恋に恋して | ナノ

テストが終了してから二日経った。
テスト用紙返却はあるオリエンテーションの後に行われる為、海常校生徒にとっては比喩でも何でも無くまさに天国から地獄というモノだった。


(・・・午後の黄瀬君、机に突っ伏していたけど本当に大丈夫かな・・・)


散葉が黙々と考えるのは自分が臨時講師を務めた黄瀬の事だった。
昼休みが終わるギリギリの時間に教室に戻った時、散葉は彼を見たのだがその時の黄瀬の目は何処か恨めしいといった感情が宿っていた。

理由は何となく予想出来るがそんな顔をしないでほしい。
私は嫉妬に狂った女子に恨まれたくないんだよ!
それともあれか、中学時代にそういういざこざは無かったのか!?



「ねぇねぇ何番だった!?」
「えーっとねー・・・」


周りの声に散葉ははっと意識を浮上させる。


(・・・そうだ、今は順番待ちだったっけ・・・)


今日はテスト明けに開催されるオリエンテーションの日だ。
内容は肝試し。
時期は五月なので季節外れも良い所なのだが多分気にしてはいけないのだろう。


散葉はぼんやりとそんな事を思いながらオリエンテーションの内容が書かれたプリントに視線を落とす。


(・・・纏めると目的はクラス、そして学年全体の懇親会も兼ねてのモノ。
ルールは二人一組で指定されたコースを回り、その途中にある社に置いてあるカードを取ってまたスタート地点に戻ってこないといけない・・・こんな所かな)


そしてそのペアを決める方法は籤引き。
勿論男女で組む事もあれば、同性同士の場合も有り。
クラスではなく一年全クラスが集まっているので数が多く、その関係で籤引きの箱が幾つもある。
又人数も多いのでペアを見付けるのは難しいだろうという事で、ある程度の番号毎に予め指定されていた場所に移動し、ペアを見付けようとしている生徒達の光景を眺めていると散葉は一つの事に気付いた。


それは周りにいる殆どの女子は黄瀬に視線を向けているという事だ。


(・・・目は口程に物を言うという言葉があるけど、これ程如実に出るとは思わなかったな・・・)


散葉はその光景を横目に何処か遠い目をしていると、突然籤が入った箱が目の前に出てきた為、彼女の夕焼け色の双眸が瞬いた。


「折原、次はお前の番だぞー」
「あ、はい」


担任のやる気無さ気な声に返事をしながら散葉は徐に箱の中に手を突っ込む。
数秒迷ったが散葉は適当な紙を決めるとすぐに手を箱から出した。
次いで後ろにまだ籤を引いていない人が並んでいる為、身体を横にズラし、手の中にある籤に目を落とした。


(えーと中の番号は・・・)
「散葉さんっ!籤は何番でした!?」
「っわ、」


突如聞こえた声に散葉は思わず肩を大きく震わせる。
一方声をかけた側としては彼女の反応にきょとり、と目を瞠らせていた。


「・・・えと、ごめんなさい驚かせちゃった・・・?」
「だ、大丈夫だよ」


声の持ち主に視線を向けると其処にいたのは第一印象二重丸どころか花丸な美少女が。

入学してすぐに別のクラスなのにも関わらず自分に会いに来た彼女。
否、"折原散葉"ではなくて、折原臨也の妹に会いに来た少女。


―――そして、兄の信者。


「えーと番号、だよね。
私は十六番だけど・・・」
「そうですか残念です・・・私は十二番なので・・・」


しゅん、と落ち込んでいる姿は同性の自分から見ても可愛い。
しかし悲しいかな、兄の信者という時点で自分の中では残念な美少女、という印象が強い。
何気無く周りを見てみると顔を赤らめている男子数名、チラチラと彼女を見ている男子数名。

・・・美少女って凄いな。


散葉は内心感心しながらも目の前の少女に僻む事無く、慰めるのだった。

  変化のきっかけの糸口は

とりあえずオリキャラだけとなりましたが次は黄瀬君メインになるかと思います(汗
当サイトのオリエンテーションでは一年全クラスが一ヶ所に集められているという設定です。

20130107