企画 | ナノ

「なあ半纏、人間って面白い生き物だと思うかい?」
「・・・いきなり何だ」
「いやいやふと思ったんだよ。
何故人間という奴は人外の予想をこうも簡単に超えられるのかとね。
やはり永遠を生きる僕達と違い、限りある命で生きているからこそ考え方が違うのかな」
「・・・さあな」
「まあどっちにしたってその問いに対して答えは無いか。
じゃあ半纏そろそろ行こうか」
「・・・何処にだ?」

不敵に笑う安心院名前に半纏はようやく此処で彼女の顔を視界に映す。
澄んだ海色の瞳には何の感情も宿していなかったが名前は彼の心境を正確に把握しているようだった。


「この前は後輩君達だったし今回は先輩の彼等と会ってみようかと思ってね。
彼等もキャラが濃いと聞いていたし。
さーてとどんな反応をしてくれるか楽しみだな」
「・・・・・・」


そう呟いた名前の表情には昏い影が落とされていたのだがそれを知るのは半纏、ただ一人だけ。



  △▼△



「・・・・・・」


寿嶺二は数秒前に開けた扉を再び閉めたくなった衝動を抑えるのにかなりの力を要した。
何故かと言うと用意された楽屋にて警戒心が一際強い筈の黒崎蘭丸とカミュが一人の少女に懐柔されていたからである。


「・・・・・・いやいや、いやいやいやいや何この光景ッ!?
二人共一体全体どーしたのっ!?」
「あ?・・・何だ嶺二か、相変わらずうるせー奴だな」
「寿静かにしろ、俺の高貴なスイーツの時間を台無しにする気か」
「あ、分かった食べ物に絆されたんだね」
『黙れ』
「怖ッ!!」

嶺二は極自然に視線をズラすと其処には大量のお菓子類を含む食べ物が山程積まれているのをみて確信した。
・・・この二人を懐柔するには確かに物よりも食べ物の方が良いだろう。
常時空腹を訴える蘭丸と何かしらの甘味を食べているカミュの姿を見ていたら、今の事態を簡単に察する事が出来るのは当然かもしれない。


すると此処でようやく問題の人物でもある少女、安心院名前が口を開いた。

「やあ三人目は君か寿嶺二君。
初めまして僕は安心院名前、僕のことは親しみを込めて安心院さんと呼びなさい」
「・・・・・・えーっと・・・・・・安心院さん?
何の事かよく分からないんだけど"三人目"って何の事かな?ぼく達に何の用で?後、後ろにいる青い髪の人って、」
「質問が多いね。まあ順番に答えようか、一つ目の答え。一人目と二人目は黒崎君達の事さ、この楽屋に着いたのは君で三人目だからそう言ったんだ。
二つ目の答えは単純明快、僕の知的好奇心の為さ。まあ暇潰しとも言うかな。この前君達の後輩に会ったから今度は君達と絡んでみようかという要望があったからに過ぎないけど思ったんでね。後輩君達もなかなかに個性が強かったけど君達も負けてないね。
最後の質問に関しては気にしなくても良いさ、彼は不知火半纏。『ただ其処に居るだけの人外』だ」
「・・・・・・・・・」

嶺二はもう一度青い髪の彼―――不知火半纏を見る。
背中に大きく『≠』と書かれた服を堂々と着ている時点で嶺二の中では尊敬に値する。
自分は職業柄もあるのだろうがあれを着ろと言われたら罰ゲームだとしか思えない。


「えーっと・・・」
「ところで美風藍君が一番最後というのは意外だったな、彼は一番に来てそうなイメージがあったんだけど」
「えアイアイ?」
「そういやあいつまだ来てねェな」
「ふん、いくらあやつでもこのスイーツは渡さん」
「ミューちゃん問題は其処じゃないから!て言うかどんだけ好きなの!?ぼくちんにも分けて頂戴!」
「却下」
「スイーツは俺のものだと決まっている」
「素晴らしいまでのジャイアニズム!!」

依然凄まじいの一言に尽きる速度で食べ尽くす蘭丸とカミュに嶺二は戦慄する。
彼等から無理矢理食べ物を取ると碌な事が無いのは既に経験済みだ。
ちなみに此処にはいない彼、美風藍は自分にとばっちりを食らわないように傍観していた事は言うまでもない。


「つかよ、その人外って何の事だよ?オヤジも大概化物染みたところはあるが、そういう類のものなのか?」
「その前に顔を見せるのが礼儀だろう」
「ミューちゃんに礼儀って言葉を言われると何か釈然としないとはぼくだけかな」
「黙れ寿」
「いやいや早乙女君も確かに人間離れしている身体能力を持っているけどそうじゃない。
僕と半纏は文字通りの人外さ。
僕達の手にかかればいかに早乙女君と言えど無事では済まないよ。
そして半纏に"それ"を求めても無駄だよ、何故なら彼は文字通り『其処に居るだけ』だからね。反転院さんなら別だけど」
「・・・反転院さん?」
「まあ僕が此処にいる限りそれは無いと思ってくれて良いよ。あながち間違いじゃ無いしねー」
「?」


名前の言葉に疑問符を頭に浮かべるが新たに響いた声にそれは容易く霧散した。


「ごめん遅れたっ・・・・・・何この光景」
「アイアイ!珍しいね最後に到着するなんて!」
「レイジ・・・別に、ちょっと社長に呼ばれただけだよ。
・・・・・・で、彼女と其処の彼は何処の誰?」
「コイツは」

蘭丸が徐に口を開いたがそれより先に名前の口が開いた。


「やあ美風藍君、僕は安心院名前。
早速だけど君、僕の端末にならない?」
『は?』

軽やかに何て事無さ気に。
彼女の言葉の真意を知る者が聞けば耳を疑う発言を、彼女はこの時はっきり口にしたのだがそれを知る者は名前の影である半纏のみである。

  人外二人と先輩達

というわけで安心院さんと先輩組の絡み。
ゆき様に捧げますがこんな感じで良かったのでしょうか・・・最大の謎ですが。
安心院さんの端末ってみんな女子だけど其処は見逃して下さい(汗
ていうか藍ちゃんの絡みが少ない!!

20140329