恋に恋して | ナノ

!もし主人公が転生主(知識有)だったら



「舞流!起きなさい!」


私、折原散葉の朝は双子の妹を起こす事から始まる。
イザ兄も朝は弱い方だけど流石に命を粗末にするような真似は絶対にしない。
だって静雄さんと日々命懸けの鬼ごっこをしているんだ、私みたいな一般人Aが起こしに行ったら最後、私の人生がTHE ENDなのは目に見えている。


「チル姉、まだねむいー・・・」
「だったらもっと早く寝な、さい!!」

ばさあっと容赦なく布団を引っぺがすと、其処には舞流だけでなく九瑠璃も丸まって寝ていた。
・・・・・・通りで九瑠璃の姿が見えないと思った。


「いやあー!チル姉のばかっ!
まだねーたーいー!!」
「姉・・・眠」
「今起きないと野菜盛り沢山の味噌汁をプレゼントするよ」
「っっ今起きる!起きるからっ!どうかそれだけはチル姉!!」
「怖」
「最初からそうしなよ二人共・・・」

双子には効果覿面の魔法の言葉により、折原家の朝は始まる。

「あっ今日も愛してるからねチル姉!!」
「・・・・・・はいはい」



  ♂♀



「あっ散葉っち!!」
「・・・・・・」

この世界が小説の世界だと思って生きていたのに高校生になってその考えはいとも容易く潰された。
此処が小説と漫画が混じった世界なのだと誰が思うのか。
いたらその人は神様か何かだ。


「散葉っち!昨日黒子っちと会ったんス!」
「ああ・・・・・・うん、黄瀬君本当に黒子君が好きなんだね」

海常高校一年の教室に入ってすぐに話しかけてきたのは輝かしい笑顔を惜しみ無く振りまく黄瀬涼太。
私を、小説と漫画が入り混じった世界だと容赦無く突き付けた張本人。

イザ兄だけで手一杯なのに!
必死に抵抗してもあっさり負けて情報屋なんて危険極まりない世界に踏み入れさせた兄なんてもう知りませんと言いたいのに出来無いこの気持ち、誰か分かって貰えますか。

「そりゃあソンケーしてるっスからね!」
「・・・そ、そう」

尊敬位漢字で言いなさい。
そう言ってやりたいが、ぐっと堪える。

前世で読んだ彼の、彼等の過去。
大人の事情で彼等の取り巻く環境はひどく歪んでしまった事には僅かに同情するけど、それだけだ。
彼等もきっとそんな感情は不要で、余計なお世話というものだろう。


「勿論散葉っちもソンケーしてるっスよ!」
「え?」
「成績も学年で一桁の順位で落ち着いてるし先生も散葉っちの事褒めてたし。
それって散葉っちの事凄いって思われてる証拠っス」
「・・・・・・」

成績が良いのは単純に二周目だから。
落ち着いているように見えるのは精神年齢と肉体年齢が合致していないから。

そう言えたらどんなに楽か。
散葉はがくりと肩を落としつつ、力の無い声で席に着こうと黄瀬に提案したのだった。



ふと思い至って書いてみた。
知識有、転生主だったら臨也とは距離を置こうとするものの、何だかんだで臨也から逃げる事は出来無い。
性格面においても落ち着きが増している。別の言い方だと冷めている。
此処は本編とあまり大差がないかも。

20141128