過去企画 | ナノ

!銀時視点



「あー・・・此処何処?」

銀時はぐるりと軽く首を回す事で現在の状況を把握しようとするが、結果は変わらず不明のままだった。


自分がいるのは和室だが、こんな部屋に来た事など記憶に無い。


「つーか俺は何でこんな所にいんだ?
アレか?無意識の内にタイムマシーン的な何かに、」

ブツブツと呟く俺は傍から見たら奇っ怪に映るだろうが今は俺しかいねぇ。
いやいやそれよりも俺ら気絶する前、ホント何してたっけ?

必死に思い出そうと頭を回転させて出てきた色に銀時は刹那、夕焼け色の双眸を瞠らせる。


・・・・・・あ、


「おお、目が覚めていたか」

「―――おおおおぅッ!?」


突如銀時の耳が捕らえた声にオーバーリアクションと言われても仕方の無い叫び声をあげる銀時。
一方声を掛けた真斗は予想外の大声に一瞬身体が凍りついた。


「なななな何だてめぇこのヤロー!」
「俺は其処の庭で倒れていた貴方をこの部屋に寝かせて介抱してい、」
「マジかこのヤロー」
「・・・・・・・・・・・・」

銀時は部屋に入ってきた第三者の手元に目を向けると確かに其処には介抱に必要なモノが一式揃っていた。

「あー・・・なぁちょっくら聞きたい事があんだけどよ」
「?」
「・・・此処何処?」
「・・・・・・・・・・・・」



  ♪



(場所を聞き出すついでに名前も聞いた)聖川真斗クンの話に俺は唖然とした。
え、ちょ、おま、

「はぁ!?」
「!?」
「いやいやマジでか・・・あークソあの時アイツに余計な事を言っちまったからか!?」
「・・・?」

困惑してる聖川クンには悪いが俺も最大級にテンパってる。
俺が全然知らねぇ所に来る直前にあった出来事を思い出す。




「いい加減に起きて仕事しなさいよこの糖尿病患者が」
「だーれが糖尿病だ、俺はまだ糖尿予備軍ですぅぅ!!」
「現在はそうかもしれないけどこのままだと未来は確実に末期患者決定でしょうが」
「何勝手に決めてんだ良いか灰音、お前には分かんねェだろうが糖分と銀さんは切っても切れない関係なんだよ!!」
「分かりたくもないわよ、そもそも私が甘味苦手になったのは貴方の所為でしょ何さも自分は無実みたいな言い方してんのよこの腐れ天パ!!」


いつもと同じ口喧嘩。
普段の澄ました顔が不機嫌に崩れる顔をする幼馴染。
此処まではいつもと同じ光景だった。
しかし、積もりに積もった苛立ちが此処で爆発したらしい。
廃刀令によって禁止されている筈の刀、しかも彼女の愛刀≪天狼≫を抜かれたのが目に入った。

「ちょ、おまそれ何処から出した!?」
「企業秘密に決まってんだろうが」
「オイィィ企業って何の企業!?しかも口調が変わってんぞ、何あの頃(=戦争)に戻ってんだ!?」
「テメェ以外に原因があると思ってんのか!
容赦も情けも無用!!歯ぁ食いしばれ!」
「ぎゃああああ!!」




「・・・・・・・・・」

・・・そっから記憶が無い。
オイオイ昔から怒らせるとおっかねぇとは知ってたけど記憶だけじゃなくて見知らぬ土地にまで吹っ飛ばすか普通よ。
眼鏡(新八)の姉ちゃんも大概のマウンテンゴリラだが灰音も同じ位・・・否それ以上の戦闘力だ。

・・・あ、もしかしてこれ夢?
なら灰音がいねぇのも納得だわ。


「・・・坂田さん大丈夫ですか?」
「・・・大丈夫な訳あるかよチクショーこれが大丈夫なら眼科を勧めるわ」
「・・・・・・」
「たっくよ、丁度良いやちょっと付き合え」
「は?」

狼狽える聖川クンの姿が目に入るが、見なかった事にしよう。
望むのは俺の心の平穏だ。
つーか現実世界に帰りたいわコノヤロー、あーでも帰った時は灰音の怒りが収まってる事を希望しとく。


「俺が庭?に倒れる前まではよぉ、幼馴染と居たんだが不意打ち喰らってこっちに来た訳よ。
つーかあの女マジで容赦しねェしほんと身が持たないよ銀さん」
「幼馴染、ですか?」
「そーそー。
面倒臭がりで興味無ェ事にはとことん手を抜きまくって挙句の果てには食べる事も放棄しかけるっつー色んな意味で目を離させねェし」
「・・・・・・え、」
「何つーの?歯に衣着せぬ、って言葉が似合う位の毒舌家だし。
いっつも澄ました顔ばっかで笑った顔なんてあんま無ェな。
ったく人生損してるっつーの」
「・・・・・・・・・・・・」
「そういや聖川クンは幼馴染とか居んの?」
「・・・・・・俺ですか」
「おー」


俺の場合はアイツ・・・灰音以外も居たがアイツ等の事は今は思い出さないようにしよう。
あーあの頃は色々やったなぁ。
・・・本当に色々。


「一人居るが彼女はとんでもなく夏に弱くて、」
「夏?」
「・・・否、夏ではなく正しくは暑さか。
一定の気温を超えるとすぐに倒れて年に平均十回・・・もしかするともっと倒れているな。
後は人間をあまり好んでいないのか人と接する事に距離を置いて・・・」

・・・・・・あれどっかで聞いたことのある特徴・・・つーか。
灰音と似たような人間がこの世に二人もいんの?

「ああ、寝起きもあまり良くないな。
寝惚けて壁に激突する事もあった・・・」

・・・・・・あれ?

「・・・・・・聖川クン、その幼馴染ってさ」
「うむ?」
「名前なんて―――」




「―――其処の二人、一体誰の事を言ってるのか、詳しく聞かせて貰いましょうか」

ビクリ、と俺らが揃って肩を震わせたのと同時に響いた襖が開く音。
襖の奥に現れたのは俺が良く知る幼馴染がいた。

俺とは又違う、蒼みがかかった銀髪に青灰色の瞳。
儚さを体現化させたかのような姿に俺は内心安堵の溜息を吐こうとする、が。

「ちょっおま、何か若返ってねぇか!?」
「・・・・・・は、」

灰音の目が瞬いて話を掴めていないのが分かったが今それ所じゃない。
灰音は二十代で、なのに此処に居る灰音は十代後半の姿だ。
微妙に若返ってるとか―――。


「は、じゃねえだろーが!
おま、まさか玉手箱に手を出して―――」
「何の話をしてるのよいい加減にしないとそのクルクルパーを斬るわよ」
「その前にこの状況に対して何か他に言う事は!?」
「其れこそ山の様にあるわよ、でも全部飛んだわ!
誰が毒舌家で面倒臭がりで寝起きが悪い、よ喧嘩売ってるの?
喧嘩ならいつでも買わせて貰うけど」
『スミマセンデシタ』

・・・灰音の殺気立った視線に俺達は考えるよりも先に謝罪した。



+おまけ+

「次馬鹿な事を言ったら―――殺して解体(バラ)して並べて揃えて晒してやんよ」
「灰音ちゃああん!?
ソレ言っちゃ駄目だから!!零崎君の決め台詞だから!!つーかいつも澄ました顔してる癖にこんな時だけ笑うんじゃねーよ!!」
「・・・灰音、ゼロザキとは誰だ?」
「それは、」
「詳しく話そうとすんな!」
「というより、二人は知り合いなのか?」
「・・・・・・・・・(ハッ)」

  幼馴染はまさかの同一人物

お待たせしました、50000hit企画第三弾です。
銀時の口調が分からなくなってきた今日この頃。なんか偽者臭いなぁ(汗
多分主人公は銀時の声を聞いて懐古の気分を味わっていたでしょうが、二人の会話を聞いて全部ぶっ飛んだって感じだろうと予測。
銀時気絶→夢でutpr世界と邂逅、と思っていただければ幸いです。
因みに最後のリアクションは主人公です。
・・・色々可笑しい所がありますが目を瞑って下さい(汗

20120719