虹色理想郷 | ナノ

!高校編@
!『恋々』要素有



きっかけは何だったのか、もうよく覚えていない。
いつの間にか、あれよあれよと各校の監督達がある企画を進めた結果、黒子達は現在「キセキの世代」を獲得した五つの高校と合同合宿を行っていた。


今回のお話は秋田から京都と、大規模な合同合宿で行われたある一夜の出来事である。



  △▼△



「合宿って言ったらやっぱアレっスよね!」
『・・・アレ?』


発端は黄瀬の一言だった。
輝かしい笑顔で言われた単語に、その場にいた赤司を除いたキセキのメンバー、黒子、火神、実渕は首を傾げた。


・・・アレって何だ。


「定番の恋バナっス!」
「黄瀬君、自分がリア充だからって他人にもそんな事求めないで下さい」
「酷い!」
「あれ黄瀬ちん結局あの娘(こ)と付き合ったんだ?」
「あーアイツか」


冷ややかに見つめる三対の眼に黄瀬は撃沈しそうになった。
わかってはいたがやはり実際に体験すると結構キツイものがある。
が。


「へー黄瀬って彼女居たのか?」
「実は居たんですよ火神君」
「どんな奴?」
「顔は良いけど胸が小せ、」
「青峰っちは一体何処見てんスか!!」
「そーよ最低よ!」
「峰ちんへんたーい」
「お前は本当に中学から成長していないのだよ」


青峰の幼馴染や彼が愛読するグラビアと比べないでほしい。
というより自分の友人(と信じたい)の彼女なのに失礼にも程があるだろう。
・・・彼女に、というより彼女の兄妹(特に兄)に知られたら最悪、青峰はマグロ漁船行きかもしれない。


「・・・えーと・・・黒子はソイツに会った事あんのか?」
「はい。白い肌が黒髪に映える美人な方でしたよ。
黄瀬君には勿体無い位です」
「黒子っちー!?」
「確かに黄瀬に目を付けられるという事実を知っただけで分かる位アイツは男運が無い奴だ」
「緑間っちまで!」


ぎゃあぎゃあと話して数分後。
火神が突然ある名前を出した瞬間、空気が凍り付いた。


「そーいや赤司って彼女いるのか?
何つーか想像もつかねーんだけど・・・」


ピタリ、


彼女。恋人。


嘗て、彼と同中だった黒子達は火神の台詞に一時停止した。
現在同じ高校の実渕はそんな彼等の反応に気付いていたが敢えて指摘せず、代わりに別の言葉を口にした。


「居ないわねー。
眉目秀麗、運動神経抜群、全戦全勝でバスケ部主将ときたら女の子が放っておかないし、実際引く手数多なんだけど・・・征ちゃんがOKしたって聞いた事がないわ」
「・・・でしょうね」
「寧ろOKする等、天地が引っ繰り返っても有り得ないのだよ」
「てゆーかそれでこそ赤ちんだし」
「諦めるっていう選択肢はねーのかよアイツは」
「赤司っちが諦める訳無いっスよ青峰っち」
「・・・な、んだお前ら?何言ってんだよ?」


キセキのメンバー、それに加え黒子の意味深な発言に狼狽する火神に彼等は何とも言えない表情を浮かべる。
そんな彼等の脳裏に描かれたのは、一人の少女。


「・・・赤司にはオレと同じように幼馴染が一人いる。
否、正しくは"いた"、っつーべきか?」
「いた、って・・・じゃあソイツはもう此処には居ないってのか?」
「亡くなった、って事?」
「・・・否、そうではない。
消えたと言った方が良いだろうか。
何せ、オレ達以外の記憶から存在そのものが無くなったのだから」
『な・・・!』


想像だにしなかった言葉に火神と実渕は絶句する。

記憶から存在ごと消えてしまうなんてそんな馬鹿な話、聞いた事がない。


「まぁアイツは普通の人間には"出来ない事"を簡単にやってのける存在だから今更どうやって、とは思わないが・・・」
「問題は何で誰にも言わずに突然消えたっていう事だしねー」
「・・・は?おいそれってどういう事だよ?」
「その子ってどういう子なのか聞いても良いかしら?」


実渕の疑問に、キセキと黒子は一瞬沈黙する。
しかし次の瞬間には全員間髪入れずに口を開いた為、台詞が全て重なる結果となった。


「平等主義者です」
「色んな意味で凄い人っス!」
「アイツは人間が超えてはいけない壁なのだよ」
「あー、女帝?」
「優しーしオレ大好きー」


・・・聞いてみたのは自分だが、全く分からない。
答えが返ってきたのにも関わらず謎が深まるだけって一体どういう事だ。


二人が混乱する中、黒子は二人の内心を見抜いたのかその幼馴染について更に付け加えた。


「・・・"彼女"の名前は安心院つゆり。
嘗て、学校中の誰もが親しみを込めて安心院さんと呼んでいました」
「因みに赤ちんとの戦歴は全戦全勝で、赤ちんが唯一負けを認めた凄い女の子だよー」


今でも思い出せる、黄色のヘッドバンド、身の丈と同等の長さの黒髪。
自身の事を人間じゃないと豪語する少女。
赤い彼が唯一、負けを認める存在。


彼女、安心院つゆりに出会うまで後―――。

  彼は諦めが悪いのです

今回は赤司も主人公も不在のお話。
リクエストが早速届いたのでupしてみました。
ネタの提供、有難う御座います!

20130131