過去拍手 | ナノ

!エイプリルフールネタ



「栞さん」
「・・・・・・誰だっけ」
「・・・・・・・・・・・・!?」

思わず凍りついたトキヤに栞は無表情で見つめて一言。

「嘘だよ」
「分かりにくいです」
「・・・?」

コテリ、と栞が無表情で首を傾ける動作をするのを見て、トキヤは内心動揺した。

(くっ・・・それは反則でしょう!)

どうも彼女は自分の魅力というものを自覚していないのか、こういう無意識な行動を起こす事が多い。
その度に動揺する自分が恨めしい。もっと余裕を持ちたいのに上手くいかない。

只でさえ自分は年下だというのに・・・!

「(コホン)兎に角、どうしてそのような嘘を吐いたのですか?」
「・・・?今日は4月1日だから」
「4月1日・・・嗚呼、エイプリルフールですか」
(コクリ)
(またこの人はっ・・・!)
「・・・?トキヤ君、どうかした?」

栞は不思議そうな顔(他人から見たら無表情)で又もや俯いてしまったトキヤの顔を覗き込むように見つめる。
その行動に更にトキヤは焦る。

彼女の行動は本当に予測が出来ない。
このまま彼女のペースに持ち込めば厄介になると経験上理解しているのでトキヤは何とか自分のペースに巻き込む事にした。

「・・・そうですね、とりあえず」グイッ
「・・・っ!」

トキヤが華奢で白い腕を掴み、自分の両脚の間に栞を座らせ、抱きしめる。
その行動に無表情装備の栞は声には出さないものの、表情を僅かに崩した。
きっと他の人間が見れば気付かないであろう、その小さな小さな変化に気付いたトキヤの気分が僅かに上昇する。

「・・・トキヤ君?」
「私を騙した罪です、しっかりと償って貰いましょうか?」
「・・・・・・ぇ」

体格差から生まれる彼女の上目遣いに、内心動揺しながらもトキヤは其れをおくびにも出さない。
ここら辺が嘗てHAYATOを完璧に演じたトキヤならではである。

「・・・・・・・・・具体的に、どんな?」

首を後ろに捻って尋ねる栞にトキヤは微笑し、耳元で囁く為に自身の顔を栞の耳に近付ける。
その距離の近さに思わず栞はピクリと小さく反応する。
彼の吐息に、体温に、声に。

「まず一日離しません」
「・・・・・・!」
「そうでなくてもお互い毎日仕事で会えなかったんですから、これ位は当然です。
後は・・・」

まだまだ続きそうな台詞に栞は内心顔を引きつらせた。

「・・・・・・お手柔らかにお願いします」

「(クスリ)ああそういえば、言い忘れてしまいました」
「・・・・・・?」
「私は、貴女のことが大嫌いです」
「・・・・・・私も、大嫌い、です」

エイプリルフールだからこそ、出る言葉に二人はどちらからと言う訳でもなく微笑した。

201204XX