恋に恋して | ナノ

「黒子っち恋愛相談したいんスけど!!」
「寝言は寝て言って下さい」
「ヒドッ!!」

あの誠凛との練習試合から半月程経ったある日。
黄瀬は黒子と連絡を取り、本当に恋愛相談をしていた。
一方の黒子はというとげんなりといった感じで黄瀬を見ている。

・・・心なしか彼の空色の瞳が蔑んでいるように見えるのは気のせいだろうか。
否気のせいと思いたい。

「オレ本気なんスよ、ちょっと位相談に乗ってくれたって・・・!」
「ボクだって暇じゃないんですよ。
そもそも黄瀬君、ちょっと良い感じでI.Hでまた会おうとか言っておきながらすぐに会いたいなんて言われたら誰もがこうなります」
「そんなの黒子っちだけっスよ!」
「帰って良いですか」
「すみません帰らないで下さい」


それから十分後。
黒子は深い溜息を吐きつつ、こうなったら適当に話を聞いて切り上げる方が早いと思考を切り替える。
我ながらなかなかに辛辣だと思うが、此方としては早く帰りたいという欲の方が強いのだから仕方が無い。

今日は部活が休みとはいえ、彼の相手をするのは体力が結構いるのだから。


「・・・で?」
「え?」
「君の好きな人の事ですよ。
何処まで進んでいるんですか?」
「彼女の事を名前呼びしてる位っス。
後彼女に不審がられない程度に情報収集を・・・」
「は?」
「え?」
「・・・君は黄瀬君ですよねそっくりさんとかいうオチではないですよね?」
「ちょ黒子っちそれどういう意味」

黒子は無表情の下、信じられないという感情しか沸き上がらなかった。

てっきり黄瀬涼太という人間は恋愛に関しては強引にいくものだと思っていたが、どうやら違っていたらしい。
・・・まあもしこの仮説が正しかったら恋愛相談なんて言葉は出てこないだろう。

「・・・黒子っち?」
「いえ何もありません」
「彼女・・・あ、名前は折原散葉っていうんスけど、オレの事モデルとか全然知らなかったみたいで普通に接してくれたんスよ!
後笑顔が可愛くて!あ、これオリエンテーションの時の写真っス!!」
「・・・どうも」

黄瀬から渡された携帯の画面には背中の半ばまで伸ばされた黒髪に夕焼け色の瞳の少女と栗色の長髪をポニーテールにした少女の二人がいる。
・・・あれどっちだろう。
二人に共通して言える事はとりあえず美少女という事か。


「あ、黒髪の方が散葉っちっス」
「そうですか・・・ちなみに隣りの方は?」
「・・・・・・散葉っちの友人?みたいっスけど・・・・・・オレこの娘(こ)好きになれないんスよね」
「というと?」
「あの女オレの事モデル(仮)って言ったんスよ!?
後オレの事なんてどうでも良いって!!
どう思う黒子っち!!」
「そんなのいつもの事じゃないですか。
というか黄瀬君今の台詞をキセキに話してみて下さい、きっと同じ事を言われますよ」
「容赦無いっスね相変わらず!」

涙目で黒子に対して悲鳴をあげる黄瀬だが一方の黒子は涼しい顔を崩さない。

「黄瀬君は極端すぎますよ。
後強引に行き過ぎると何事も上手くいきませんし、少しずつ距離を詰めていった方が彼女・・・折原さんも君も良い方向にいくと思います」
「少しずつっスかあ・・・」
「別に良いじゃないですか、折原さんに嫌われるよりは断然良いでしょう?」
「うっ」
「(こうなったら最終手段ですね)灰崎君と一緒にされたいんですか?」
「少しずつ距離を詰めていく事に決めるっス!」
「はい、その意気です」

  黒色と黄色の秘密の作戦会議

という訳で今回は主人公不在の会話。黒子っち本編初登場です。

20140209