恋に恋して | ナノ

「勝つのはオレっスよ」


そう、彼は言った。
なんて自信だろうと、なんて傲慢なんだろうと思った。
そして危ういと思った。

だって彼は敗北の二文字を知らない。
だからこそ立ち直る術を彼は持ち合わせてなんかいない。



  ♂♀



どうしてこうなった。

散葉は誰に問うわけでもなく、ただそう思った。
目の前には金髪のクラスメイト。
土下座でもせんばかりの気迫に散葉の口角と頬の筋肉が引きつった。

「・・・黄瀬君、何か用?」
「散葉っちマネージャーして下さい!」
「・・・・・・何で?」
「人手が足りないからに決まってるっスよ!!」
「・・・・・・」


散葉は何となく、黄瀬がこんな事を言い出した理由を理解した。
現在の海常女子生徒の大半は浮き足立っていると言っても良い。
大方ミーハーな女子がこの金髪少年目当てにマネージャー希望するも、仕事を殆どしないからお断り。
だが今度はマネージャー業をする者が誰もいなくなった。
・・・という感じだろうか。
一体何処の三文小説だ。

散葉はそっと溜息をつく。
マネージャー位、本気で探せば一人位見付かるだろうに、何故自分を巻き込もうとするのか。

確かに私は美形には耐性がある。
兄や静雄さん、極めつけは幽さん。
数々の美形を見ながら育ってきた私に死角はない!
だから今更黄瀬君が来たところで私の心が動かない。
むしろ年下に良いようにされないんだから!


「ていうか何で私なのさ?もっと他に適任者くらいいると思うけど」
「散葉っちが適任者っス!」
「聞いてる黄瀬君、なんで私なの?」


あー、年齢を感じる気がする。
いやそんな事よりも日本語で喋って下さい。
意思疎通って大事な事です、はい。

「そんなの決まってるっス、オレが散葉っちにマネージャーをしてほしいって思ったからっスよ!!」
「・・・・・・」


コイツ、爆弾を放り投げ寄った。

「ふ、ふざけんなーーっっ!!」


拝啓、遠くの地にいる母と父へ。
私は近い将来、クラスの女子からの視線に腹に穴が空きそうです。


転生していたら幽に恋心を抱かなない模様。
そして恐らくこの後押し負けた主人公。

20141129