過去企画 | ナノ

「・・・な、なぁそういう話は置いておこうぜ・・・」
「・・・そうですね」
「うん・・・」
「・・・・・・・・・」
「な、七海顔が赤いけど大丈夫」
「だ、大丈夫です!」
「・・・僕思ったんですけどこの子が灰音ちゃんだったら、心の方も子供になっちゃってる、なんて事はないでしょうか・・・?」
『・・・・・・・・・え?』


マイペースに発言した那月の言葉に又もや全員、意図せずとも声をあげる。
その可能性を考えていなかったメンバーの心に一抹の不安が過ぎると同時に春歌の腕の中からくぐもった声が彼等の耳に響いた。


「・・・・・・ん、」
『!(ビクリ)』


ぱちり、


緊張が走る春歌達を他所に、銀色の少女の瞳が覗く。
焦点が合っていないその瞳の色は青灰色。

その瞳の色に春歌達はこの少女が灰音であると確信を抱いた。
しかしそんな事は露にも知らない彼女は肩より下に切り揃えられた銀色の髪が軽く音を立てつつ、徐に動かしていて。

その姿に日頃毒舌を吐く灰音であると気付いても尚、破壊力抜群である事に変わりはなかった。



「・・・・・・大きい?」


子供特有の高い声がその部屋に響いた。



  ♪



話を聞くとやはりというか案の定、シャイニング早乙女が原因だった。
記憶の整理が出来たのと同時に灰音は深々と溜息を吐いた。
その様子が意外だったのか、音也は不思議そうな顔を表に出した。


「あれ、草薙怒ってないの?」
「怒りを通り越して脱力するわ」


見た目は幼女なのに仕草は大人のそれだ。
凄まじい違和感しか感じられない。


「この姿じゃ凄んだって大して効果も無いでしょうし・・・何より、」
「何より?」
「変質者と戦っても一撃で倒せない」


訳:一撃でなくても何発かでKO勝ち可能。寧ろ余裕。


「・・・・・・充分だろ?」


音也が凍りつく中、代わりに翔が代弁する。

いやいやだって普通幼女が言う事ではないだろう。


「何馬鹿な事を言ってるのよこれでも子供の時は大変だったわ。
真斗を誘拐する事で大金を得ようとする馬鹿な連中を千切っては投げの繰り返しで、」
「・・・え?」
「嘘を言うな灰音!」
「え、嘘なの?」


上から灰音、春歌、真斗、音也。
まさかの発言に全員の視線が灰音に刺さった。


「嘘なんか吐いて何になるのよ」
「確かにそんな連中は居たが、お前の場合千切っては投げ、千切っては投げの果てに死屍累々の山を作り上げていただろう!
顎にアッパー、足払いをかける事で頭を地面に叩き付ける、頚動脈に手刀連打、米神にジャンピング・ハイキック等々、人体急所を何の躊躇も無く攻撃するお前の姿はトラウマ以外の何物でもなかったぞ!?」
「・・・・・・・・・・・・え、何そのスーパーチャイルド」
「うわぁ凄いですねぇ灰音ちゃん!」


半ば茫然と呟く翔に何が楽しいのか聞きたくなるような笑顔を浮かべた那月。
真斗は大いに翔の意見に賛成する。
凄いのは凄いがそれはあの場に居なかったからこその台詞である。


・・・だがこれはまだ良い方だ。
何故なら一撃の元、確実に失神できるからだ。
一番最悪だったのは男にとって最大の弱点である金的に改悪版・スーパーボール(鉛含有)をぶつけるという攻撃法だった。
やられた側は気絶も出来ない位の苦痛を伴ったらしい。
その姿に誘拐犯の仲間は完全に戦意喪失したというのだから、当時幼かった真斗が灰音を怒らせないようにしようと誓ったのは至極当たり前の事だった。


「・・・ま、幼児化だったのはまだマシね、逆に年老いるなんて事になったら流石の私も・・・」
「・・・・・・・・・・・・私も?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


ふい、と何処か意味有り気に視線から逃れるように顔を背けるとトキヤは内心戦慄した。


「待って下さい草薙君、貴女何をするつもりですか?」
「某東京都内芸能事務所の一室にて密室殺人事件が起こってた、なんて事があるかもね」


完全に愉快犯の表情を小さく浮かべる灰音に真斗は嘆息する。



「・・・・・・とりあえず元の体に戻る事も重要だけど・・・」
「?」
「流石にいつまでもこの服はどうかと思うし、服を調達しないとね」


軽く腕を持ち上げるも袖の下から彼女の指すら見えない。
今の灰音の格好はシャツ一枚。
幼女趣味の変質者なら発狂して襲い掛かられても可笑しくない状態なのだが、如何せん相手は灰音である。
先程の真斗の話を聞く限り玉砕は必至だ。


灰音がスッと足を立たせ、ドアに向かって歩こうとした瞬間、音也達は何となく嫌な予感がした。


・・・この展開は。



ズルッ(裾を踏み、足を滑らせる音)

ビタンッ!(額が床に叩き付けられる音)



『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』



咄嗟に床に手をつこうとしたものの、灰音の身体はシャツに着られている状態である。
反応は出来ても間に合わず、結果諸に激突する羽目になった。


「だっ大丈夫かい!?」
「灰音さん!」

レンと春歌が慌てて抱き起こすと子供の特徴でもある、大人よりも遥かに緩くなった涙腺が崩壊寸前の灰音の姿が。


「いっ・・・・・・・・・!!」


じわじわと滲む視界に耐え切れず灰音はとうとう涙を零す。
一方灰音の泣き顔を直視した全員は思わず凍り付く。


今まで見た事のない儚さを醸し出す彼女にどうすれば良いか分からなかった為である。
だが一番回復が早かったのは真斗かと思いきや那月だった。

一番早く回復した分、行動も早かった為灰音は逃げる事すら叶わず那月の強烈ハグに再び気絶する事になった。

  二度ある事は三度ある

お待たせしました、直様に捧げます!
先輩組が出てこなかった点については本当に謝罪しますスミマセン(汗
おまけにて先輩組出演していますがこれは果たして出演しているのかどうか・・・(遠い目

そして此処にきてあのスーパーボールネタ。
此処にて解説:主人公が改悪(≠改良)したか不明だが鉛付きのスーパーボール(笑
文字通り、一撃必殺の武器。

20121015


+おまけ+


ガチャリ、


「ねぇナツキ、ショウさっきから電話しているのに気付いてないの?」
「え、藍!?」
「あいちゃん!?」

「あっ、おとやーん、トッキー!」
「れいちゃん!」
「・・・・・・・・・寿さん・・・」

「何で俺まで・・・」
「あれランちゃん?」
「黒崎先輩・・・!」

「おい後十分で此処から出なければ遅れるぞ、・・・・・・・・・?」


カミュの視線の先には幼児化した灰音の姿が。


『・・・・・・・・・・・・』


「・・・・・・どういった状況?」
「・・・説明するのが面倒だから好きに想像して頂戴」
「ぇええその言葉遣い、まさか灰音ちゃん!?」
「は?何言ってんだ嶺二、このガキがあの女な訳が無ェだろ」
「非常識にも程があるな」


「・・・否、先輩方・・・真実です」
『は?』
「 ね ぇ 説 明 し て く れ る ? 」
『・・・はい』


藍の圧力に屈したメンバー(一部除く)と諦めきった主人公、茫然とする先輩方の図(笑

20121016