巡ッテ廻ッテ乙女ト青 | ナノ
「あんたなんか生まれてこなければ良かったのに!!」


そう言われたのは、初めてではない。


前の世でも、今の世でも。
こう言うとまるで一度死んだかのような言い方であるが、間違いではない。


私は一度死んで、違う世界に生を受けた。
何故死んだのかは分からない。
それでも私が生きた世界は此処ではないことは覚えてる。


前の世界もそうであるのだが、この世界での実の両親に、存在を拒絶された。
理由は簡単。両親は両方とも黒髪黒目だった。
なので遺伝的にも有り得ないと、父親は私を否定し蒸発し、残された母親は精神を病んでしまい、私は所謂DVを受けた。
全身擦り傷切り傷、トドメに足は骨折と満身創痍。

一歩間違えればまた死んでしまう状況下であったが、近隣住民の通報により何とか一命を取り留めた。
・・・死なせてくれたら良かったのに、と何度も思う。
あの人が、皆がいない世界なんていらない。願い下げだ。


ある日私は警察に保護され、傷の手当を受けたがその時の私の顔は酷かったと思う。
栄養失調も相俟って治るものも治らないと医者にも言われたが、死ねたら本望だ。
そう思っていたのに、私はある男に引き取られた。

―――また、死ねなかった。

そう思い知らされた現実に私は悔しいのか嬉しいのかよく分からなかった。
だけど後者は有り得ないな、と何処かぼんやりと頭の片隅で考えた。


そして現在。
何故か私はとある神社の神主に引き取られ、世話になっている。
・・・本当に何故。


「灰音、包帯は痛くないですか?」
「・・・・・・・・・」

声に出すのも億劫な灰音は、視線を神主に向け、静かに首を縦に振る。
神主はそのことを咎めず、朗らかに笑う。
灰音は何処か後ろめたさのようなものを感じ、すぐに視線を背ける。


灰音の白く小さな腕にある大きな傷跡を覆うように、包帯を巻く神主に灰音は少しだけ青灰色の双眸を細めた。

  反転する世界

『乙女』第1話漸く書けた・・・!
まさかのオリキャラのみ。つ、次こそは・・・!!

補足。主人公は『死んだ原因』というか死ぬ前後の記憶がないだけでそれ以外は覚えています。

20120311