恋に恋して | ナノ

!キセキとの初邂逅シリーズA青峰ver
!片想い


(・・・・・・うわ、今度は青色か・・・否、黒色?
肌の色黒ッ!)
「・・・おい黄瀬、今度は何だ」
「散葉っちっスよ青峰っち!
散葉っち、こっちは青峰っちでオレと同じ『キセキの世代』の一人っス!」
「・・・へぇ。
初めまして、折原散葉です」

ペコリ、と軽く会釈した散葉に青峰の縹色の双眸が僅かに瞬いた。


(・・・コイツが折原散葉?
例の黄瀬の・・・)
「・・・えーっと・・・?」
「・・・っ・・・あー、青峰大輝だ」


192cmの自分と目の前の少女の身長差は大体30cm位だろうか。
いつも一緒に居る桃色の幼馴染と同じ目線なので恐らく間違いは無いだろう。

必死に自分を見上げる彼女を青峰は間接的に知っていた。
理由は勿論、中学時代の旧友である黄瀬からの情報である。


真っ直ぐに伸ばされた背中の半ば程まである黒髪。
髪と同色の睫毛に縁取られた瞳の色はまるで夕焼けを切り裂いたように赤い。
黒髪に映えた白い肌。


(・・・顔の作りは黄瀬が騒ぐだけあってまぁそこそこか?
あーでも・・・)
「あ、君が青峰君なんだね。
黄瀬君から色々聞いてたけどやっぱり大きいな・・・」
「散葉っち身長の事ばっかりっスね」
「う、五月蝿いな!
だってホントにそう思うんだから仕方無いだ・・・でしょ」


最後の台詞にて散葉は自身の口調が荒くなるのを慌てて止めて言い直した。
危ない危ない。

・・・否、怒った時口調が変わる事位バレても構わないのだけど何か嫌だ。
初対面の人だって居るのに変な印象を持たれるのは流石に御免被る。

初対面でイタイ人間だなんて思われるなんてそんなの兄で間に合ってます。もう充分です。勘弁して下さい。


「・・・黄瀬ェ、コイツがお前の好―――」
「わああぁぁあ!!」
「!?」

青峰の台詞を覆い被さるようにして黄瀬が大声をあげる。
その声がいきなりだった事もあり散葉の両肩は大きく震え上がった。


「ごっゴメン散葉っち!
青峰っちちょっとこっちに来て!!」
「あ゛?」
「良いから来るっス!!」
「―――え、黄瀬君?」


脱兎の如く今居る場所から離れた黄瀬とその黄瀬に引き摺られる様な形で退場した青峰。
散葉は呆気にとられた為か夕焼け色の双眸を瞬かせるのだった。




「っオイ黄瀬、」
「何いきなりぶっちゃけようとしてんスか青峰っち!」
「必死だなオイ・・・つかお前ならさっさとアイツ・・・折原?に告ってガンガン攻めると思ってたんだが」
「っ・・・色々あるんスよオレにも」
「つーかああいうのがお前の好みなんだな」
「・・・え?」


黄瀬は青峰の言葉の意味がよく分からなかったのか僅かに首を傾げた。
そんな黄瀬に青峰は一つ溜息を吐くと、徐に口を開いた。


「お前、中学時代本気で好きになった奴いないだろ」
「っ!」
「女の方から告白されて、その度に付き合って暫くしたら別れてばっかだったお前が初めて"自分から"好きになった女、それが折原だ」
「・・・・・・・・・そうっスよ。
でも彼女みたいなタイプが俺の好みだったのかは分かんねっス。
いつの間にか惚れて好きになってた。
オレの好みだろうがそうじゃなかろうが、オレが折原散葉っていう女の子を好きになったのは事実で、だからオレの好みのタイプとか今はそんな事関係無いっスよ」
「・・・黄瀬、」
「なーんて、格好付け過ぎっスよね・・・」


本当は伝えたい。
だが伝えたら、きっと壊れてしまう。
それはこの曖昧な関係だけではない、もっと別の何かも、一緒に。


その時見せた黄瀬の一瞬の表情に、青峰は今まで浮かべていた何処か乾いた表情を掻き消した。


「・・・黄瀬」
「?何スか青峰っち?」
「・・・・・・・・・・・・・・・」


青峰は気付いたら黄瀬に声をかけていた。
いつの間にか、本当に無意識の内に。

しかしそんな事に気付かず黄瀬はきょとり、と瞳を丸くして青峰を見ている。
その瞳から避けるように青峰はチッと舌打ちした後、顔を背けた。


「・・・何でもねェ」
「はっ!?何スかそれ!?」


先程の空気を払拭するような会話に痺れを切らした散葉が駆け寄るのは後五分後の事であった。

青峰編ですが書くの難しかった・・・orz
後終わり方はこんな筈ではなかったのに何故こうなった?(真顔

20121231(20140410再録)