巡ッテ廻ッテ乙女ト青 | ナノ
「・・・・・・・・・・・・」


灰音は内心嘆息した。

手には日傘とバッグ、身に纏うのは濃紺のワンピース。
初夏というだけあって暑さはまだマシと言った所か。



現在灰音は地図を片手に神奈川県某所に居た。



  ♪



そもそも何故灰音が神奈川県にいるのか。
それは唐突に養父の輝石が突如お使いを頼んできたのが原因だった。


「灰音ちょっとお使いに行ってきてくれませんか?」
「・・・お使い?」
「はい、ちょっと神奈川まで」
「・・・・・・・・・・・・」


思い返した灰音は未だに解せない、といった表情を浮かべる。

何処がちょっとなのだろうか。
京都から神奈川という長距離をあろう事か、あの養父は「ちょっと」と言い切った。

前々から思っていた事だが、あの養父はやはり何処かズレている。
否、そもそも思考がズレていないと自分の様な子供らしくない子供を引き取ろうなんて思わないだろう。


「・・・そういう変な所は先生にそっくりね・・・」


言った後で灰音は気付いた。
だから自分は養父に勝てないのだろうか。
嘗ての恩師と共通点があるから。


灰音はそう考えると同時に頭を一度大きく横に振るう。
誰かを重ねるというのはお互いに失礼な話だ。


人間が嫌いな灰音だがそれでも例外はやはり存在する。
その数少ない例外が松陽と輝石。


「・・・とりあえずさっさとお使いを済まそう・・・」


しかし十歳其処等の子供を一人で旅をさせるとはあの養父は一体何を考えているのだろうか。
真斗には何も伝えていないがまぁ良いか、と灰音はぼんやりと考えたその時。



「何すんだこのガキ!」


柄の悪い声が灰音の耳に伝わると同時に不快感を露にするように、僅かに青灰色の双眸を細めた。


「・・・・・・・・・・・・」


足を止め、視界をズラせば其処には一人の少年と不良と思わしき男が三人。
灰音は人がいない事を横目で確認して溜息を吐く。


(こういう時に限って誰もいないなんてね・・・)


助ける義理なんて無かったし放って置いても良かった。
だけどこのまま見て見ぬ振りをするのは何とも後味が悪い。

灰音は自身の思考回路に溜息を吐く。


(確実に銀時の影響を受けてそう・・・・・・・・・)


脳裏に浮かぶのは自分と同じ銀髪の男。
但しその男はまるで綿飴の様な天然パーマで自分とは全く違い、お人好しの部類だ。
偽悪的な態度で行動を起こすから損ばかりしているような男。
そんな幼馴染だったからこそ灰音は放って置くなんて事は出来なかったのだけど。


ワンピースのポケットにあるモノを確認して灰音はトラブルに見舞われている少年に助太刀すべく行動を起こす事にしたのだった。

  変化の兆し

前回の更新から約1ヶ月だと・・・!?
企画の更新に力を入れていたからまぁ仕方無いといえば当然か(汗
はてさて神奈川、という事でもう誰に会うかは想像出来たと思います。
次回邂逅です!

20121027