「・・・つゆり!」
「うん?何かな征十郎君」
赤い幼馴染が何やら急いだ様子で僕を呼ぶから何事かと思った。
何故かって?
それは・・・うん、ほら。
征十郎君がどういう人間か知っているなら分かるだろう?
彼は僕程ではないけれど、余裕を崩すなんて事態に陥らない人間だからね。
・・・っと。話が逸れたね。
えーと何だったかな。
「・・・つゆり脱げ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
思ってもいなかった発言に、僕は笑顔のまま凍り付く。
いやはやそうなっても仕方ないじゃないか。
そういった事に興味関心を一切示さなかった彼を僕は幼馴染として多少不安はあったんだけどもうその心配はなさそうだね。
杞憂になって何より。
・・・まぁそれでも今のは聞き捨てならない台詞だ。
だから此処は幼馴染として、何より年長者としてちょっと説教しなくてはいけないな。
ゴッッ!!
「・・・征十郎君、僕は非常に喜ばしいんだか、嘆かわしいんだかイマイチ分かんねーんだけど一つ言わせて貰うぜ。
あまりそういう事を言わない方が身の為だ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
つゆりの言葉にではなく赤司は彼女の細腕から繰り出された拳によって激しく損傷した校舎の壁に沈黙した。
赤司はつゆりの幼馴染故に、約一京という膨大なスキルの一つによるモノだと分かっていてもその損傷具合に閉口するしかなかった。
「・・・つゆり、誤解だ。
オレが言いたいのは服ではなくソレだ」
「ソレってこのヘッドバンドの事かい?」
「ああ」
おいおい、紛らわしいにも程があるぜ征十郎君。
しっかしヘッドバンドとは。
・・・はて?
「それをするにあたって別に不満はない。
だが黄色なのが気に食わない。赤にしろ」
「・・・今日も見事な独裁者っぷりだね。
否、君がそうなのは分かってるんだけど・・・」
「今更だろ。
今つけている奴を外してこれに付け替えろ」
「わお、準備万端だね!
君、選択肢すら与えないつもりかよ」
全く何でこうなっちゃったんだろうね。
これじゃあ征十郎君の彼女になる娘は大変だろう。
「・・・何か今失礼な事を考えなかったか?」
「被害妄想ってヤツじゃないかい?
やれやれ全く、・・・まあ君が折角用意してくれたんだし付けてあげなくもないけど、どういう心境の変化なのかな?」
そうやすやすと君の思い通りにはならないよ。
ただでさえ、君は暴君のような存在なんだからさ。
「・・・新しく一軍レギュラーとして入った奴がいる」
「へえ」
「そいつの名前は黄瀬涼太、名前と同じ髪色をしているんだ」
「・・・つまり」
「あいつと同じカラーリングなのが腹が立つ。
だからつゆり、変えろ」
「・・・・・・」
・・・僕を絶句させる人間なんて後にも先にも征十郎君位じゃないだろうか。
否、前にいたな。
それにしても凄い理由だ、その黄瀬君とやらの名前も何処かで聞いた事があるけどまぁ今は置いておこう。
ぶっちゃけ現段階においてどうでも良い。
「そんな理由なら聞ける訳ないだろ。
っつー事で却下だ」
「つゆり!」
「君の言う事は絶対、かい?
僕は君の幼馴染である前に
悪平等だ。
一人位、君の思うように動かない存在がいた方が良いと思うんだが君は違うのかい?」
「!」
「じゃ、僕はちょっくら用事があるから失礼するよ。
・・・ああ、この赤のヘッドバンドは貰っておくとしよう、気が向いたらしてあげる。
またね征十郎君」
「待てつゆり!」
待て、だって?
僕は君のそんな些細な頼みなんて聞かない。
さっきも言った通り、思い通りにいかない人間がいた方が君をより人間たらしめる要素になると僕はそう思う。
言わば、これは僕なりの思いやりってヤツなんだけど・・・。
まー気付かなくても問題ないかな。
僕がいなくなっても人間なんて腐る程いるし、その中の一人が彼の心に残る奴がいても何ら不思議じゃない。
そう思いつつ、僕は
『腑罪証明』を使うのだった。
思春期は何かと面倒臭いのです
反響が思いの外大きかったので新たにシリーズ化してみました。
こんな話書いて欲しいというのがありましたら提供お願いします。
因みに基本時系列無視で無節操に書く予定。
20130120