花片ファンタジア | ナノ

私は今、入学式の会場に居る。

美形集団に囲まれていた私だが、入学式の開始時間が近付くにつれ他のAクラスの生徒が移動するのに便乗して見事美形集団もとい教室から逃げ出す事に成功。
入学式会場に辿り着くまで私は早歩きで来た為、私の周りには誰一人記憶にある顔は居ない。
よし、私の心の平穏は僅かな時間だけど再び訪れてくれた!
よく頑張った自分!




そして現在、入学式が開始されるのを待っているのだが。


・・・何だろう、入学式ってこんなに豪華だったっけ?
無駄に広い講堂に椅子が並べられており、舞台の左右には大きな花。
そして何故か舞台前にスタンバイしている120人クラスのオーケストラの人。



「・・・・・・」

今更だけど私、とんでもない所に入学してしまったんじゃないだろうか。
嗚呼、やっぱり入学式をサボる云々では無く入学そのものを取り消して貰うべきだったんじゃ。
否、その前にあの変なおじさんに目を付けられなかったらこんな事には・・・!


ザワリ、


「・・・・・・?」

アレ、何か騒がしく・・・、って舞台の緞帳が左右に開いてる。
という事は漸く入学式が始まるのか。


・・・等と栞は舞台に視線を向けるのだが、其処で一つの疑問が浮かび上がった。
その疑問は彼女だけでなく他の生徒も気付いたらしく、小声で囁くように呟いた。

「あれ?」
「誰も居なくねーか?」
「・・・・・・」

栞が無言の中、他の生徒達が口を揃えて小声から徐々に戸惑いの声をあげる。
しかし、次の瞬間講堂の天井が二つに割れ、少しずつ開いていく。

「な、何だアレ?」
「ジェット機か?でも何でこんなトコに?」

栞は周囲の生徒の言葉につられ、空を見上げると其処には何機ものジェット機が飛び交っている。
そしてその中の一機のハッチが開き、中から人らしき影を栞の視界が捕えた瞬間、栞は思わず自分の目を疑った。


・・・え?


「ハーッハッハッはーーッ!!」

・・・・・・ま、まさか。
まさかとは思うけど本当に飛び降りた、なんて事は無いよね!?
・・・アレ、でもあの影徐々に大きくなっているような・・・。


「・・・・・・!」
「スカイダイビング・・・・・・か?」
「いやっ!よく見てみろパラシュートを付けてないぞっ!!」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
え、やっぱり飛び降りたの?
しかもパラシュート無し?
正気の沙汰じゃないよね!?

って、あれ?・・・・・・この、声は。


ドゴォォーン!!


栞がある一つの事実に気付くと同時に凄まじい音が講堂内に響き渡る。
次いで壇上が煙で包まれる中、ポツリ、と誰かの呟きがいやに大きく聞こえたような気がした。

「・・・・・・ありゃ死んだな・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」


皆が悲痛な顔で目を伏せる中、唯一人顔色を全く変えず、静かに壇上を見つめる栞の姿があったのだが、誰一人其れに気付く事は無く。

  feroceな入学式


repeatのAクラスver入学式です。
書き終わってから誰一人キャラが出てこない事に気付きました。
名前が出ていないけど早乙女が辛うじて、というべきか(汗

補足
feroce(フェローチェ):荒々しく、激しく

20120617