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!『恋々』
!青峰生誕記念後日談



「という事があったんスよ!
桃っちどう思う!?」
「・・・どう思うって・・・」

桃井は内心顔を引き攣らせた。
嫉妬に駆られた男程面倒臭いものは無いかもしれない。
・・・否、女もそれは同じか。

桃井の思いを他所に黄瀬は普段の面影がない程動揺していた。

「(何できーちゃんに余計な事を言うのかな青峰君は!)
えーと・・・因みに散葉ちゃんは何て?」
「・・・散葉は『ああそういえば、』みたいなリアクションだったんスよね・・・」
「そ、そうなんだ・・・」
「でも全部思い出した後顔が赤くなったから余計腹がたった」
「へ、へー・・・」

中学時代の女性不信は一体何処へ行ったと問い質したい気分だったが、桃井はそれを堪えた。
代わりに口にしたのは別の事だ。

「で、でも散葉ちゃんが顔を赤くしたからといって青峰君に気があると決まった訳じゃ無いし!」
「当たり前っスよ!
つか今まで忘れていたっていう時点でその可能性はゼロに近いって事だし!
・・・もし散葉が別れるなんて言ったらオレ何するか分かんねェっていうか未知の扉を開きそ、」
「っ散葉ちゃんの為にも私の心の平穏の為にもその扉は開けちゃダメだからね!?」

殆ど悲鳴に近い桃井の心から願いに黄瀬は一瞬きょとり、と目を瞬かせる。
いきなり声を荒らげた自分も悪いがそんな事はどうでも良い。
今とんでもない事をのたまった気がする。
・・・気の所為であってほしい。切実に。

「そ、そういえば散葉ちゃんは?一緒じゃないの?」
「・・・散葉なら今眠っているっス。
徹夜だって言ってたし多分今も疲労のピークで爆睡してる」
「・・・徹夜?」
「そっスよ?」
「・・・」

勘繰り過ぎだろうか。
目の前の彼は健全な高校生だ。
その恋人の散葉は何処かズレているとはいえ、普通の女子高生。
もしかしてもしかしなくてももうその一線を超えてしまったのではないか、と桃井がその可能性を考えた、その時。

「オニーサンから仕事を押し付けられたらしくてそれの処理に追われてたっぽいんス。
おかげで全然遊べなくて―・・・」
「え、あ、そ、そーなんだ・・・」

一気に生々しい空気になるかと思えば全然違った。
桃井はこっそりと安堵の息を吐く。

・・・本当に良かった。
そしてあらぬ方向へ考えてごめんねきーちゃん、散葉ちゃん。

桃井が心中で謝罪をしたのを知ってか知らずか、黄瀬は本日最大の爆弾を投下した。


「まぁそれに加えオレが直々に尋問したのもいけなかったんだろーけど」
「・・・・・・・・・・・・・・・じ、尋問・・・・・・・・・・・・・・・?」


まさにラスボスの名に相応しい位の真っ黒な微笑に桃井は今度こそ顔の筋肉を限界まで引き攣らせた。

可笑しい、彼のカラーリングは黄色であって、決して黒色では無かった筈なのだが。



「オレに迫られている時の散葉、滅茶苦茶可愛かったんスよね!
強気に振舞ってても肩が震えてるから小動物みたいで!
桃っちに愚痴聞いて貰ったし、この後散葉の様子でも見に行こうかな」
「・・・・・・・・・」


お、遅かった・・・。
きーちゃんが開けてはいけない扉を既に開いていたみたいだ、と桃井が悟ったのと同時にこの場にいない散葉に向かって強く生きて欲しいという願いと全力で逃げて、という思いがせめぎ合ったのは彼女しか知らない。

+おまけ+

「涼太君、本当に容赦が無くて困ってるんだけどどうしたら良いと思う?」
「嫉妬に駆られた男程、厄介なモノはありませんからね・・・強く生きて下さい、というしかありません。
すみません、力になれそうに無いです」
「これってあれかな飼い犬に噛まれるってヤツかな・・・」
「・・・・・・普段の黄瀬君はワンコですからね。
あながち間違っていないでしょうね」
「・・・・・・助けて黒子君!
変に曲がったあの性根を元に戻すの手伝ってー!!」


という事で黄瀬と主人公が一線を超えたのかどうかは皆様にお任せします。
黄瀬が桃っちの反応を楽しむ為に変に煽ったのかもしれないし、本当かもしれない。
皆様はどちらが良いですか?(笑
青峰BD後日談なのに青峰の名前しか出てこなかったのは・・・うん仕方無い。

201309XX