花片ファンタジア | ナノ

・・・兄さん、妹はピンチです。精神的に。助けて。


「?一十木、此方の女子は・・・」
「あ、平和島とはさっき会ったんだ!」

ね!と朗らかに笑う一十木君に私は一体どういうリアクションを返したら良いんだろうか・・・。
無視しても良いけどそれだと一十木君、まるで捨て犬の様な目で見てきそうだ。
大分見てみたいけど却下。
私の中の罪悪感が疼く・・・!

(くっ、此処はやっぱり無難に返事すべきか!)

栞は無表情の下、判断し、目の前の美形二人組に目を向ける。

「(・・・兄さんや黒幕志向で見慣れているけどやっぱり眩しい・・・!)
・・・初めまして、平和島栞です」
「ッあ、ああ。俺は聖川真斗だ。一年間宜しく頼む」

真斗は栞の無表情ぶりに一瞬動揺するも、何とか声を出して挨拶をする。
外見から見るに同年代である筈の彼女の無表情さ加減は一種の拒絶にも似たようなモノを真斗は感じ取った。
それ、は、まるで、"彼女"を連想させるかのような。


しかし、栞と音也はその一瞬の動揺に気付かない。

「そういえば、平和島ってやっぱりアイドルコース?それとも作曲家コース?」
「(不本意ながら)アイドルコースです」
「やっぱり!俺達と同じだね!ね、マサ!」
「ああ。しかし・・・否、何でも無い」

・・・私の言外に含まれた言葉には気付いていないようだ。
しかし、何が『やっぱり』?ちょっと詳しく聞かせてくれないか一十木君。
そして何を言いかけた、聖川君よ。逆に気になるじゃないか!

「マサ?」
「・・・っそれより、四ノ宮はどうした?まだ来ていないのか?」
「え?俺が来た時は見てないけど・・・そろそろ来るんじゃない?入学式までもう少しだし」

話をすりかえたな聖川君。
否、それより今なんて言った?
『四ノ宮』って言った?言ったよね?それは、まさか彼のことか・・・!


栞はエンカウントのフラグに気付くと同時にこの場から逃げ出したくなった。

逃げても良いよね!
嗚呼、でもAクラスっていう事はつまり、=一年間同じクラス=今逃げても多少なりとも関わってしまうのは避けられない事実って事で・・・!!


栞がひっそりと脳内をフル稼働させているとガラリ、と再び教室の扉が開いた。
次いで、音也とは又違う明るい、だけど何処かのんびりとした声が彼女達の耳に届いた。

「あー良かった、何とか間に合いましたねぇ。
・・・あっ音也君に真斗君!お早う御座います」
「おー!那月、漸く来たぁ!」
「四ノ宮・・・丁度お前の話をしていた所だ。お早う」
「・・・・・・・・・・・・」

自分よりも遥かに背が高い金髪の青年を一瞥して栞は思わず目を逸らしたくなった。
目の前の青年にも、今の自分の状態にも。

気分はどちらかと言うと何だろう。
上手く言い表せないが、まぁ、つまり。

(・・・・・・誰か私と変わってくれないかな・・・・・・)

誰にも気付かれない位小さく、栞は涼しげな目元を細くし、僅かな時間ではあるが現実逃避を開始した。

  無色と赤色と青色と黄色


那月がログインしたようです。
次は入学式。・・・今思えば内容逆ですよね。
ゲームでは確か、入学式→教室でのやり取りだったような気がしますが『花片』では此れでいきます。

補足
少し『乙女』要素を含んでますが直接邂逅する可能性は殆ど皆無です。

20120513