企画 | ナノ

!性転換ネタなので苦手な方は注意








「此処に一つのスキルがあるんだ半纏」
「・・・」

空色の人外は依然無言のまま。
それでも彼女は構う事無く口を動かす事は止めなかった。


「『男尊女敬レディースアンドジェントルメン』というスキルがある。
半纏はこのスキルの中身を知っているかい?」
「・・・・・・中身は知っているが具体的にどうするつもりだ」
「決まってるじゃないか、このスキルを使うんだよ」
「誰に」
「虹色の集団だね」
「・・・・・・どういう風の吹き回しだ。
あまりあちこちに手を出してるとその内バラバラ災厄を振りまく危険人物としか認識されなくなるぞ」
「わっはっは、仕方ないだろ?
僕は退屈が嫌いなんだよ、それこそ何処かの奇跡の魔女みたく『退屈』は最早僕を唯一殺せる毒なんだぜ?」
「・・・何にせよ俺は止めない。俺はお前の影であり影武者だ」
げらげらげらげら。
それじゃあ楽しい愉しい楽しいイベントの始まりだぜ」




男尊女敬レディースアンドジェントルメン』、性別変化のスキル。

そのスキルに巻き込まれたのは合計六人。
果たして彼等の運命は。



  △▼△



「その髪の色、もしかして黒ちん?」
「そういう君は紫原君ですか?」
「うんそうだよー」

早朝だというのに心底疲れきった表情で彼、もとい彼女を見るのは黒子。
紫原の奥にはお通夜かと思う位暗い空気を纏ったキセキの世代がいた。

「黒子っち!?その目と髪の色は黒子っちっスよね!?」
「その髪色は・・・もしかしなくても黄瀬君ですか」
「くううううろぉおおこおおおっちいいいい!!」

ドスン、と腰に響く抱きつき方をされ、黒子は若干ふらつくが何とか踏み止まる。
・・・この非常識な事態にも関わらず何故彼は通常運転でいられるのか。
ぎゅうぎゅうと抱き潰されそうになりながらもいやに女子力が高い容姿になった黄瀬を引っペがそうとする黒子にまたもや黒い影が落ちた。


「やあ来たね黒子」
「赤司君、・・・あのこれは一体」
「見ての通りさ。
朝起きたら突然女性の姿になってしまってね・・・まさかとは思ったが一度皆に聞いてみたが案の定だった」
「はあ・・・」

「・・・こんな非常識な真似が出来るのは安心院しかいないのだよ」
「ミドチンそんなに悩んでても仕方無いってー」
「黙れオレは青峰のようにこの事態を受け入れていないのだよ!」
「青峰君?」
「黒子、青峰の事を掘り下げても後悔するだけだぞ」
「青峰っちサイテーっス」

黒子は黄瀬を振りほどく手を止め、青峰と思わしき人物に視線をズラす。
それに合わせて青峰と黒子を除く全員の冷たい視線が突き刺さった。

・・・依然青峰は何故か気絶したまま動かなかった。
一体何があったというのか。


「峰ちん、女の子になったから銭湯に行こうとしたんだよー」
「いくら体が女性になったからといって心は男ですからね、確かに青峰君は最低ですね」
「でしょー?」

「青峰の事はもう良い、安心院は何処だ赤司!!」

般若の形相で赤司を睨みつける緑間の迫力は怖かったが赤司は涼しい顔で受け流す。
緑間も赤司も見目麗しい美少女なので大変目の保養と言いたいところであるが美少女の正体を知っている為それを正直に言うのは躊躇われた。
だって心は男だ。


「さあね、名前は自由奔放だからな。
・・・ああでも絶対にこの状況を見ている筈だ、そう遠くない未来で現れるだろう」
「ていうか安心院っちは一体何がしたいんすかね?」
「黄瀬君はいい加減に離れてくれませんか暑苦しいです」
「冷たいっスよ黒子っちー」

金髪の美少女に涙目で訴えられても毛程にも罪悪感を感じない。
何せ相手は黄瀬だ、そんなものは可燃ゴミにでも捨ててしまった。

「そういえば黄瀬君、折原さんにこの事言ったんですか」
「言えるわけ無いっスよ!!
変態の烙印を押されてしばらく近付かないでって言われたらオレ立ち直れる自信無いっスうううう」

黄瀬がわあっと両手で顔を覆った事により黒子はようやく黄瀬から解放された。
一息つきながら赤司の近くに寄る。
これでもう黄瀬に下手な事はされないだろうと見越しての行動である。

「こんな姿を高尾やアイツに見られたらと思うと爆発したい気分だ」
「・・・大分緑間君も消耗していますね」

緑間の言うアイツとは元不良として名高い幼馴染の事だろう。
敢えて彼の琴線に触れないでおこう。
彼は彼で関わると面倒臭い。


黒子は黒子で容赦無い判断を下した、その瞬間。
ふわり、と何かが視界を掠めたと同時に衣服が擦れた音が背後から響いた。

「流石、元が良いと容姿も変わるんだね。
これは良い暇潰しになったよ、ありがとうみんな」

とん、と軽い音を立てながら現れたのは空前絶後の存在として名高い安心院名前だった。
艶やかで豊かな髪を靡かせ、優雅に登場した。

「名前、これは一体どういう事か教えてくれないかな?」
「征十郎君ならもう分かっている筈だぜ?
僕の一京分の一のスキル、『男尊女敬レディースアンドジェントルメン』で性別変換してしまったという事位はさ」
「原因は名前だという事はすぐに予想出来たが肝心の理由は分からなくてな」
「成程。そうだね、理由はまあ女の子の気持ちを少し位分かって貰おうと思ってね。
ホントはキセキの君達だけにしようかと思ったけど黒子君だけ仲間外れはいけないと思い直して六人にしたわけさ」
「仲間外れが良かったです、こんな一纏めにされたくはなかった」
「わっはっはっは、まあお楽しみはこれからさ」
「・・・・・・気のせいっスかね、嫌な予感しかしないんスけど」
「そんな事は無い、ちょっと君達の相棒にこの反応を見て貰おうと画策しただけさ」

・・・・・・・・・。

彼らが彼女の台詞を咀嚼し、意味を理解するまで数秒の時間を要した。

・・・なんだって?


『っっやめろおおおおお!!』

「おやそうこうしている内に着いたようだぜ」
『!?』

「此処に書いてあるメモの住所ってこの先であってんのか?・・・です」
「合ってるんじゃないのかな」
「真ちゃーん迎えに来たぜー」
「おーい黄瀬ー道草食ってねーでさっさと練習に参加しろ!」
「大ちゃんもう逃がさないんだからね!」


赤司を除くそれぞれの相棒(という名の保護者)が此処に来ると悟ったキセキ達は顔を青褪めた。

・・・こんな姿を見せたら一生の恥だ。
となると自分たちが残された道は限られている。

「安心院さん後生ですから元に戻すか逃がして下さい!」
「青峰っち起きないと後で後悔するっスよ!」
「うっせーな、何だよ黄瀬ぇ・・・」
「やっと起きたの峰ちん」
「安心院お前本当に何が目的なのだよ!!」

ぎりりと眦を上げ、噛み付いてくるキセキ達を横目に余裕綽々の笑顔で名前はのたまった。

「だから言ったじゃねーか僕は退屈が嫌いなんだって」
「・・・言い方を変えよう、いつになったらこの茶番は終わるんだ?」

赤司は静かに核心を問う。
幼馴染として名前の性格を他のキセキ達よりも把握している分冷静さは残っていたからだ。

「いつまで?そんなの僕が満足するまでだよ」

無邪気な子供のように笑う。
それと同時にガラリ、と無情にも体育館の扉が開かれる。

「おーい真ちゃーん早く練習に行かねーと宮地さんにドヤさ・・・」
『・・・・・・』

相棒達が女性化した彼らを視界に入れると同時に半開きだった口元は閉口する。
長い長い沈黙の後、体育館に絶叫の嵐が包まれるのはまた別の話だ。

  退屈は魔女を殺せる唯一無二の毒のようです。

青峰が全然喋っていない事に気付いた。青峰ファンの方、申し訳ないです。
そしてリクエストして下さった青桜様こんな感じで宜しかったでしょうか?
いつも小説をお読み頂き有難う御座います!
これからもよろしくお願いします(*^^*)

20140929