恋に恋して | ナノ

私の家族は何処かしら変だ。

家族の中では至って真っ当だけど名前のセンスが可笑しな両親。
独自の哲学、人間愛から行動する自称素敵で無敵な情報屋の兄。
そんな兄の影響を受け、兄に好かれたいが為に変わってしまった妹二人。


そんな家族の中で私は比較的マトモな部類であると思っている。
というか信じたい。


「イザ兄、頼まれていた仕事終わったよ」
「・・・もう出来たんだ散葉。
流石俺の妹だねぇ」
「イザ兄うざい」


頼んできたくせにその言いようは何なのさ!
眉が逆八の字になっている私だけど怒ったらイザ兄の思う壺だ。
此処は我慢。


「思ったよりも早く仕事をこなせるようになったようだし、・・・はい散葉これも宜しくね」
「・・・・・・・・・え?」
「妹が優秀な助手になってくれて助かるよ。
あ、これ急ぎだからね」
「今更だけど何で私がイザ兄の仕事を手伝わないといけないのさ!?
イザ兄が受けた仕事だろ!
そして誰が助手だ勝手な事を言わないでくれるかな!」
「本当に今更だね。
客観的に見て散葉は俺の助手って思われても仕方無いと思うよ?
こうやって俺の仕事を肩代わりしてくれてるんだから」
「なんってヤツだ!
一回といわず三回位静雄さんに殴られたら良いんだ!」


結局いつものように怒る私だけど、そんな私なんて何のその。
いつも通りの会話の応酬なんだから今更イザ兄が慌てふためくなんて事はしないのは当然と言えば当然なんだけど。


「もうイザ兄の仕事は手伝わないからね!
私は高校進学と同時に家を出るから!もう父さん達に連絡済だし!
止めても無駄だからね!」
「止めた所で散葉が止まらないのは分かってるしねぇ」
「誰の所為だと思っているのさイザ兄の馬鹿ー!」


これが春休み一週間前の会話である。
勿論この後、九瑠璃と舞流から大反対を受ける事になるのだが、さてどうやって許可を貰おうか。
その事ばかりが私の頭を悩ませるのだった。

20121111