突然だが一ノ瀬トキヤと平和島名前は恋人同士であるが勿論その関係に反対する者がいる。
別に其処は不思議ではない。
賛成する人間が居るなら反対する者がいたって何らおかしくは無い。
むしろ自然の摂理とさえ言える。
だが反対する人間の筆頭が問題だった。
何せその筆頭が平和島名前の双子の兄、平和島幽である。
眉目秀麗、頭脳明晰、運動神経抜群、趣味特技多数で弱点ナシの完全無欠の俳優が表の姿だが彼をよく知る人間は総じてこう評価する。
ただの重度のシスコンであると。
「あー・・・一応聞くけど幽平サン、これで一体何をするんだい?」
「俺の可愛い可愛い可愛い可愛い妹に近付く男を排除するものだけど」
「・・・・・・どう見てもこれ×××にしか見えないんだけど」
「気の所為だよ」
(シスコンは聖川で見慣れていると思ってたけど幽平サンはそれ以上みたいだ)
(無表情がこの上なく怖いなんて知りたくなかったよ俺は)
昏い光が灯った彼の黒曜石の双眸。
その目を見て回れ右をして帰りたくなったレンと翔。
臆病?
上等だ何とでも言え、それよりも命が第一だ、まだ死にたくない。
とりあえずトキヤの身に危険が迫っているという事しか言えない。
「次の休みに彼と出掛けるらしいから色々妨害しないとね」
「・・・ちなみに羽島さんが認める相手って誰、なんですか」
「俺以上の男かな」
「そんな男地球上に存在するんですか?」
「いないから言ってる。
ああ、でも兄さんなら別かな」
いやどっちにしろ無理だろ。
翔は喉元まで出かかった言葉を慌てて飲み込む。
兄もとい平和島静雄の事を尊敬しているのは知っているが兄妹の時点でアウトだ。
近親相姦で引っ掛かる。
今はなんとかマスコミにバレていないがバレるのは時間の問題かもしれない。
ふと翔はレンの方へと見るがいつもは余裕の笑みを浮かべているのにも関わらず口角が引き攣ったまま固まっている。
愛が重い。
そう思いながらもレンと翔はどうやって彼の計画を阻止または妨害をしようか頭を悩ませたのだった。
♂♀
「・・・・・・それでこの騒ぎですか」
「・・・・・・」
ぐったりとした面立ちでそう呟いたのは一ノ瀬トキヤ。
久々の休みで恋人の名前と出掛けたまでは良い。
問題は彼女の兄、幽の妨害が懸念材料にあっただけで。
「・・・悪いトキヤ力不足だった俺達を許してくれ・・・!」
彼女とのデートはいつだって波乱万丈である。
名前がオフ、幽が仕事というスケジュールがあっても良い筈なのに何故かことごとく休日が被るのだ。
これを怒らずに何とする。
「まあ、謝罪は後で聞きます。
とりあえず素知らぬ振りをして人の恋人にいつまでも抱きついている幽さん退いて下さい其処は私の場所です!!」
「断固拒否」
ぎゅう、と更に力を強めて名前を抱きしめる幽に拳が震える。
理由は勿論幽に対する怒り故である。
その拳を見た名前はビクリ、と内心動揺したのだがそれを知る人間はいなかった。
「何が拒否ですかそれこそ拒否ですよ、熨斗つけて返します」
「俺の妹だよ俺が認めた男とじゃなきゃ許さない」
「貴方に許可を求めたらそれこそ気が遠くなる位遥か先の未来の事のようにしかならないでしょう」
「よく分かったねそうだよ俺の目が黒いうちは名前を平和島姓から変える事は許さないから」
なんて良い目をしてやがる。
演技でも此処まで良い表情をした事はないんじゃないのかって思う位良い目だった。
そうのほほんと思ってたら隣りにいたトキヤからぶちっと不吉な音が聞こえた気がしたのは全力で気のせいだと思いたかったのは言うまでもない。
仁義無き兄と彼氏の戦い
今読み返すと全然主人公が出ていない、と思いました。
すみません久々の『花片』がこんなので本当に申し訳ないです。
わんこ様リクエスト有難う御座いました!
これからもよろしくお願いします!
20140929