過去企画 | ナノ

!『花片』A
!春歌視点



私の視線の先にはまるで日本人形の如き容姿を持つ方がいます。
私の同室で、パートナー。
そして僭越ながら私なんかと友人になって下さっている女性が。

「・・・何?」

無表情でコテリ、と首を傾げる栞さん。
同じ女性なのに凄く可愛いと思える仕草、なんですが・・・やはり無表情という点で若干魅力が半減しているような・・・。

兎に角、勿体無いなと私は思うのです。

「いえ・・・あの、栞さんはご兄弟がいると以前聞いたんですけど、」

場所はAクラスの教室。
私と栞さんはパートナー兼同室という事もあって一緒にいる事が多い。
ですが今日は私達の他に一十木君、聖川様、四ノ宮さんがおられるので、たった5人なのにとても大人数の様な気がするのは私だけでしょうか。

「ほう。
平和島にも兄弟がいるのか」
「わぁ、妹さんですか?それとも弟さんでしょうか?」
「・・・・・・きょ、兄弟がいるんだ、平和島・・・」
「・・・・・・・・・うん、兄が一人」

?一十木君、どうかしたのでしょうか。
少し顔が引き攣っているような・・・。
だけど、栞さんはそんな一十木君に漆黒の双眸を僅かに向けて、一言抑揚の無い口調で返した。

「兄君がいるのか・・・」
「へぇー!何歳離れているんですかぁ?」
「・・・秘密」
「其処で秘密なんですか!?」
「うん」

お、思わず突っ込んでしまいました・・・。
栞さん、私が言える立場ではないかもしれませんが、少しズレてます・・・。

「・・・そうだね、聖川君程ではないけどちょっと離れてる。
だからかな、あまり喧嘩らしい喧嘩をしたことがない、と思う」
「そ、そうなの?」
「うん。
よく、おやつや玩具の取り合いで喧嘩するって聞くけど、そういうのは特に無かったし」

私は一人っ子なので、兄妹というのはよく分からない。
この早乙女学園に入るまで友達という友達も出来なかったから、こういう話をした事もない訳で・・・。

「兄さんは周りの人に誤解されやすい人で・・・ちょっと沸点が低い所もあるけど、普段は穏やかな人なんだ」
「・・・栞さんからそういった話を聞くのは初めてですね!」
「・・・・・・・・・え、」
「あ、確かにそうですねぇ」
「うむ。俺にも妹がいるから、平和島の兄君の気持ちも少しなら分かる。
兄とは妹を守る存在だからな」
「マサかたいよー!」
「な、それは当然の感情だろう」
「そうかもしれないけどさー!」

話が段々脱線しているような・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・あ、

「栞さん、今笑いました?」
「・・・・・・・・・、」
「少しだけ目元が僅かですけど、細くなったので」

目が細くなる、というのは睨んでいると思われがちだけど、先程の栞さんを見ると其れはすぐに違うと分かる。
だって栞さんの目には優しい光が映っていたから。

「・・・・・・私の兄さんは、凄く力が強くて。
加減が出来ない時が多いけど、私にとっては唯一の兄だから。
・・・聖川君みたいに、兄さんも私のことをそう思ってくれたいたら嬉しい、かな」


―――そう言った時の栞さんの表情は、今迄見た事が無い位、優しい光を宿した瞳と、微笑を浮かべていたのでした。

  妹から兄に贈る想い

20000hit企画第四弾はyuka様に捧げます!
内容は『花片』Averで書いてみましたがAクラスしか出てきていなくてスミマセン(汗

リクエスト、有難う御座いました!
これからも『Elysion』を宜しくお願いします!

20120526