過去拍手 | ナノ

!『花片』@
!静雄視点



俺には双子の弟妹がいる。
感情の波が激しすぎる俺とは違い、落ち着いているとか大人しいとか、そういった言葉がよく似合う弟妹が。

普通の人間以上の力に目覚めるまで、俺は初めて出来た「きょうだい」が凄ェ嬉しくて毎日構っていたと思う。

力に目覚めてからは、何も考えずに接せられた日々が嘘のように、恐くなってしまったけれど。




「・・・ぁ、」
「にーさん」

舌足らずな呼びかけ。
小さな、赤みがかかった紅葉の様な掌。
澄んだ黒髪と黒の瞳。
何処か、俺と似た顔。

「なんだ、幽、栞?」

そう言って俺はコイツ等にまた、笑って相手をして。



  ♂♀



他のガキとは違い、あまり感情を表に出さない俺の弟妹だけど。
確かにアイツ等は俺の幸せを象徴する存在で。
この理不尽な暴力に目覚めても尚、傍にいてくれる、大事な家族。

・・・なのだが。


「栞、こっちのケーキの方が美味しいよ」
「そうなの?」
「うん。一口あげるから、口開けて」
『・・・・・・・・・』

今、俺達兄妹はカフェに居る。
幽も栞もモデルの仕事が落ち着き、たまたま休みが重なった為、久々に兄妹で外出したのだが。



ケーキをフォークで突き刺し、栞に差し出す幽の相変わらずな台詞に俺も栞も閉口。
子供の頃はもっとマトモだった筈だ。多分。
なのに、どうしてこうなったんだ?



幽は重度のシスコン、栞はそんな幽に振り回され。
・・・今は居ないらしいが栞に彼氏とか出来たら、と思うと地獄絵図だと思うのは気の所為じゃねェ筈だ。
前、新羅に「君のとこの妹さん恋愛出来なさそうだねェ」とか言って笑っていたのを思い出す。
その笑いにイラッときたから軽く叩いたら其の部分だけ腫れていやがったけど。

「栞?」
「う、ん・・・」
「・・・あー、幽。
栞が困ってんだろ。普通に渡してやれ」
「・・・・・・・・・そうなの?栞」
「・・・・・・・・・・・・・・・」

しまった助けたつもりが逆効果だったか。
何処か寂しそうな表情で栞を見る幽は実は確信犯じゃねぇだろうか。
そんな顔をされると栞は折れるしかない。


栞が徐に口を開けるまで後六秒。

201206XX