋、花宮、原の順番である。
そんな容赦の無いチームメイトに山崎は当然吼えた。

「お前等、バスケ以外にももうちょっと協調性を持てよ!」

花宮を筆頭に山崎に思う事はただ一つ。


(きゃんきゃん吼える犬みたいだ・・・)


山崎が聞いたらまた大声で抗議を受けそうな事を内心で思っていると、其処で新たに鈴の音を転がしたような声が体育館の空気を震わせた。


「今日もやってるね山崎君いじり」
「誰だ変な遊びの名前付けるんじゃねぇっ・・・安心院?」
「やっほー山崎君。
試合が終わったって言うから、生徒会の仕事もそこそこにして遊びに来ちゃったよ。
―――そして前々から言っているけど僕のことは親しみを込めて安心院さんと呼びなさい」


体育館のステージに優雅に腰掛けていたつゆりだったが、その身の丈と同じ位の長さを持つ艶やかな黒髪を靡かせながらとん、と床に足をつける。


「なあ安心院もそう思うよな!」
「・・・何の事かよく分からねーけど君が僕の話を聞いていない事は分かったよ」
「オレ等に足りないもの!
安心院、お前なら分かるだろ!?」
「うっさいよ山崎ー」
「何だよその言い方って無いだろ原!」
「ウザい」
「花宮テメエ・・・!
オレ等に足りないものはそう!女だ!
女は潤いだし目の保養にもなる!!」


つゆりは原の力説に溜息を吐きたくなった。
・・・球磨川君とはまた違う、今時の男子高生の思考回路だ。

と、此処で古橋が正論を口にした。

「男子バスケ部なんだし、女子がいなくて当然だろ」
「そんなに女子に飢えてんなら合コンでも行ってこい」
「だから最初からそう言ってんじゃん!
・・・ん?待てよ、」

古橋に続いて花宮が蔑んだ視線を原に向ける。
一方未だ吠えていた原だったが此処でふと何かに気付いたのか、視線を花宮達からつゆりに移すと同時に華奢な肩を掴んだ。


「?」
「安心院!」
「・・・ん?ああ、何だい山崎君?」


何処かぼんやりとしていたらしい彼女の意識が現実に戻る。
花宮はその事に一瞬、顔を顰めた。

・・・コイツ、

花宮の不穏な空気に気付かず、山崎は己の願望を口にする。

「お前のその人望で何人か見繕っぶふっ!!」
「何安心院に頼ろうとしてんのー?」
「山崎・・・外周行ってこい」
「何で!?」
「良いから、逝け。
安心院、ちょっと来い」
「花宮、男の嫉妬は醜いぞ」
「五月蝿い古橋」
「ちょ、何で外周!?つか今漢字変換が違っ」
「諦めろ」
「え、ちょ待っ」


ぎゃー!という山崎の悲鳴をBGMにつゆりは花宮に問答無用で連れて行かれたのだった。



  △▼△



「・・・で?」
「・・・」
「こんな人気の無い所に呼び出して、何の用かな」
「・・・安心院。
お前のその表情、何とかしろ」
「・・・その表情?」


彼女の怪訝な表情を見て花宮の怒りのボルテージが更に上昇する。

この女っ・・・!


「お前は一体誰を見ているんだって事だよ!」
「―――!」


ダンッと壁に拳を叩き付ける。
痛みが拳に侵食するも気にならなかった。
つゆりの澄んだ瞳が僅かに瞠るも花宮は無視した。


安心院つゆり。
「キセキの世代」主将、赤司征十郎の幼馴染。
帝光中出身、元帝光中生徒会副会長。

知ってる、彼女の過去の欠片位は。
そしてその彼女が何処か遠い所へと視線を向ける、その意味さえも。
それはきっと、


「っ、」
「黙れ」


ぐっと、華奢な体を抱き寄せると同時に荒々しく口を己の口で塞ぐ。
誰の名前も呼べないように。自分の名前しか呼べないように。


中途半端に開けられた唇の隙間から舌を侵入させ、口内を我が物顔で荒らし尽くす。


「ふ、」
「はっ、」


人気の無い場所に響くのは水音と荒い息遣い。
彼女の艶やかな黒髪を結った黄色のヘッドバンドがゆっくりと地に落ちる。


どれ位の時間が経ったかわからない。
漸く重なった影が離れ、自由になった彼女が放った言葉は鋭く、そして冷たかった。


「満足かい、花宮君?」
「・・・はっ、可愛くねーの」


安心院つゆりの性格は平等主義。
愛情も憎悪も嫉妬も何もかも、全てくだらないと見なす残酷な性格。

花宮はくっ、と歪んだ笑みをつゆりに向ける。


「覚悟しろ、絶対落とす」
「・・・やれるものならやってみなよ、僕はそう簡単に靡かねーぜ?」

  宜しい、ならば戦争だ!

200,000hit企画第三弾は四季様に捧げます!
が、微裏ではないな・・・(汗
すみません、書いている内に全然違う事になってしまったorz
企画リクエスト、有難う御座いました!

20130714