花片ファンタジア | ナノ

「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」


平和島兄妹はそれぞれ沈黙していた。
と言っても沈黙している理由は各々違う。

栞は幽の撒き散らすオーラに。
静雄はいつもの無表情の裏に隠された何かに気付いているものの、それを突っ込んで良いのか分からずに。
そして幽はというと普段通りの無表情ではあるものの、纏う雰囲気が全く違っていた。
静雄も栞も幽と同じ年数の分だけ過ごしてきたが此処まで不機嫌を表すのは初めての経験だった。


故に。
二人は幽への対応に困っていた。



  ♂♀



「・・・・・・栞、幽。
お前等何があったんだ?」
「・・・・・・」

静雄は現在入院中の身だ。
冷蔵庫を持ち上げた時の反動で静雄は骨折してしまったので今も尚療養しているのだがその期間も長く、幽と栞がお見舞いに通うのも最早習慣と化していた。
今日もそうだと思っていたのだが何故こんな殺伐とした空気になるのか。

「・・・別に」
「別に、じゃないよ栞。一大事だ」
「・・・そうかな」
「そうだよ」
「悪ィ何の話かだ?」
「・・・あ、」
「・・・・・・今日クラスの男子が栞の事をからかったんだ。
栞は笑わないから可笑しいって」
「・・・・・・・・・あ゛?」

子供にあるまじき低音ボイスに栞はクラスメイトの男子が死亡フラグ乱立したのに気付いた。


・・・あ、終わったな。


「笑わないのは栞だけじゃなくておれもだ。
なのに栞だけ言われるのは可笑しい。
笑わなくても栞は可愛いのに・・・笑ったらもっと可愛いけど」
『・・・・・・・・・』

無表情で淡々と紡がれた最後の言葉に静雄と栞は一瞬聞き逃しそうになった。
・・・今何て言った?

「・・・幽?」
「・・・幽君?」
「何?」

感情の読めない幽の双眸を見て二人は深く突っ込まない方が良いと何となく察した為、違う話題を振る事にしたのだった。

  過保護(シスコン)の切片


大っっ変お待たせしました!(汗
幽君が主人公に対し過保護に対する切片はこんな感じかな、と思いながら書いてました。
変質者にでも遭遇した時、更に深みに入りそうだ・・・。

20121124