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!真斗、主人公共に霊感有設定(力関係:主>>>真)



季節は初夏。
灰音にとって憂鬱な事この上ない季節の幕開けである。

(・・・・・・地球と共に私も死にそう・・・・・・)

現在、巫女装束を纏った灰音の体はだらしないと分かっていながらも日陰となっている縁側にてぐったりと倒れている。
・・・この姿を見たらあの細かい幼馴染は又眦を釣り上げてかっかと怒るに違いない。
だがしかし。


(・・・・・・何言われても反応出来ないかもしれない)


極端に暑さや熱に耐えられないこの身体が本当に嫌になる。
毎年毎年気を抜いた瞬間だけでなく、朝部屋を出ようとした瞬間にいきなり視界がブラックアウトになった事さえもあった。
こうまで極端だといっそ清々しく思えてくる。


ぐったりと縁側に仰向けで倒れている灰音の耳が普段は静かな音である筈の音が今日に限ってバタバタ、とやけに大きく音を立てて此方に向かってくる足音を捉えた。

「・・・・・・・・・・・・」

嫌な予感しかしないのは何故だ。

灰音はこういう予感が外れた事が無いのを身をもって知っている。
厄介事に巻き込まれる前に逃げようと、俊敏さとはかけ離れた遅さでノロノロと重たい身体を動かす。
しかし時既に遅し。

「灰音、今日の朝から身体が重いのだ。
まさかとは思うが又"アレ"が居るかどうか視てくれないか!?」

「・・・・・・・・・・・・」

灰音は幼馴染の姿を見て自身の休息が崩壊した事を悟ると同時に深く嘆息した。



  ♪



事の始まりは朝だった。
朝起きると同時に物凄く気分が悪く夢見もあまり良くなかった気がする。
食欲も無く、身体も何処かだるい。
しかも誰も居ない筈なのに、視線を感じる事がある。
鏡を見ても振り返ってみても誰も居ない筈なのに、じっと見つめられる感覚。
真綿のような何かで首を締め付けられるような、感覚。


真斗はそういった症状が出る理由を何となく知っていた。
なのでそういった相談が出来て尚且、解決も出来るスペシャリストの元へと足を運んだのだが。

「・・・で?」
「で、とは?
俺の背後にまた例のアレが居るかどうか灰音に視て貰いたいのだが・・・」
「・・・・・・・・・・・・居るけど、祓いたくない・・・」
「俺の平穏を掻き乱しているんだ!手を貸してくれても良いだろう!!」
「今私の平穏を掻き乱しているのは貴方よ!」

バッドで放たれた言葉の弾丸を又バッドで打ち返す。
軽く怒りの琴線に触れた真斗に思わず灰音は掛け値無しの体力を文字通り怒号に注込んだ。
が、しかしそれと同時にふらり、と上半身が大きく揺らぎ、視界がブレる。

「―――ッ、」
「灰音!」

きゅう、と力無く倒れている灰音の身体を支え真斗は灰音の顔を覗き込む。

「大丈夫か?」
「・・・・・・・・・無理・・・・・・」

灰音を自身の腕で支えた瞬間、背中に得体の知れない、冷たい何かを感じ取ったのは気の所為では無いだろう。

「・・・・・・・・・・・・」

頼む、灰音。
勝手な頼みだと重々承知しているが早く回復してこの背後に居るヤツを祓ってくれ。



  ♪



「・・・見事にとり憑かれてるわね・・・」

先程より幾分気温が低くなった頃、灰音は体力を取り戻したのか力無く起き上がる。
そして暫くし、灰音の青灰色の双眸が半ば呆れの感情を表に出しながらその瞳にこの世の者ではない"何か"を映した。

「・・・やはり、か」
「・・・そうね、改めて視て色々分かったけど聞く?個人情報諸々」
「聞きたいような聞きたくないような微妙な気持ちなんだが」
「(無視)陸上インターハイ出場経験者で容姿性格共に良しな享年十七歳の女子高校生。
嗚呼、只唯一の欠点が美形好きっていう所かしらね。
因みに死因が―――」
「もう止めてくれ」

自分から聞いてきた癖に、あろう事か灰音は自身の意見総無視で情報を話してきた。
其れと同時に悪寒が先程よりも更に酷くなってきた気がする。
この幼馴染、霊の姿等この世のモノでは無いモノを感じる事位しか出来ない俺と比べて遥か数段"力"が強い分性質(タチ)が悪い。


「そう?
・・・まぁ此処は神社だからそういったモノを清める筈だし、暫く居たら自然と成仏すると思うけど」
「ああ。・・・それでも成仏しなかったらその時は頼む」
「それは私の体力と気分次第ね」

特に前者は非常に微妙な所だ。
真斗は灰音の夏限定での体力の無さには十二分に理解していた為それ以上何も言わなかった。
結局真斗は夕方まで灰音の傍に居る事で自分に憑いている霊を祓うことにしたのだった。


+おまけ+

「・・・そういえば生霊五人につき気温1℃下がるって聞いた事があったような気がするわ。
真斗、後四人連れてきて。
そうしたら体力が回復するかもしれな、」
「断固拒否する」
「・・・・・・・・・・・・・・・」

201207XX