虹色理想郷 | ナノ

!高校編A
!洛山高生徒
!『恋々』要素有



『それではおは朝占いの時間です!』

おは朝。
その番組で特に有名なのは占いコーナーだ。
ただの占いと侮る事なかれ。
占いなのによく当たると特に女子には評判だ。
その占いの信者と言っても過言ではない彼は一言も聞き漏らさないと言わんばかりにテレビ画面を見つめている。


『明日の最下位の星座は・・・蟹座の貴方!
明日は何をしても不幸な結果にしかなりません。
ラッキーアイテムは"スキルホルダー"!
スキルの数が多ければ多い程、不幸の回避が出来る上にそのスキルで幸運が舞い込んでくるかもしれません!』

「・・・・・・」


テレビから流れる声に彼―――緑間真太郎は数秒沈黙する。
次いで思考する。


明日。
明日は自分と同じキセキがいる学校と練習試合だ。

そんな大事な日に不幸?しかも最下位。
ラッキーアイテムは"スキルホルダー"。
知らない者は何の事か分からないだろう。
だが。
自分は知っている。識っている。

しかもスキルは多い方が尚良いという。
そんな打って付けの人物と自分は知人関係だ。


「・・・」


其処まで思い至った緑間が次の行動に移すまでの時間は然程無かったのは言うまでもない。



  △▼△



「・・・なぁ真ちゃん。」
「何なのだよ」
「すっごい美人な女の子だけど、何処から連れてきたの?」

高尾の目の前には毎日見ている緑色の男と艶やかな黒髪と黄色のヘッドバンドが特徴的な美少女がいる。
前者は問題無いが、後者に関しては大アリだ。

何故なら。
あの恋愛関係にはまるで興味がない緑間が妙に親しげな様子で異性を連れているのだ。
これをヘンと言わずに何と言う。

「馬鹿め。
今日のラッキーアイテムに決まっているのだよ」
「ラッキーアイテムって者じゃなくて物だよね!?
ちょ、とうとう頭がヘンになっちゃったのかよ真ちゃん!?」
「オレの頭は正常なのだよ、ヘンとは失礼な!」

そんな事どうでも良いから!
っつーかその娘(こ)の制服ってあれだろ、何でよりにもよって洛山んんんんっ!?


高尾・緑間が所属する秀徳高バスケ部は、高尾の心からの絶叫突っ込みに深く賛同した。
緑間の変人ぶりには慣れたつもりだったが甘かった。
綿菓子より甘い。

今日のラッキーアイテムを揃えられなかったからといって敵校の、しかも洛山の女生徒を連れてくるとは思わなかった。
確かに今日の蟹座のラッキーアイテムはよく分からないものだった。

蟹座のラッキーアイテム。
確か"スキルホルダー"だったと思う。

自分達はよく分からなかったものを緑間が見事見付けてくるとは思わなかったがこれはダメだ。
流石に見過ごす訳には、と先輩組が思った瞬間。


「・・・全くだよ緑間君。
いきなり電話で呼び出すから何事かと思ったけど、この僕を物扱いしたのは有史以来君位なもんだぜ」

深々と溜息を吐く、そんな姿も絵になる彼女はそう自分達と年が変わらない筈なのに酷く歳上に見えたのは気の所為だろうか。
そんな彼等の思考を余所に彼女と緑間は話を進めていく。

「・・・それは、」
「ああ別に気にしなくても良いよ。
僕は"約束"さえ守ってくれたら、それで構わない」


・・・約束?


緑間を除くメンバーが首を傾げ、疑問を口に出そうとした瞬間それをかき消すように彼女の口が開いた。


「僕の名前は安心院つゆり。
今日の緑間君のラッキーアイテム、"能力所有者スキルホルダー"な人外さ。
僕のことは親しみを込めて安心院あんしんいんさんと呼びなさい」

見目麗しい顔に微笑を浮かべた彼女、もとい安心院つゆりに赤面したのは果たして何人か。
其方方面には鋭いであろう黒子や黄瀬が見れば釘を刺す所なのだが、この場にいるのは緑間であった為絶対に必要な忠告を出来ずに終わる。

そして次の瞬間体育館に入ってきたつゆりと同じ高校―――洛山高校バスケ部に秀徳メンバーに緊張が走る。
その筆頭を歩く人物の異色眼が捉えたつゆりの姿に赤司の目が丸くなる。


何故彼女が此処に居る?


「・・・つゆり?」
「おや征十郎君じゃないか」
「何故つゆりが此処に、」
「緑間君に言われて来たのさ。
今日の僕は緑間君サイドだけど、まぁいつも通り気軽に話しかけてくれ」


ピシリ、


『・・・・・・』


今。
比喩でも何でもなく、体育館の空気が確かに凍り付いたような気がしたのは気の所為ではない。



「・・・せ、征ちゃ」
「あ、かし・・・?」
「・・・」

赤司から発せられる無言の圧力と冷風にめげず実渕と根武谷が恐る恐る話しかけるが、此処でまた新たな声が響いた。


「やっと着いたー!」
「な、何とか間に合った・・・!」

「また皆と練習が出来るなんて嬉しいっスねー!」
「おい黄瀬遊びに来た訳じゃねェんだぞ!」

「あららーこのお菓子超おいしー」
「良かったね敦」

「おい青峰!
サボんじゃねーぞ!」
「青峰君、早く来て!」


『・・・・・・』
「・・・・・・」

「・・・あれ?」
「あ、緑間っち赤司っち!久しぶりっスね・・・って、」
「あ、安心院ちんだー」
「・・・安心院さん?」

嘗てのチームメイトのそれぞれの空気を読まない発言に張り詰めた緊張の糸を容易く壊したこの光景につゆりは苦笑したのだった。


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近々続きを書きます!(汗

20130320