虹色理想郷 | ナノ

「つゆり、頼みがあるんだが」
「またかよ征十郎君。
僕みたいな人外に頼るよりも適任者は他にいるって前から言ってるだろう?」
「オレが信頼出来るのはつゆり位だ」
「・・・そりゃどーも。それで今回は何だい?」


軽い気持ちで引き受けたつゆりだったが、赤司が酷く腹立たしげに話すにつれて、次第に内心で聞くんじゃなかったかなと思ったのは此処だけの話である。



  △▼△



「はーいそれじゃあ、日も暮れてきたところで!
良い子の皆!お勉強の時間だよー!」


教鞭を片手に少女は静かな空間で空気を震わせた。


「安っ心院さんの!
これで安心、期末テスト対策ぅぅっ!!」(安心っ)

『・・・・・・』

「うわーおノーリアクション。
大好きだぜ君達ー」
「だっ・・・?!」
「オレも安心院ちん大好きー!」
「あ、安心院っち・・・?」
「・・・オイ赤司、何で安心院が・・・」
「・・・オレと緑間だけでお前達の面倒を見るのは不安でしかないからな、急遽つゆりにも参加して貰う事にした。
そしてつゆり、無闇矢鱈に好きだの言うな」


そう淡々と放った赤司の目は冷たい。
一方『お前達』と呼ばれた面々―――黄瀬、青峰、紫原は三者三様の反応を返した。


「あ、赤司っち目!目がマジで恐いっスよ!」
「つーかお前、ただ単に安心院と一緒にいたいだけだろ」
「オレ安心院ちんに教わりたいー」
「お前達・・・」
「・・・・・・」

思い思いの反応に赤司の米神に浮かぶ血管が一本波打つ。
しかしそれは彼の鮮やかな髪に隠れて見えず、結果三人は真冬に全裸で投げ出されたかのような寒い思いを味わう羽目になった。


「まず黄瀬、それはどういう意味だ。
仮にそうだとして誰の所為だと思うのかその足りない頭で考えてみろ。
次に青峰、それがどうした何か問題でも?返答次第では基礎練五倍だからな。
そして紫原、つゆりに教わるのはオレや緑間が教えても尚分からなかった時だけだ」


隣りでブリザードを醸し出しており、緑間が青褪めているが伊達眼鏡をかけた少女は余裕のある笑みを絶えず浮かべている。
そんな彼女の姿にいっそ感動すら覚えた。


「まーくだらねー事は置いといて、とっとと勉強した方が良いぜ?
時は金なり、こうしている間にも時間は過ぎていくんだし」
「つゆりの言う通りだ。
三人とも次のテストで赤点なんてとったら・・・」

『・・・・・・』


意識していないのにも関わらず三人は殆ど同時にゴクリ、と固唾を飲む。
つゆりと緑間は無言でその様子を眺めている。

「一日オレのパシリだ。
後、つゆりの一京分の一のスキル、『猫の耳も借りたい』キャントビーキャットイヤーの刑をお前達に処す」
「赤司っちのパシリも嫌っスけど、何スかそのスキル!?」
「良い予感がちっともしねえ!!」
「全く分からんからこそ余計に怖いのだよ!」
「安心院ちんそれどんなスキルー?」
「簡単に言うと、猫耳を生やすスキルだぜ。
因みにそれとセットで『生えている』ミートテールっていうスキルもあるんだけど、どうせなら一緒にしよっか?」
「頼む」
「赤司っちー!?」「赤司ー!!」


絶叫する黄瀬と青峰、顔色をあまり変えていない紫原、そして完全に愉快犯の顔をしている赤司とつゆりの姿に緑間は頭を抱えた。

オレでは荷が重すぎる・・・!
この際誰でも良い、黒子に桃井、この状況を何とかして欲しいのだよ!


しかしいつまでも頭を抱えている訳にもいかず、緑間はとりあえず新しく出てきたスキルについて問いかける事にした。


「・・・安心院、その『生えている』ミートテールとはどんなスキルだ」
「ん?ああ・・・尻尾を生やすスキルだよ。
そして緑間君、僕のことは親しみを込めて安心院さんと呼びなさい」
『・・・・・・』


天使の様な微笑に今度こそ黄瀬と青峰は絶句した。
そしてそんな彼らにトドメのような一言が。


「さぁお前達。
つゆりのスキルの餌食になりたくなかったら死ぬ気でやれ。
万が一スキルを食らった場合、桃井と黒子に写真を撮らせるからな」
「肖像権侵害!」
「(無視)且つ、その写真を売り捌いて部費の足しにする予定だからそのつもりで」


鬼だ!

そう叫んだのは果たして何人か。
そして彼女のスキルを食らった人間はいたのかは神のみぞ知る。

  勉強は学生の本業なのです

私だけ楽しかった!
キセキにとっては赤司のパシリもとい下僕よりも主人公のスキルの方が怖いらしい(笑
因みに今回出てきたスキルは原作から引っ張ってきました。
最後の赤司の台詞は恐らく現在の拍手話に繋がっているものと予想。

20130124