過去企画 | ナノ

!片想い



・・・何でこうなったのかな。


散葉は深い溜息を吐きたくなるのをぐっと堪える。
代わりに胡乱気な瞳で眼前の光景―――水色、黄色、緑色というカラフルな人間が自分の友人と関わっているという事実を映したのだった。



  ♂♀



「あれ、もしかして散葉さんじゃないですか?」
「・・・え?」


池袋・休日。
散葉は久々に実家に戻り、目的もなくふらりと池袋に繰り出したのだが。
ぼんやりとただ歩いていた時に、彼女の耳に突如響いた一人の声。


「・・・竜ヶ峰君・・・?」
「やっぱり散葉さんだ、久しぶりですね。
池袋にいるなら連絡位してくれたって良いのに・・・」
「あーゴメンね。
まさか出会うとは思ってなくて・・・」


苦笑いを浮かべて帝人を見る。
自分の兄、臨也と遭遇した事がある帝人は苗字だと紛らわしいから、と名前呼びしてくれる存在。
そう思って自分の事を名前で呼んでくれる人は後何人かはいるが、折原散葉という人間を一個人として見てくれる彼らには感謝しかない。


・・・そう思った瞬間、散葉を呼ぶ帝人とは別の声が又もや響いた。
今度は誰だ、と思った散葉が振り返ったその刹那。
彼女は振り返るんじゃなかったと後悔する事になった。


「・・・折原、さん?」
「え?」
「黒子っちーどうかしたっスか・・・って散葉っち!?」
「・・・黒子君に、・・・黄瀬君?」
「散葉さん、お知り合いですか?」
「"散葉さん"!?」
『っ!?(ビクリ)』
「黄瀬君、五月蝿いです」


黒子と黄瀬の登場に目を丸くしたのは帝人。
その帝人が散葉の事を名前呼びで言った為、散葉に片想い中の黄瀬は過剰反応とも言う位声を荒げるが、それに対して黒子が冷静に返す。


「・・・あれ黄瀬ってもしかしてモデルの・・・!?」
「・・・あ」
「馬鹿め、自分から目立つ様な事をしているのでは世話無いのだよ」
「緑間っち酷い!」
「緑間君、ラッキーアイテムは見付かりましたか?」
「愚問なのだよ。
・・・といより何故お前らはすぐに何処かに行ってしまうのだ、見付ける此方の身にもなれ!」
(え、えーと・・・)
「(・・・内輪揉めなら他所でやってほしい・・・)
・・・とりあえず竜ヶ峰君、大丈夫?」
「大丈夫で、」
「そ、そんな事よりもアンタ散葉っちとどういう関係なんスか、だっ!!」
『!?』


帝人に捲し立てる黄瀬に対し黒子は溜息混じりにドスッと散葉達には見えない角度で背中に拳を入れる。
不意打ちな事もあり黄瀬は涙目で何事かと後ろを振り返った。


「な、いきなり何するんスか!」
「落ち着いて下さい。
余裕の欠片もないんですか?」
「ある訳無いだろ黄瀬なのだからな」
「緑間っち本当に酷いっスね!?」


話についていけない散葉と帝人だったが、徐々に周囲の人間の視線が此方に集中してきているのに気付いた。


「・・・あの、とりあえず移動しませ」
「おーいみっかどーー!!」


散葉の台詞を遮り、被せてきた事実に名を呼ばれた帝人は思わず目を丸くする。
・・・この声は。


「き、紀田く、」
「よー帝人、お前何やっ」
「・・・何だって君まで来るのさ!
話がますますややこしくなるじゃないか!
あれか、君は空気が読めないのか馬鹿なのか、それともトラブルシェーカーなのか!?
ますます収拾がつかない事態にして、どう責任とってくれんのさ!?」
「ってえ、散葉!?」


くわっと怒り、今にも正臣の胸ぐらを掴みかかりそうな散葉に今更ながらに気付いた正臣は顔を引き攣らせた。


・・・ヤバイ、怒らせた。
その証拠に口調が普段と違う。


夕焼け色の双眸に怒りの炎がちらつかせた散葉に正臣は只管謝罪を繰り返す。
その光景に帝人を含む全員が茫然と立ち尽くすのだった。

  とある日の池袋にて

大変お待たせしました、200,000hit企画第一弾はあんず様に捧げます。
池袋巡り、というリクでしたが全然添えていません・・・スミマセン(汗
こんなので宜しければどうぞ貰ってやって下さい!

20130223