企画 | ナノ

!渚視点



それはとある木曜日の、昼休みだった。
イトナ君が最近E組に本格的に加入し、名前の隣りの席になった事が全ての発端だったかもしれない。

「・・・何の用だよ、さっきから視線が鬱陶しいんだが」
「・・・前々から思っていたんだが、お前女じゃないのか」


ぴしり。

暗殺教室もとい、3-Eの教室の空気が一瞬で氷点下になった。


発端となったのはつい最近加入した"問題児"堀部糸成のこの発言だった。
女性疑惑がかかっている相手・・・もとい蒼月名前君の容姿はイトナ君の言う通り、それはそれは美少女と言っても差し支えのない位綺麗だ。

だが残念ながら彼は男だ。

僕も大概女装だったりとからかわれたりするけど、彼の方がより女性めいて見えるのは全員共通事項だろう。

しかし、彼の本職は暗殺者。
彼を本気で怒らせばタダでは済まないのが分かりきっているからこそ、誰もしつこくからかったりしなかったのだけど・・・。
イトナ君、お願いだから謝って!心の底から謝って!!


「イトナ、誰がなんと言おうと俺は男だ。女じゃない」
「此処まで女顔なのにか?男と思える要素が殆ど無いぞ」
「五月蝿い、それはこれから大人になった時に出るんだよ」
「望みの薄い未来だな」
「ぶっ飛ばされたいのか」

じゃき。

何処から出したのか分からない彼愛用の銀色の大型銃は実弾だ。
触手を持たないイトナ君に当たれば場合によっては死ぬ。
クラスの皆は事の成り行きを固唾を飲んで見守るが先に動いたのは名前君で、銃を無造作に下ろした。


「・・・撃たないのか」
「一般人に撃つかよ、標的でもないのに」
「そうか」

淡々とした二人の性格だからこれ以上会話が続かなそうだ。
其処まで考えていた僕だったけどふと思った。

「じゃあ名前君と兄妹だっていう子も大人になったらそうなるのかな」
「何言ってんだ渚君、俺の妹なんだからそこらの女子より女の子らしい容姿に決まっている」
「まだ見付かっていないのに何処から来るんだその自信」
「イトナ君しっ!!」

いつ聞いたのか忘れたけど、彼が幼少時代生き別れたという件の双子の妹とやらは名前君と殆ど瓜二つらしい。
実際に見た事がないし、写真さえも彼の手元には一枚も無いという事から本当の事は窺い知れないけれど。


「髪や瞳の色とか顔の造りも同じだったし、きっといや絶対あの頃よりもっと可愛くなっている筈だ」
(どうしよう妹さんの事を言っている筈なのに自画自賛しているようにしか聞こえない)
「蒼月気持ち悪い」
「黙れコロコロ上がり」
「そういう名前はシスコンだろ」
「シスコンの何が悪い、妹を持つ兄は大概シスコンだ」
「名前君何言ってるの!?」

「あはは渚君と名前君がコンビ組んだら面白そうだね。
ねえ二人共本当に次の休み、タイかモロッコ行かない?」
「何でカルマ君はそんなにとりたがるの!?」
「妹に再会した時どんな顔で会えって言うんだよ、絶 対 行 か な い

カルマ君の冗談に聞こえない冗談に僕は力の限り突っ込んだ。
勿論名前君も。
・・・身の毛もよだつような禍々しい殺気が名前君の背中から漏れていたけど気の所為だ。


「だけどそうか・・・蒼月とその妹が瓜二つなら女装したらその妹になるという事か。
じゃあ蒼月、ちょっと女装してみろ」
「何でそうなる?」
「良いだろ別に。暇潰しだ」
「上等だよ、表に出ろコロコロ上がり!」


わ、名前君が感情剥き出しにするなんて珍しいな。
名前君はどちらかと言えば裏社会にいた分、ビッチ先生と同等、否それ以上に感情的にならないのに。
・・・あ、でもいつだったか名前君の養い親っていう赤い人と話している時は普通の中学生って感じだったな。


「なーんか名前君って取っ付きにくそうなイメージがあったけど案外アイツと相性が良いのかもねー」
「あはは確かに」
「あの赤い人・・・確か哀川さんだっけ?
名前君の養い親っていう人の前だと凄いいきいきしてたけど、基本的に名前君ってその人の前と生き別れた妹の話をする時以外は淡々としてるし・・・タンタンマン?」
「アンパン○ンみたいに言わなくても」




「そういえばイトナって機械工学系が得意だったよな」
「ああ」
「じゃあとあるオカマと堕王子を潰したいから良い武器を作ってくれない?」
「報酬は?」
「最近駅前に出来た洋菓子専門店全種メニュー無料食べ放題チケット一枚贈呈」
「乗った」

((早ッッ))

甘い物に目が無いイトナ君の目には爛々とした輝きがある。
ましてやイトナ君は金銭的余裕もあまり無いのが現状だ、この報酬に釣られないわけがなかった。


(うーん・・・もし名前君の妹さんが見付かった時イトナ君ってどんな反応するんだろ)

そんな事をぼんやりと考えていた僕の思考を遮るように廊下から教室に大きな声が響く。
どうやら声の持ち主はビッチ先生のようで、内容を聞くにまた殺せんせーがちょっかいを出したらしい。

来年の三月まで後、Xヶ月。
かの妹さんと出会うまで、後。

  糸を紡ぎ、絡まったその先にあるものは

イトナとの絡みって難しいですね!
いつか主人公の妹も出したいなと思っています。

ずー様、嬉しい言葉を有難う御座います、これからも頑張りますので宜しくお願いします!

20150620