過去企画 | ナノ

!注意!
内容は『花片』Bですが擬人化ネタです。
苦手な方はプラウザバックをお願いします。




OK?








翔は夢を見ていた。
夢というのはソレを認知出来る時とそうでない時がある。
今回の彼の場合だと前者だ。

「よしっ行け光理!先手必勝だ!」
「ピカァ!」

勢い良くバトルフィールドに足を踏み出した携帯獣―――ピカチュウは好戦的な性格なのか両頬の電気袋から僅かに、だが確かにバチバチッと静電気が漏れ出ている。


いつもなら此処で翔は違和感を違和感を覚える筈だったのだが、其処は夢の影響か、疑問符が浮かび上がる事はなかった。
現実世界の光理と言う名のピカチュウは好戦的ではない。
其れとは真逆の平和主義者である。

その気になれば電気技最強(多分)の「かみなり」を放てるのにも関わらず、本人(?)は好んで技の使用を使う事は無い。


「よし光理、まずは電光石火!」


何故こんな状況なのか、翔はよく考えずにただこの状況を楽しもうとした瞬間。
その夢は唐突に終わりを迎えた。



「翔君!起きて翔君!!」
「・・・・・・は?」

聞きなれない高い声に翔は眉間に皺を寄せつつ閉ざされた空色の双眸を覗かせる。
其処にはやはり見慣れない金色・・・というよりは黄色に近い髪の幼女が一人佇んでいた。


「・・・誰?」
「私だよ翔君!光理だよっ!」
「・・・・・・・・・・・・は?」

幼女の放った言葉はさながら核爆弾と同じ位の威力を持っていた。
茫然自失に陥った翔だったがフリーズから解放された思考で放ったのは言葉にならない叫びだった。

「はぁぁああああ!?」

光理は思わず耳に手を当てる仕草をするが翔にとっては其れ所ではなかった。
しかも那月が翔の悲鳴を聞きつけてやって来るのだが、幼女の姿となった光理を見て思わず飛びつこうとしたのは割愛しておく。



  ♂♀



「いきなりどうしたんですか翔ちゃん?ほらっ落ち着いて!」
「此れが落ち着いてられるか!?」
「そんな、動物が人に変わった位で・・・」
「今、位って言ったか?お前の中の優先順位とか重大性のランクはどうなってんだ!」
「翔君、落ち着こうよ」
「無理に決まってんだろ!
つーか光理、何でこうなったのか原因は分かんねーのか?」
「分からな・・・・・・あ、那月君の料理を食べた」
「其れだ」
「何で僕の手料理が原因なんです?
特に可笑しな物は入っていませんよぉ?」

『・・・・・・・・・・・・・・・』

二人は那月の台詞に何も言わなかった。
此処等辺が二人の優しさである。


光理は昨日食べた何とも言えない味を思い出し、漆黒の双眸が虚ろになる。
次いで那月の顔を避けるように視線をズラす。


「〜〜〜〜!!ああもう我慢出来ません!
光理ちゃんぎゅうーーー!!」
「!?(ビクリ)」
「馬鹿ッやめろ那月!
光理との身長差とか力の加減を考え、・・・ぎゃーーー!!」

那月の身長、186cm。
光理の身長は大体100cm。

いきなり立ち上がった那月の体格差を改めて突きつけられ、光理は思わず硬直する。
そんな光理の心情を見抜いた翔が思わず声をあげるが、次の瞬間自分も抱きつかれた為、絶叫するしかなかった。



  ♂♀



那月の暴走から10分後。
翔からのSOSを聞きつけ集まったいつも通りのメンバーに光理は身長差により恐怖心をより増長させていた。

「・・・・・・・・・おい光理、」
「だってだって・・・!」

彼女は翔の背後から離れる事はない。
まるで警戒心が強い動物のようだ。
・・・否、彼女は携帯獣というのだからこの反応は正しいのかもしれない。


「・・・この少女が光理だと?」
「俄かには信じ難いですね・・・」
「あ、でも髪とか瞳の色は一緒だね!」
「おチビちゃんから離れないのは身長的に一番近いから、かな?
おいでレディ、何もしないから」
「誰がチビだっ!
そんで絶対にうちの子は渡さねーからなっ!」
「うわぁ翔ちゃん、まるでお父さんみたいな言葉ですねぇ。
そうなると僕がお母さんでしょうか?」
「・・・・・・・・・・・・」

上から真斗、トキヤ、音也、レン、翔、那月、光理。
状況が改善するとは思えない台詞に彼女は敢えてノーリアクションで返した。

・・・のだが。


「・・・・・・しかしどうやって元に戻れるのか・・・。
迂闊な事は出来ぬぞ」

真斗はひょい、と事も無さ気に抱き上げると同時に視線を合わせた。
漆黒と青色が交差する。


「だよなぁ・・・つか聖川、何で光理を抱き上げてんの?」
「ああ、すまない。つい。
では来栖、受け取ってくれ」
「は?」
「え?」

ひょいと渡された光理を翔は慌てて受け取る。
その光景を見て今度は音也が声をあげた。

「あ、翔!俺もっ!俺も光理を抱っこしたい!」
「はぁ?」
「音也君?」


結局どうやって元に戻せば良いのか集まって貰ったのに解決策を導き出せないまま、一日が過ぎ。
その次の日にはすっかり元に戻っていたので、このままだったらどうしようか、と危惧していた未来を回避できて翔は安堵の息をついたのだが本人的には不安且つ不満そうな顔をしていた。

その事実を知っているのは那月だけだった。

  黄色くて小さなあの仔

お待たせしました、50000hit企画第八弾です!
擬人化ネタ、といってもあまりリクエストに添えられなかったかもしれません(汗

企画にご参加して下さり有難う御座いました!

20120801