いつまでこの制裁が続くのだろうと思ったのだが、それはあまりにも呆気なく幕引きとなった。
彼等が自力で脱出して逃げ去るのかと思いきやそうではない。
銀髪の少女が彼等の悲鳴をBGMにシメて暫くしてからポツリ、と一言。
「・・・・・・・・・・・・・・・飽きた」
自由を縛っていた拘束をいとも簡単に解き、灰音は何事も無かった様に彼等から離れる。
そのままこの場を去るのかとレンが思った瞬間、灰音はトドメと言わんばかりに容赦無く首筋に手刀を入れ、相手を全員気絶させた。
その手腕はいっそ見事、としか言いようが無く、レンは一体何に反応すれば良いのか言葉を詰まらせる。
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・何よ」
青灰色の双眸を向けられ、言葉少なに放たれた言葉。
その行動と言動にレンは一瞬瞠目した。
実の父親には血縁関係を疑われ、兄二人や使用人には言葉どころか目さえも合わせてくれない。
学校の人間にはそんな家庭事情を知っているからか、親しい友人さえもいない。
唯一自分を見て会話をしてくれるのは一人の執事だけ。
「・・・・・・オレを知らないの?」
「・・・・・・見ず知らずの人間に対する第一声がそれってどうかと思うけど」
言外に馬鹿じゃないのかと訴えてくる目に、レンは悟る。
彼女は本当に何も知らないのだ。
神宮寺家についてもその家の確執の事についても。
初めて見たような気がする。
神宮司家の人間としてではなく、一人の人間として見てくれた人間を。
「・・・・・・ねぇ、」
レンが口を開けた瞬間。
ばたばたと灰音達からそう遠くない場所から大きな足音と声が届いた。
心なしかそれは徐々に此方に近付いてきている様な気がしたのは気の所為ではない筈だ。
何故なら大きな声に混じって警察という単語が聞こえてきたからだ。
この場を見られると非常に厄介だ。
レンは瞬時にそう判断すると同時に気絶した男達を他所に灰音の白い腕を引っ張りその場から離れる事にした。
「―――え?」
「逃げよう!」
不意打ちだった為灰音は瞬時に反応出来ず、レンに引き摺られる形で逃げ出す事になったのだった。
白と橙の邂逅
主人公に言わせたい言葉があるんだけど果たして書けるかどうか。
後彼も出したいなぁ。出せるとしたら3章の最後の方だろうけど・・・。
20121107