虹色理想郷 | ナノ

!黒子DVD9巻ドラマCDネタ


「安心院副会長!!」
「もう、もう限界です!!」
「副会長、会計が倒れましたーー!!」
「・・・・・・・・・ああ、とうとう来ちゃったか」

安心院つゆり。
いつも以上に何処か達観したような表情を浮かべたがそんな事は生徒会室にて繰り広げられる騒動にかき消されたのだった。



  △▼△



「つゆり、放送部員に部活紹介という入れ知恵を与えたのはお前だと聞いたが」
「・・・ああその話か。
ありきたりだけど案外定番が一番良いんだよ。
それで誰がバスケ部紹介文を読むんだい?」
「黒子だ」
「へえ主将の君ではなく黒子君か。
それそれは何と言うか、意外だね」
「つゆりが指名したわけではないのか」
「いや?ただでさえ君は色々抱え込んでいるからね、こういった事は君以外にした方が良いとだけ言わせて貰ったよ」
「つゆり、」

赤司が僅かに目を見開かせた。
だがその感情の起伏もつゆりは見逃さなかった。

僅かな負担も軽減させた。
つゆりはあまりそういう事をしない。
だからこそ少し喜色の色が赤色に映し出されたのだが、落とすのも彼女だった。

「そんな時間があるなら生徒会の仕事をして貰いたいからね」
「・・・・・・そうか。
というより、お前がそんな事を言っている時点で意外でも盲点でも無いだろう」
「そうかい?」

左右の手に意思が宿っているかのようにさらさらと別々の書類に文字が書き込まれていく。
いつ書類の文章を読んで何が必要であるのかという事を瞬時に理解し、必要事項を書いているのか。
相も変わらず奇想天外な事をする幼馴染を見て深い溜息を吐く。


「そういえばさっきの件だけど黒子君が話した、と取って良いのかな?
放送委員がわざわざ君に話すとは考えにくいし」
「ああ・・・黒子がバスケ部紹介の原稿について相談されてな。
なかなか良かったが、紹介するのが黒子というただその一点において難題だった」
「わっはっはっは、確かに黒子君の影の薄さは長所であり短所でもあるからね。
今回は流石に難しかったか。
それで?君は一体どんなアドバイスをあげたんだい?」
「別に。
ただ聞いている人間に興味を持たせるような台詞を言ってみては、と提案しただけだ」
「ふむ。まあ中学生とは良くも悪くも自分の事や目の前の事でいっぱいだからね。
放送を聞いて貰えるかどうかはまた別の話になるわけだけど」
「問題無い。
バスケ部が誰にも気に留めて貰えないなんて事があって良いわけが無いからな、既に手を打った」
「流石征十郎君、抜かりは無いようだね。
ちなみにどんな内容か聞いても良いかな?」
「ああ」

赤司がその内容を話す中、つゆりはゆらりと仄暗い笑みを浮かべる。
しかしそれは一瞬だった。
普段の赤司なら見逃さないものだったがこの時は丁度書類に目を向けていたので見逃してしまった。
―――それを痛烈に後悔する事になるのだがこの時点で既にもう後の祭りである。



  △▼△



好きな時に好きな場所にいられるスキル、『腑罪証明アリバイブロック』を用いて赤司にあるメモを渡された後、放送部員にチェックして貰う前の黒子に会いに行ったつゆりは何事も無かったように笑った。


「やっほー黒子君、今から放送委員会の所に行くんだよね?」
「安心院さん」
「さっき征十郎君に貰ったメモを僕にも見せてくれないかい?」
「・・・どうしてですか?」
「いやいやさっき征十郎君に面白い事を聞いてね。
だったら僕も協力しようかと思ったんだ」
「そうなんですか、安心院さんが協力してくれたら百人力、いえ此処は京人力ですね。
お願いします」
「嬉しい事を言ってくれるじゃないか。
僕にかかればそんな事何て事無いさ」
「そうですね」

ふわりと微笑する黒子に仄暗く笑うつゆり。
赤司から手渡されたメモを彼女に渡すとすかさず手に持っていたペンで何かを書き足す。
その時間一分弱。

「はい、これで更に反響は凄い筈さ」
「有難う御座います安心院さん」
「いやいやこれ位お安い御用さ。
僕も楽しみにしているぜ黒子君、当日が楽しみだ」
「・・・そう言ってくれると嬉しいです」



これがその時の会話。
そして現在。
つゆりは視聴覚室にてバスケ部レギュラー達と一緒に昼食を共にしていた。



「―――君達そろそろ黙ろうか。今から面白いものが聞けるからね」
「安心院っち!」
「あん?安心院それって一体、」

黒子の部活紹介が終わるとまた騒ぎ始めようとしたキセキにつゆりの一声がぴしゃりと視聴覚室に響いた。
その台詞に胡乱気な表情と視線を隠さずに向けるキセキ達は瞬時に悟る。

楽しげに愉しげに笑う彼女の姿。
教卓に腰をかけて優雅に笑うその姿は確かに絵になるが、この時の笑顔は油断ならないものである。

何せ彼女は赤司征十郎の幼馴染。
否、この場合安心院つゆりの幼馴染だからこそ赤司征十郎という人間を作ったと言っても過言では無いだろう。

赤司征十郎の幼馴染だから。
安心院つゆりの幼馴染だから。

この二つの言葉は意味こそ同じだが、含まれている内容は全然違う。

「ああ、始まるね。じゃあ僕は退散するとしようかな」
「は?」
「それはどういう事なのだよ安心院、」

緑間がそう尋ねた瞬間、黒子の声がまたスピーカーから聞こえてきた。
今度はキセキ達が先程より騒いでいない分、より鮮明に耳に届いた。

『ここでバスケ部からお得なお知らせがあります。
まずは黄瀬君ファンの方に朗報です。
本日黄瀬君は一日ツーショット写真を撮り放題フェアを開催中ですので今日がチャンスです』
「はぁ!?何スかそれ!聞いてないスよぉお!!」
「あはははは!マジでスゲーな、おい!」

まず一人目の犠牲者は黄瀬。
思った通りの展開に赤司とつゆりは黒く笑う。

『続いて青峰君を指導したい先生方に朗報です。
本日、青峰君に宿題を出すと必ずやり遂げるぞキャンペーンをやっています。
今日が狙い目です』
「なっ!?何言ってんだテツ!?」
『更に骨董品好きの方、本日緑間君秘蔵の骨董品を一挙バーゲンセールします。
このチャンスをお見逃し無く』
「バカな!誰もバーゲンセールなどしていないのだよ!!」

話しているのは黒子だが諸悪の根源は赤司である。
しかしキセキ達は赤司達の表情に気付かない。否、気付けなかった。
そしてそうしている間も彼の怒涛の追撃は終わらなかった。

『そして食玩マニアの方に朗報です。
紫原君が集めた天使のゴールドマークを先着三名様にプレゼントします』
「・・・黒ちん、何でオレが三枚持ってるって知ってるのー?」

黒子の追撃は此処まで。
赤司は徐に席を立とうとしたその時。
彼の予想を上回る、最後の意趣返しが襲ってきた。

『最後に生徒会役員、各委員会委員長の方に朗報です。
本日我が男子バスケ部主将にして生徒会会長、赤司君が今まで溜めていたという彼の署名印鑑が必要な書類を全て決算してくれるとの事です』
「・・・・・・は?」
『以上、興味をお持ちになった方々は至急視聴覚室へ向かって下さい。
個性的な部員の揃うバスケ部を今後も宜しくお願いします』

『・・・・・・・・・・・・』

「な、何だったのだよ・・・今のは」
「わっはっはっはっは、そんなの決まっているじゃないか。
征十郎君の入れ知恵だよ、見事にやられたね君達も」
「はあ!?」
「赤司っち何で、・・・あれでも最後赤司っちの名前が、あれ?」
「っまさかつゆり!」

柘榴色の瞳が真っ直ぐにつゆりを射抜くも彼女にとっては何処吹く風。

「その通りだぜ征十郎君。
まさか昨日生徒会室にあったのが全ての書類だと思ってたわけじゃないだろう?
あんなのほんの序の口だぜ、ああ安心したまえもう白金君にも真田君にも話はつけているから」

『・・・・・・・・・・・・』


彼女が教師を『先生』と呼ばない事は知っている。
いやいや違う、問題は其処じゃない。
黒子に続く第二の刃が赤司の胸を突く。
一体何と言ったら良いのか考えあぐねている赤司の姿は結構貴重なのだがそんな余裕は無かった。


「それじゃあ征十郎君放課後は宜しく頼むぜ。
・・・ああそろそろ君達も避難した方が良いんじゃないかい?
僕は一足先にお暇させて貰うよ」
「は?」
「っ待てつゆり!!」

叫ぶのと同時に駆け出す赤司だが彼の手がつゆりを掴む事はなかった。
それよりも早く『腑罪証明アリバイブロック』を使って安全な場所に逃げたからだ。

それからコンマ一秒後、青峰が視聴覚室に迫ってくる足音に気付いたのは別の話だ。




「・・・安心院さん本当に良かったんですか?」
「わっはっはっは、この僕がこんな機会を見逃すわけが無いじゃないか。
ついでに言えば逃げ道もね。
策士、策に溺れるとはまさにこの事だ。作戦はもっと考えて使わないと。
数日前に会計が倒れて庶務が泣きついて書記の目が血走って委員会の人間は皆てんてこ舞いだった。
僕が人外で一京のスキルを持っているからと言って何でもかんでもしてあげるわけじゃないんだよ、たまには良い薬になると思わないかい?
勿論征十郎君の負担になるといけないから書類を全て決算するまで部活は休むよう伝えてある」
「・・・・・・そうですか」
「わっはっはっは・・・・・・げらげらげらげら。
さて黒子君、静かな場所を探しつつお昼を食べようじゃないか」
「・・・・・・はいお供します」

  彼女を怒らせてはいけません

七星様に薦められて聞いたのですがドラマCD面白いですね!
『虹色』で考えたら面白いだろうなーと思いながら書いてみました。
そろそろ甘夢書こうかなでもその前に原作誠凛VS洛山書きたい。

20140617