巡ッテ廻ッテ乙女ト青 | ナノ
全てに始まりと終わりがあるように、全て無に還るのだ。
そう、まるで、あの赤くて紅い、炎のように。



拾われたイノチ、生き永らえたイノチ、いずれ消えるのなら貴方の為に使いたかった。

・・・きっと、あの人はそんな事を望まないと知っていたけど、それでも。







「灰音お前は女だ、戦争に参加するなど、」
「性別なんて関係無い!私は―!!」



幸福の終わり。復讐の始まり。
―――狂気が生まれた瞬間を、今も覚えてる。




「私はアイツ等を許さない・・・!」




殺意に塗(まみ)れた双眸。狂気に濡れた青灰色。

見上げた空は、何処までも暗くて。一筋の光さえも見えない位、分厚い雲が空を覆う。
まるで、其れは自身の心を表しているかのようだった。



「・・・・・・ッ先生・・・!」


刃も柄の部分も全てが漆黒に染まった一振りの日本刀―――具体的に言えば『野太刀』と呼ばれる―――を携え、絶望と憤怒と悲哀等の感情が混ざりに混ざった双眸は、決して薄れる事は無く。
彼女はただただ、復讐心のままに刀を振るう日々を送る事になった。



どれだけの敵を斬り捨て、葬ろうとも彼女の心が満たされる事は無かったけれど。





―――

―――――

―――――――


最初はただ其処に居るだけの、虚ろな存在だった。
ただただ其処に居るだけの、存在するだけの、ナニカ。


次はただの子供になった。
少し髪の色が特殊で強い日の光に弱い所もあったけれど、それ以外は普通の子供に。


そして最後に、私は復讐の鬼になった。
嘗ての同志以外信じられず、ただただ狂気と殺意に塗れた刀を振り翳し。
血で汚れた両の手、罪で押し潰されそうになる身体。
護りたかった生命、護れなかった生命。
奪って奪われて、最後にこの両の手に残ったのは。




不意に空に目を向ける。
其処には相も変わらず光の無い、重苦しい印象を受ける空だった。


「・・・どうして、」




冷めた夜空、モノクロの世界。
世界は確かに鮮やかな色で彩られていた筈なのに、



どうして、どうして、こうなった?
望んだのは小さな幸せ、願ったのは大切な人達との日常。



ねぇ、其れはこのちっぽけな存在には過ぎたモノだったでしょうか?


「・・・っ灰音、どうか―――」


ごめんなさい、先生。
先生の最期で最後の願いは、叶えられそうに無い。



だって、私は。
もう、その資格が無い。自分から手放してしまったのだから。



  ♪



灰音はまるで走馬灯のように巡った過去から逃げるように走っていた。


「・・・・・・っ出来ないよ・・・」


誰も居ない、好きなだけ一人で居られる場所。
そんな場所で、灰音は静かに透明な涙を零す。

「『幸せ』が、何か分からないのに・・・っ」


『どうか、幸せになって下さいね』


「笑い方なんて、忘れたのに・・・先生も銀時達も居ないのに・・・」

笑えないよ。沢山のイノチを奪って、生を終わらせてきたのに。
幸せになるなんて出来ない。


護りたかった?違う、失いたくなかった。
永遠不変にどうしようも無く憧れていたんだ。

世界はどうしようも無く残酷であると知りながらも願わずにはいられなかった。


「―――灰音?」


―――不意に聞こえた声に、心臓が跳ねた気がした。

  慟哭の空、紡ぐのは果て無き虚空

回想其の弐。
ちょっと文章表現変えてみました。
それにしてもこの連載はずっとシリアス・・・。
いい加減、明るくさせたいものです。

20120610