!ホワイトデーネタ
「アイドルってイベント毎にプレゼントとかあると思ったんだけど、そうでも無いの?」
無表情でそう尋ねた幼馴染に真斗とレンは凍り付く。
・・・え、今更?
何も言えない二人と小首を傾げて青灰色の双眸を二人に向ける灰音。
そんな三人の耳にがちゃり、とドアを開ける音が響いたと認識したのと同時に灰音にとって機嫌を急降下させるには効果絶大な台詞が響いた。
「はっお前そんな事も知らないのか?
うちの事務所はバレンタインだのそういうのは一切受け取らない方針なんだよ」
鼻で笑いながら部屋に入ってきた蘭丸に灰音は一瞬柳眉が逆立つ。
その反応を見逃さなかった真斗とレンは内心で戦慄した。
・・・ランちゃんいい加減に懲りたら良いのに・・・。
頼む灰音、暴力沙汰は止めてくれ・・・!
儚さを体現化させたような容姿だが、実は好戦的な性格に分類される彼女。
普段は面倒臭がりを発揮するくせに黒崎蘭丸が関わると一転する事を彼等は知っている。
「(無視)・・・貴方達、私にバレンタインをしても良かったの?」
「・・・するな、とは言われてないからねぇ」
「・・・ああ、毎年している事だからな。今更だろう」
「・・・テメエ等」
完全無視を決め込んだ彼女に冷や汗をかきつつ、レンと真斗は蘭丸の様子を窺いながら返事を返す。
やはり彼女の肝は据わっている。
恐ろしい娘・・・!
「ふーん・・・ま、とばっちりを喰らわなければ良いけど。
・・・はい。お返しのホワイトデー」
す、と静かに渡す灰音の表情はいつも通りだ。
甘いものが極端にダメな灰音、そしてバレンタインチョコ受け取り禁止のシャイニング事務所に属す真斗とレン。
この組み合わせになる前よりも早く、真斗はバレンタインという存在を知ってから毎年欠かさずお菓子類を灰音に贈っている。
そんな真斗に灰音は逆チョコか、と内心で突っ込みながらも受け取り、ホワイトデーにはしっかりお返しを渡す。
十年近く続くやり取りだったが今年はレンも便乗してきた為、灰音は二人分用意してきたものを今日渡す事になっていたのだが、当然蘭丸はそんな事を知る由も無い。
「・・・何だそれは。食い物か?
つか逆チョコかよ」
「食べ物かどうかは彼等に聞いて頂戴。
後毎年恒例の行事だからその突っ込みは今更よ」
私も初めてされた時はそう思った。
とは灰音は言わなかったが。
「あー・・・有難う灰音。
嬉しいよ」
「うむ。有難く受け取っておく」
「大層なものじゃないけど」
「俺の分はねェのか」
「ある訳ないでしょ。何言っているの貴方」
「チッ。
おい真斗にレン、俺にも寄越せ―――ぐはっ!」
『!?』
真斗とレンの中で「"何か"が剛速球で飛んでいった」、と認識する前に蘭丸の顔面に音楽系の本(厚さは指三本分)が収まったという現実が視界に飛び込んできた。
因みに犯人はというと、涼しい顔をして一言紡ぐだけだった。
「人のもの、しかも後輩にたかるなんて恥ずかしくないのかしら」
この後に起こるであろう惨劇に、真斗とレンは何処に避難すべきか、そして誰を呼べば良いのか思考をフル稼働するのだった。
今回はホワイトデーネタ第一弾『乙女』編。
最近『乙女』更新していないな・・・と思いながら書きました。
久々に書きましたがやはり揺るがない主人公。
AS買おうかな、と思いましたが滞納しているものがあるので買うとしたらもう少し先だな・・・(遠い目201303XX