企画 | ナノ

「名前さん好きなんです!付き合って下さい!」


金髪で海常高生徒を示す制服を着た男子が池袋の一角にて黒いコートを着た女性に告白していた。
金髪の男子はモデルの黄瀬涼太。
黒髪の女性は折原名前。
双方、分野は違えど有名な人物である。
そんな二人は今青春真っ只中にいた。




折原臨也。
表の職業もとい肩書きはファイナンシャルプランナー。しかし知る人ぞ知る本当の職業は腕利きの情報屋。

自称素敵で無敵な情報屋には一人の幼馴染兼従兄妹がいる。
名前は折原名前。
彼女も情報屋ではあるものの臨也には今一歩及ばない程の腕だという。

そんな二人は恋人同士だとか、そうでないとか。
実しやかに一つの噂が流れる中、黄瀬はそんな折原臨也が大事にしていると言われる折原名前に告白をしたのだった。



  ♂♀



「良い子だよ」と屈託の無い笑顔でそう言った名前が離れない。
黄瀬涼太。
沢山の女性のファンに追い掛けられてんてこ舞いだった所を助けたらしい。
従兄妹で幼馴染な分、名前の感情の揺れはすぐに分かる。
だけど一応名前を観察していたのだが清々しい程にいつもと変わらなかった。
取り越し苦労に終わりそうだと思いつつも、彼の方はそうじゃなかった。
何度も名前に会って、その度に恋情という感情が増していくその瞳に気付かない筈が無い。
あの子にその瞳を向けて良いのは君じゃない。

黄瀬の顔写真をじっと睨み続ける。
赤い瞳には僅かに怒気が孕んでいたのを波江だけが気付いていた。




黄瀬涼太が池袋にてモデルの仕事の為訪れるらしい。
その情報を何処から仕入れてきたのかは勿論企業秘密だ。

「・・・っと、来たね」

自分の天敵と同じ金髪に臨也は一瞬顔を顰めるもすぐに元に戻る。
頭に叩き込んだ顔写真と同じ人物に徐に声をかけた。

「―――やあ、君が黄瀬涼太君だよね。ちょっと良いかな」
「・・・は?」

これ以上無い位不審そうな顔をした黄瀬。
案の定というか予想通りの反応に臨也は笑いそうになった。

分かりやすい。だからこそどういう言葉を発せば思い通りに動いてくれるかすぐに分かる。
黒幕志向の自分としては其方の方が有難いがこうも簡単に動くとなるとそれはそれで物足りないと思うのも事実。

何と言う矛盾。
人間とはかくして矛盾極まりないものだと誰が言ったのか。
そして俺はそんな人間をこよなく愛している!

「・・・もしかしてもしかしなくても、アンタ折原臨也サンっスか?」
「そうだよ、俺が折原臨也。
君が今仲良くしている折原名前の従兄妹で幼馴染の折原臨也」
「っ名前さんの、」
「俺の用事はただ一つ。
そうすれば君も早く仕事場に着く事が出来るしね」
「・・・」

傲岸不遜、余裕綽々、天下無敵の笑顔だが分かる人間には分かる。
彼の今の笑顔は純粋という言葉から程遠いモノだと。

「・・・用事?
オレはアンタに用事なんて無いんスけど」
「君になくても俺にはあるんだなあこれが。
単刀直入に言うよ、折原名前に金輪際近付かないでくれるかな」
「っそれ名前さんが言ったんじゃないっスよね」
「君みたいな有名人が名前の周りにいる事で、これからの未来で面倒事が増える可能性はゼロじゃない。
俺は純粋に名前の心配をしているんだよ、そして君も名前に危害が加わる事を望んでいない。
良かったじゃないか君が離れる事で名前の安全は保証される。
後は俺が何とかする・・・・・。」
「・・・・・・何とか、って何スか・・・・・・!
アンタも、情報屋で危ない事に首突っ込んでるんじゃないんスか!?」
「確かにそうかもしれないけど、俺もこの世界に入って短くない。
自分の身位自分で守れるし名前だって子供じゃない。
実際、見た目十代後半の容姿だけど実年齢は俺と同じだしねえ」

ぎり、と奥歯を噛み締める黄瀬から余裕を感じられない。
そもそも黒い噂が絶えない折原臨也を前にして"自分"を保っていられる人間(表社会で生きる人間限定)が果たして何人居るかどうか。

「ああ話が逸れたね。
俺の目的は一つ、君が折原名前から手を引いてくれる事だ。
あの子は元々俺の観察対象もとい可愛い可愛い―――彼女なんだ。
ぽっと出の男に掻っ攫われる場面を想像するだけで虫唾が走る」
「名前さんが、それを望むならそうするっスよ。
でもそうじゃないなら、一縷の可能性があるならオレが諦める理由にはならない。
だから―――」

ひたりとナイフで頚動脈付近に突き付けられる感覚が黄瀬を襲う。
平凡な学校生活を送っていたらまずこんな感覚を知らなかっただろう。
赤司以上の威圧感、紫原以上の圧迫感、そして殺気。

「アンタに命令されたからという、たったそれだけの理由でその言葉に頷くわけにはいかないんスよ。
其処、退いて貰うっス」
「・・・・・・あーあ結局こうなっちゃうのか。
俺は基本頭脳労働派なんだけど・・・」
「平和島サンとの鬼ごっこから逃げてるアンタが何頓珍漢な事言ってるんスか」

呆れ果てたような顔でそう呟いた黄瀬に臨也は薄く笑う。
そして徐に口を開く。

僅かな沈黙。
その沈黙をナイフで切り裂くかの如く、臨也は容赦が無かった。

「その名前を俺の前で出さないでよ。
―――黄瀬涼太君、俺の持つ全ての権力権限能力全てを使って君を潰すよ」
「上等っスよ名前さんはアンタなんかに渡さねえ」


  よろしい、ならば戦争だ

お待たせしましたいし様!
主人公と臨也は兄妹なのでこの話だけ従兄妹設定に置き換えています。
そして書いていませんが主人公は黄瀬を振っていますので黄瀬の横恋慕。
主人公は多分臨也でいっぱいいっぱいで他の事に気が向けられないんじゃないかなーと書き終えて思いました(苦笑

素敵なリクエスト有難う御座いました!

20140627