花片ファンタジア | ナノ

あの人気急上昇のアイドル、月宮林檎にいきなりの無茶振りを言われてしまった私。
特技とかそんな自慢出来るモノなんてなかったし、即興で歌う事に。

だって必要なものって無いしね!
自分の身体さえあれば何とかなるってモノだ。

因みに歌はこの世界には無いだろう、"前"の記憶から引っ張り出したモノ。
自分の名前すらも忘れてしまった私だけど、僅かに残る、私が普通では無いと思い知らされる、数少ない記憶の一つ。

まぁ即興だし此処音楽学校だし!
・・・ちょっと違うか。
うん、問題無し!
考案者、私なんていうつもりは無いし、もし突っ込まれたら今はもう名前も知らない人が歌っていたのを聴いて覚えた、って言っておこう・・・!


「・・・・・・ご清聴、有難う御座いました」


栞が歌い終わると、軽く頭を下げる。
すると、何処からかぱちぱちと掌を叩く音が教室に響き渡る。

その音は徐々に大きくなり口々にクラスメイトは賞賛の声をあげ、栞は無表情の裏で内心羞恥心で悶えていたのだがやはり誰も気付かなかった。

「すごーい、この曲なんていうんだろ初めて聴いた!」
「オリジナルか?何つーか心に響いた・・・!」
「俺平和島と組みたい!」

「もーう!すっごーく良かったわよ平和島栞ちゃんっ!
うふっこれからが楽しみね!
じゃあ次の子はー・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・」

林檎の鶴の一声にクラスメイトは再び会話を中断し、また自己紹介を再開させたのだった。



  ♂♀



「これでみんな自己紹介は終わったわね!
じゃあ次は―――パートナーを決めるわ。
今から説明するからよーく聞いておいてね!」


(そういえば、そんなのあったな・・・)

ぼんやりと何処か他人事の様に聞き逃しそうになった栞だったが、慌てて耳を集中させる。
彼女風に林檎の話を簡単に整理すると以下の様になった。


作曲家コース、アイドルコースの生徒の二人一組で一年間卒業オーディションに向けて曲を作る。


こんな所かな。
私アイドルコースだけど、アイドルになろうという気概?が全く無いしなぁ。
寧ろあのオジサンに言われなかったら絶対にこの学校に通わなかっただろうし。
そんな私とパートナーになってくれる人なんている訳無いし、何よりこんなにやる気の無い私と組まれるなんて申し訳なさ過ぎる・・・!


栞は内心で葛藤しているとふとある事に気付いた。


・・・そういえばヒロインは誰と組むんだろ。
Aクラスだから同じAクラスの彼等だろうけど・・・うーん?


思考に没頭するあまり、パートナー決めの方法である籤引きの順番が栞に回ってきた事に気付かず、結局音也の声に意識が浮上するまで後十秒。

  自己紹介、後にパートナー決め


お待たせしました、久々に『花片』を更新です。
早くトキヤを出したいな・・・。
でも此方の設定で書きたいネタが沢山あるので消化させるまで我慢。

20120830