恋に恋して | ナノ

散葉は今の自分の置かれている状況を冷静に分析した。

場所は校舎裏、目の前にいるのは一人の女子。
容姿もスタイルも申し分無しの女子なのだが如何せん散葉には全く面識の無い人物だった。

そんな彼女が一体自分に何の用なのか。

散葉は内心首を傾げる羽目になった。



  ♂♀



「このクラスに折原散葉さんっている?」


教室のドア付近でそんな会話がされていたのが始まりだった。
いきなり声をかけられた男子生徒はたどたどしく「います」と返事を返すと女生徒はぱっと花が咲いたように笑って口を開いた。


「じゃあ悪いけど折原さんを呼んでくれないかなっ?」


男子生徒は首を傾げながらも、件の散葉の元へと足を運び、次いで呼んでいるよと声をかけた。

そして何故かその女生徒により散葉は教室から出る事になり、現在に至るのだが。


うーん・・・?
本当にこの人誰だっけ?
イザ兄の元で情報屋紛いのことをしていたけどこんなお客さんいたかな。
否もしかしてあの蒲公英頭の取り巻きか何か?


「・・・あの、どちら様で?」
「えっぁ、ご、ごめんなさい!
あまりにも貴女がそっくりだったからつい魅入っちゃって・・・!」
「・・・そっくり、ってまさか」


彼女の一つのキーワードに散葉は僅かに青褪める。

散葉の容姿は背中まで伸ばされた直毛の黒髪。
夕焼け色の瞳。
この二つの色は妹の双子とは違う。
自分と同様、黒髪赤目であるのは情報屋の兄だ。


「はいっ貴女の苗字が"折原"って聞いて、えっとそれで、もしかしてって思って確認させて貰ったの!
それであのっ・・・散葉さんの顔の造りが臨也さんと似ているからやっぱりって思って!
それに私っ、ちょっと遠くに居たんですけど臨也さんと散葉さんが一緒に居る所を見た事があってそれでっ」
「・・・・・・・・・」


彼女の正体。
それは兄、臨也の信者だ。


「・・・そ、そうなんですか」
「はい!
あ、臨也さん元気ですか?
私、全然臨也さんに会えていなくて・・・」
「・・・・・・・・・」

兄とそっくりだと言われるのは心外だが今は置いておこう。
それよりもショックなのが誰も知らない土地で高校生生活を送れると思っていたのにまさか知っている人が居るとは。


散葉は早くもバレてしまった事実にどうやって内密にして貰おうか、現実逃避をしそうになった頭で考え始めたのだった。

  まさかの事実

黄瀬君が出てこなかった・・・。
とりあえず信者の女の子を出したかったのです。

20121115