初めて"あの人"と出逢ったのは、音も無く降り積もる雪の日だった。
そう、丁度、この世界の養父に拾われたのと同じ日、同じ天気に。
――― 一緒に来ますか?
優しい、ひだまりの様な人だった。
誰かに気にも留めて貰えない、無価値な存在だった私に、初めて世界が色をつく瞬間を見せてくれた人。
『綺麗な銀色の髪ですね・・・丁度、貴女と似たような髪の色の子がいるので紹介しますね』
『・・・私と、同じ・・・?』
『ええ』
半信半疑だった私を連れて、着いた場所。
案内された所には、本当に私と同じ髪の色の少年がいた。
"彼"を見た瞬間、歓喜にも似た感情が芽吹いたのを覚えてる。
『・・・先生、帰ってたんですか』
『ええ、先程。・・・今日から一緒に過ごす子を連れてきました。
銀色の髪同士、仲良くして下さい』
『・・・は?って・・・おー・・・新入りか。』
嬉しかった。
銀色の髪なんて、私以外居ないと思っていたから。
『先生ッお帰りなさい!』
『・・・お帰り、なさい』
『ふふ、只今帰りました。
―――小太郎、晋助。それに銀時、この子を宜しくお願いしますね』
『・・・え?』
『・・・・・・』
今まで、誰一人"自分"を映すことの無かった双眸。視線。
どれも体験したことのなかった、眼差し。
『・・・先生に宜しくと言われてしまっては仕方が無いな』
『あー・・・とりあえず名前か?』
『む、では名乗らねばな。
相手の名を尋ねる前に、まず自分の名を名乗らねばなるまい。
俺の名は、』
『ヅラだ』
『ヅラじゃない桂だ!』
『新入り、コイツはヅラで充分だ。
しっかり頭ん中に叩き込んどけ』
『・・・・・・・・・』
『おい、銀時ふざけるな。ならば貴様はクルクルパーで充分だ』
『テメッ何人の気にしてる所を突っつくんだヅラの癖に!』
『其処の馬鹿二人、喧嘩なら他所でやれ、邪魔だ』
『『黙れチビ杉』』
『・・・上っ等だ』
其れが、出逢いだった。
何も無かった私と、『草薙灰音』と彼らの出逢いだった。
"あの人"の名前は松陽という名で、引き合わせてくれた三人の名前がそれぞれ銀時、小太郎、晋助ということもこの日に知った。
優しくて、温かくて、まるで閉ざされた箱庭の様な世界で、私は幼少時代を過ごした。
でも始まりがあれば終わりも必ずある。
幸せの終わりが来たのは余りにも突然で。
あの人が死んだ瞬間と、私の狂気が生まれたのは多分殆ど同時だったんだと、後にそう思う。
始まりの終わり、
回想其の壱。
つまり、『トアル世界』=銀魂。
20120430