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!50000hit企画01続編



「・・・は?」
「・・・・・・」

一通り話し終えた栞は素っ頓狂な声をあげたトキヤに構わず、もくもくと目の前にあるクッキーに手をつける。
トキヤはいつもと変わらぬ栞に小さく嘆息する。

「・・・美風さんと楽屋で二人きり、尚且手を握られた、ですか・・・」
「・・・・・・」

口の中に食べ物が入っているからか口を開く事は無かったが代わりにコクリと小さく、だが確かに頷く栞の姿にトキヤは何とも言えない気持ちに駆られた。
次いで栞は口の中を潤わす為、アイスコーヒーを一口二口と飲んで一言。

「・・・でもそれだけで他に何も無かった」
「当たり前です今でもそうですが、他に・・・それ以上の事をされたと言われたら私は嫉妬で狂いそうです」
「・・・狂うの?」

コテリ、と首を傾げる栞の姿にトキヤは思わず抱きしめた。
彼女は知らない。
自分が驚く程余裕が無いという事に、恋愛ドラマで自分ではない誰かと恋愛をしている姿を見ると堪らなく辛くて苦しい事に。
・・・自分も恋愛ドラマを演じているのを見て彼女は同じ様な気持ちを感じているのだろうか。


「・・・そうですね、もしかすると静雄さんみたいになるかもしれませんね」
「・・・・・・・・・ちょっと見てみたいな」
「・・・其処は気を付ける、と言って頂きたいんですが」
「・・・・・・・・・あ、」
「・・・・・・・・・・・・」

黒曜石の双眸がゆっくりと瞬くのを見てトキヤはガクリと落ち込んだ。
同時に顔を俯いたので丁度栞の肩に自身の顔を埋めるような形になってしまった。


「・・・・・・でも、大丈夫だよ」
「?」
「私"が"触れたいと思うのはトキヤ君だけだから」
「・・・貴女は、」
「わ、」

さっきよりも強く抱きしめる肢体は女性特有の柔らかさをトキヤは感じた。
無表情が多くて声もあまり抑揚が無くて、本当の気持ちを綺麗に隠せてしまうから不安に思う事も少なくない。
だけど、それでも手放したくないと思うのは。


「本当に、私の欲しい言葉を言ってくれますね」
「・・・そうなの?」
「ええ」

俯いていた顔を上げ、視界に映るのは見目麗しい彼女の姿。
堪らなく愛しさがこみ上げてきて、殆ど衝動的にその小さな口を塞ぐ。

「ん、」
「ふっ・・・」

緩く目を開けると其処には瞼を閉じて口付けに応えようとする栞の姿。
また瞼を閉じて更に貪るように口付けを深くする。

「ぁ、ふ・・・」
「・・・は、」



どれ位口付けを交わしていたのか分からない。
だが、彼女の方からきゅ、と自身の服を握り締めたのに気付いたトキヤ。

それ、は彼女の限界を表す合図。

「・・・・・・」


名残惜しさもあったがこれ以上すれば栞が口を利いてくれない可能性もあったので最後に唇を軽く舐めて距離をとる。
瞬間、ピクリと小さく肩を震わす栞の姿に再び口付けたい衝動に駆られるが、ぐっと抑えた。


「・・・は、」

軽く息を整えてトキヤを視界に映す栞の双眸は酸欠の為か、僅かに潤んでいて。

トキヤの理性が軽く飛び、再び口付けるのはまた別のお話。

  Sweet Time

お待たせしました、50000hit企画第四弾です。
まさかの第一弾の続編。
きっかけは第一弾製作後に触られたってトキヤが知ったら確実に嫉妬するよね、と思ったからです(苦笑

リクエスト有難う御座いました!

20120719