企画 | ナノ

!未来



安心院名前が死亡してから数年。
彼女を殺した張本人、『不可逆のデストロイヤー』獅子目言彦を打ち破った事で一切のスキルが通用しないという事実も覆り、人外の彼女もいずれは復活するのではと言われたから数年経った。


「皆ちょっと会ってなかっただけなのに大分大人っぽくなったっスね!」
「逆に黄瀬、お前は幼くなったんじゃないか?」
「酷いっスよ緑間っち!」
「懐かしいですねこのやりとりも」
「テツくんは誰よりもか、格好良くなってるよ!?」
「さっちんはブレないよねー」
「黒子はああ言ったが俺にとっては懐かしさが全く感じられない騒がしさだな」

一種の同窓会を開催したまでは良いがある一言でその場の空気が一瞬にして様変わりをした。


「つか高校生なんてあっという間だったな・・・後は、安心院がいたら」
「大ちゃん!」


安心院。
安心院、名前。
彼女の名前は赤司の前では特に禁句とされていた。
誰よりも愛していたからこそ、話題に触れなかったというのに―――。

それなのにこのアホ峰は・・・・・・!!


複雑な感情が渦巻く中、キセキの世代は誰も我らが元キャプテンの顔を見る事は誰も出来なかった。



  △▼△



「―――名前どうかしたのか」
「・・・いや?
どうやってあの場の空気をぶっ壊してやろうかなーと思ってただけだよ半纏」


艶やかな赤銅色がかった髪。
黄色のヘッドバンド。
女性というより少女に近い、非常に整った容姿。

半纏は表情筋を動かさないまま彼女を見る。
一度死んでもやはり名前の容姿は変わらない。

変わったとすれば、一点だけ。



「それにしても最後に会った時と比べると皆大分大人びたようだね。
やっぱり此処が人外と人間との差で、こういう感傷に浸るのは不老のスキルホルダーだからこそかな」
「・・・・・・」

安心院名前は不知火半纏よりも死ぬ確率は低かった。
半纏はだからこそ自分のバックアップを作った。
曰く、予備の予備。
だけど、現実はそんな予想を容易くひっくり返す事で完膚無きまでに壊した。
誰が予想しただろう、顔の皮を剥がしても死ななかった不老不死のスキルホルダーがまさか、輪ゴムで射殺されるなんて―――。


「・・・気まぐれで声をかけて、その後も何となくでツルんで。
結局ズルズルと付き合っていたけど、まさかこんな風に思い出されるとは思わなかったな」
「・・・・・・名前は後悔しているのか」
「まさか。僕の辞書に後悔の文字は無い。
例えふらっとある日突然いなくなっても『あー何か気付いたらいなくなってたんだよなー、まああの人の事だからそのうちひょっこり現れるだろ』とか思われているだろうと予想してたのだが」
「流石にそれは薄情すぎやしないか」
「わっはっはっは、確かにそうだね。
まあその可能性が一番低かったのは征十郎君だね」
「・・・・・・・・・・・・」

其処で無言になるのか。
名前は思わず笑った。

人間の寿命以上に長い付き合いをしている名前と半纏。
だから彼の心理もわざわざ聞かなくてもわかってしまった。


だから一体何を考えているのか。
半纏が今どんな表情をしているのか。


今の半纏の表情は、基本無表情の上に渋い顔を浮かべている事だろう。




「・・・なんか窓の外から声がするんですけど」
「え?」
「おいテツ何言っt・・・・・・」
「青峰っち?」
「オレは何も聞こえてないが・・・・・・・っ!?」
「ミドチンまでどうし・・・・・・」

黒子を始めとした赤司を除くメンバーが全員ある一点を凝視する。
赤司も流石に気になり釣られてその一点を見ると、其処にいたのは空色の髪と青空を切り裂いたかのような容姿を持った青年と赤銅色がかった、やたら短い髪を持った少女が優雅に佇んでいた。


「―――名前?」

震える声。
動揺を悟られたくなかったのに、彼女にはそれを容易く見破ったらしい。
記憶にあるその余裕綽々といった表情と重なる。
不敵な笑顔。


唯一記憶と重ならない、違う点は肩よりも短くなった髪だった。


「やっほー征十郎君、息災で何より。
テレビでちらっと見たけど棋士なんだって(ドンッ)ね・・・・・・」


名前の視界に赤い何かと何故か驚愕の表情で固まる虹色集団が映った。
更に付け加えるなら同族の空色がいつ舌打ちしてもおかしく無い位顔を歪めている。

赤色の何か、もとい赤司の腕の中にすっぽりと入る位体格が変わったのを見て、先程感じた一種の寂しさがより増した気がするが名前はそれは気のせいだろうと思い直す。
そんな事はどうでも良いというのが自身の謳い文句だった筈だ。


「名前、」
「・・・・・・うん」
「名前、生き返ったのならどうしてもっと早く、会いに、」


会いに来てくれなかった。

揺れる瞳、震える声、頼りない肩。
他人から見ればあの完全無欠な幼馴染様と同一人物とは思えないだろうが、名前の中ではそれは脆くてガラスのような幼馴染だった。
少し突けば簡単に壊れるそうな、そんな危うさがあった。

そういえば。

・・・確か最後に会ったのは橙と赤色の双眸だったな。
そんなとりとめの無い事が頭によぎる。
ああ、本当に僕らしくねーなー。
めだかちゃんの目論見は少し成功したと言っても良いのかもしれない。
癪だから絶対に言わねーけど。


「・・・僕にも色々あったんだよ」
「っああ・・・・・・」


感動の再会。
そう察した上で黒子達は空気になろうとしていたというのにその頑張りを崩壊させる人物がいた。



「ちなみに生き返らせたのは俺で、その後もずっと俺の傍にいたけどな」


「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・不知火、半纏・・・・・・・・・」


ゆらり、と幽鬼の如く動いた赤司の姿に内心で絶叫する黄瀬達。
それに対し、鼻で笑いつつドヤ顔で返す半纏。

前代未聞の抗争が勃発し収束するのを願いつつ、桃井を始めとしたキセキの世代が彼女の復活を喜んだのだった。

+おまけ+

「あーちゃん・・・!!」
「やっほー桃井ちゃん、大分大人びた容姿になったね」
「安心院っち、その髪どうしたんスか!?」
「女は髪の命だというのに・・・!!」
「緑間君、相当動揺してますね」
「オイ緑間、それ逆だろ」
「安心院ちん久しぶりー」

「・・・わっはっは、これからは短髪院さんと呼びなさい」


・・・なんてね。
何気ない日常が一番だと言ったのは何処の誰だったかな。

  主人公の復活は物語のセオリーです。

という事でゆき様お久しぶりです!
リクエスト有難う御座います!(*^^*)
思ったよりも半纏が出張ってしまいましたがこんな感じで良かったでしょうか?
これからもよろしくお願いします!

20140929