過去拍手 | ナノ

!主人公達に霊感があった場合
→有・・・主人公=那月>>>>翔>真斗、トキヤ
 無・・・音也、レン
!元ネタ有



「・・・・・・寒い」

今回の話の発端は翔だった。
その一言は夏休みに出された課題に取り掛かっている彼らの頭の中に?が浮かび上がらせるには充分だった。


何せ季節は夏。
更に言えば冷房も節電を意識してか設定温度はそんなに低くない。
故に、「寒い」という単語は有り得ないのだが。


「いきなり何言ってるんだよ翔?」
「今の季節だと寧ろ暑いと言った方が正しいと思うけどね」
「もしかして翔ちゃん風邪ですか?」


音也にレン、那月が口々に発する中、トキヤと真斗も徐に反応した。


『・・・・・・』
「聖川にイッチーも、顔色が悪く無いかい?」
「・・・何の事でしょうか」
「気の所為だ」
「そうかい?
只でさえ白い肌なのに今はより一層白いのはオレの気の所為って訳だ」
「ああ」「ええ」


そんな三人の会話を聞きつけ、音也達も会話に参加し、更にヒートアップする。


「えトキヤにマサも!?」
「鳥肌が・・・止まらねェ・・・」


必死に掌で腕を擦る翔だが鳥肌は一向に止まらず、寧ろ先程より青褪めている。


「うーん熱は無いようですけど・・・」
「ちょっとみんなどうしちゃったのさー?」
「・・・多分この寒気は・・・風邪、では無く」

真斗が以前経験した事を踏まえて、ある言葉を放とうとした瞬間。
ガチャリ、とドアノブを回す音が全員の耳に届いた。

『(ビクリ)』
『?』

ドアが開く音に異常な状態である翔、トキヤ、真斗の肩が大きく震える。
他のメンバーはそんな三人を訝しげに見つつ、視線をドアの方へと向けると其処には一つの影が。


「・・・あ、」
「・・・・・・・・・・・・・・・何してるの?」


決して良いとは言えないタイミングでドアを開けた灰音は青褪めた真斗達に加え、きょとりと瞼を瞬かせている音也達の視線を一身に受ける事になった。



  ♪



「・・・・・・悪寒?」
「ああ・・・昨日の夜からずっと止まんねェんだ・・・」

灰音がよく分からないままにドアを閉めようとしたのを真斗が強引に皆の輪の中に入らせた所で先程の会話の続きを再開した。

・・・因みに。
現在の灰音の気分は現在進行形で急降下しており心なしか眉間に皺が寄っている。
不機嫌を撒き散らす彼女の隣りには当然の如く、しかし素知らぬ顔で真斗が、逆隣りには翔が座っている。


「へぇ」
「灰音、もっと反応の取りようがあるだろう」
「・・・・・・・・・、で来栖少年に加え真斗に一ノ瀬君も?」
「・・・・・・・・・・・・ええ」
「そ。・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

トキヤの返答に対し適当に答えた後、灰音はゆっくりと翔、真斗、トキヤ、―――そして何故かレンを見つめる。
・・・正確には彼らの背後、やや斜め上を。


「おい、お前何処に目をやっているんだよ?」
「・・・・・・ま、まさか」
「?何か上に居るの?」
「でも何も無いね」

何かに勘付いた真斗の言葉を遮った音也、レンの言葉に対し灰音は歯切り悪く言葉を返そうとした瞬間。

「否・・・・・・」
「あ、もしかして灰音ちゃん、"視える"んですかぁ?」


「・・・・・・・・・・・・・・・え」
『は?』

那月の一言に灰音の青灰色の双眸は瞠目し、他五名は言葉にならない声を出した。


「・・・四ノ宮君も?」
「はい。彼処に"居る"のが視えますよぉ。
後、レンくんと真斗くん、翔ちゃんとトキヤくんですね。
あーそっかぁやっぱり"彼ら"の仕業だったんですね!」
「・・・・・・・・・な、那月。
何の話をしてるんだよ?」
「え?何のってそれは、」

那月が会話の本題に入ろうとした瞬間、翔の第六感とも言えるモノがこの時働いた。

「や、やっぱ良い!!言うな!!」
「待て来栖・・・灰音まさかと思うが、」
「多分貴方の想像通りだと思うけど」
「何が!?」
「オレ達を置いてけぼりするなんて酷いなレディ」

「・・・レディって言わないで頂戴、虫唾が走るわ何度言ったら分かるのよこのトリ頭」
『・・・・・・・・・・・・・・・』

ギロリ、とレンを睨みつけた灰音に全員無言になった。
レンを除くメンバーは自分に言われた訳でも無いのに背筋が凍りついたような気がした。



「うーん・・・言っても良いんですけどねぇ」
「言うな那月!知らない方が幸せって言葉を知らねェのか!?」

翔はこの上なく必死だ。
・・・というより正体に何となく気付いているのだから、この場合最早現実を認めるか否かの問題だろうか。


「灰音ちゃん、どうしますかぁ?」
「本人が嫌がってるんだから放って置けば?」


ほぼ投げやりの様に放った言葉に那月は那月なりに考えた結果、話すことにした。


「あのね翔ちゃんに皆さん!」
「言うなっつってんだろ馬鹿!」
「黙りなさい翔」
「言っちゃえ那月!」
「翔ちゃん達の後ろに幽霊さんが居るんですよぉ」


爆弾発言投下。


『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』


半ば予想していただけに発狂はしなかった。
しかも発信源は那月。
何故だろう、説得力がありすぎる。


「や、やっぱりかぁぁああ!!!」


発狂はしなかったが代わりに時間差で翔は絶叫した。
次いで灰音は耳に手を当て、翔の心からの絶叫をシャットアウトした。

だって五月蝿いし。


「・・・ついでに言えば全員血みどろでおどろどろしい感じね」
「ええ、特に翔ちゃんにとり憑いているおじさんは大分翔ちゃんを狙っている様に視えます」


も う 止 め て く れ 。


他のメンバーの心が一つになった瞬間だった。

「因みに一ノ瀬君の左斜めに居る幽霊は交際相手に裏切られて自殺したと言う女の幽霊が」
「止めて下さい」
「真斗には又新しい霊を憑けているわね。
其処のトリ頭(=レン)には五人の女の生霊が」
「・・・冗談だよね・・・」
「・・・否、灰音の言葉は多分本当だろう・・・・・・」
「(無視)貴方達、生死問わずで異性に人気なのね・・・」

それってどういう才能なの?



そう無表情で聞く彼女は大物だ。


「ねぇ二人とも、俺には憑いていないの!?」
「無い」「無いですねぇ」
「そっか・・・何か皆憑いてるのに俺だけ視えないし憑かれていないなんて軽く仲間外れにされてる気分だよー・・・」
「何なら代わってあげますよ」
「あははー・・・トキヤ、本気?」

真顔で迫るトキヤに音也の顔は引き攣っている。

「一ノ瀬落ち着け。
・・・そういえば灰音、来栖に憑いてる霊はどういうヤツなのだ?」

咄嗟に話題転換した所で音也は助かった!と安堵の息を吐く。
しかしその質問は今度、翔に被害を及ぶ事になった。

「・・・・・・・・・別にたいしたものじゃないわ」
「え、」
「そうでしょうか?」
「どういう事だいシノミー?」

「・・・・・・・・・(はぁ)美少年連続惨殺記録更新中に事故死した中年男が一人」

『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』
「ふざけんなぁあーーーーー!!!』

翔の絶叫が部屋中に響き渡り、何人かの鼓膜が暫く使い物にならなかったという。

201208XX