虹色理想郷 | ナノ

帝光中学校バスケットボール部。

部員数は百を超え、全中三連覇を誇る超強豪校。
その輝かしい歴史の中でも特に『最強』と呼ばれ無敗を誇った。
十年に一人の天才が五人同時にいた世代は『キセキの世代』と言われている。

―――が、『キセキの世代』には奇妙な噂があった。
誰も知らない。試合記録も無い。
にも関わらず天才五人が一目置いていた選手がもう一人―――幻の六人目がいた、と。


そしてもう一つ、噂があった。
彼等五人の天才を上回るという、あまりにも飛び抜けた才能と魅力的過ぎる人格を持つ人物がいた、と―――。



  △▼△



私立誠凛高校。

桜が舞い散る中、黒子は静かに門を潜る。
その先には二年生が新入生を部活の後輩にすべく声をかけまくっている。


「ラグビー興味ない!?」
「将棋とかやったことある?」
「日本人なら野球でしょー」
「水泳!!チョーキモチイイ!」


「わっはっはっはっは、凄い熱気だなあ。
さて黒子君、目的地は何処か分かったのかい?」
「はい、安心院さん。
バスケ部のブースはあっちだそうです」
「良し、では善は急げだ。
行こうか黒子君」
「そうですね」


艶やかな黒髪を風に靡かせながら、空色の彼―――黒子テツヤと歩く少女。
名前は安心院つゆり。
二人共今日からこの誠凛高校の生徒だ。


(・・・さて彼等と同等、またはそれ以上の天賦の才能の持ち主を探すとするか)

つゆりは僅かに笑みを零しながらも歩みを止めず、二人はある場所に向かうとある一人の赤みがかかった髪の男が椅子に座って何かを書いているのが見えた。



「おや、どうやら彼処みたいだね。
ほら黒子君早く行っておいでよ、僕は此処で待っているからさ」
「そうですね行ってきま・・・安心院さん、その紙は」
「彼処の机の上にある紙を拝借しただけさ、もう必要項目は全て書いておいたから後は君が置いてきてくれ」
「・・・・・・見間違いでなければ僕の分も書いてあるように思えるんですが」
「見間違いなわけ無いじゃないか、君の分もしっかり君の筆跡の特徴を掴んで書いておいたよ」
「ああ本当ですね・・・ではなく!
安心院さんはいつの間に筆跡を真似る事が出来たんですか!黄瀬君ですか!」
「否僕も出来ないと思っていたんだけどね、やってみたらすぐ出来たよ。
案外簡単だね」
「・・・もう何も言わないでおきます」
「わっはっはっは、懐かしいね征十郎君も最終的にそう言って諦めて何も言わなくなったよ」
「・・・・・・あの赤司君が諦めるなんて相当ですね」


遠い目を明後日の方向に向けつつ、どうやって入手したのか不明極まりない入部届けをとりあえず机の上に置いておく。
・・・赤みがかかった男に全員が気を取られているので、視線誘導する事もなくいつも通り、誰にも気付かれない。
本当なら寂しさが生まれる筈だがもう慣れてしまった。
しかし今は―――。


「有難う黒子君、では顔合わせは明日かららしいし今日は帰ろうか。
・・・ああ君の好きなバニラシェイクを買いにマジバへ寄り道するかい?」
「行きます!」


(へえシェイクの種類はこんなにあるのか)
(僕はバニラがオススメです)
(ふむ、・・・すみません、此処にあるシェイク全種下さい)
(!?)

という事で原作沿い第一弾。
安心院さんの最後の台詞に何人が引っ掛かりを感じるのか。
これが伏線というヤツか?

20131212