企画 | ナノ

可笑しい。
此処で言うのもあれだが、僕は決して"主人公"じゃないと言い切る事が出来る。
だって僕が主人公なら"アイツ"に彼処まで負け続ける事は無かった。

異性豊かな人ミサイルフェロモン』もてもてのスキル『愛対人バーサスラブリー』恋愛のスキル『手放し褒めナイスガイバビリオン』好感度のスキル『善行権エンゼルスタイル』主人公補正のスキル。

上記の主人公系スキルを含め、どのスキルも使った記憶は無い。
だから、このシチュエーションには少しばかり、この僕でさえも戸惑いを覚える。


「準備は良いかい天使達?」


・・・未だかつて此処まで僕に鳥肌を立たせた人間っていたかな。
僕が覚えていないだけでいたかもしれない。
人吉君に頼まれて音楽技術向上の練習も兼ねて本職の所に来たわけだけど、・・・うん人選ミス?


「ちょっと何意識飛ばしてるの?
て言うか僕達を目の前にして凄い余裕だよね」
「・・・わっはっはっは、いやいや別にそんな事は無いさ。
ああだけど怒ったなら謝るよ、この三兆年間謝ったふりしかした事無いけど」
「何ソレ三兆年とか頭が弱いの?」
「僕にそんな事言えた人間は久々だな。
ていうか宇宙一可愛いとか言ってる君だけには言われたくねーなー」
「ううううう五月蝿いな!!」

赤面して悪態を付くナギを鮮やかに躱した名前を綺羅は静かに見つめる。
元々寡黙で有名な彼の事なので誰もがそれを指摘しない。

つまり口よりも目で語る、という事である。
彼の目はとてつもなく何かを語っていたが名前は何処かの誠凛高が誇る器用貧乏とは違う。
何を伝えているのか何を伝えようとしているのか。
それを限りなく正確に把握しているが彼女だがあくまでも彼本人の口から言葉を出さないといけないと考えている。

さて。
前置きが長くなったが彼等、HE★VENSと安心院名前の出会いが今回の物語である。



  △▼△



「さて半纏、準備は良いかい?」
「待て名前何の準備だ」
「わっはっは、最初が後輩君でその次が先輩組だ。
そして今回が後輩君のライバル君に会おうと思ってね」
「名前はいつも唐突過ぎる」
「物語とはいつだって唐突にイベントが起こるものだろう?
まあ今回人吉君の件もあるからね、唐突という程じゃないと思うんだけど。
・・・はてさて改めて必要な物なんて僕達には無いし、では半纏。
問答無用だ着いてきたまえ」
「・・・はあ」

半纏はこれみよがしに溜息を大きく吐くが名前は何処吹く風で全く気にしていないようだった。
『其処にいるだけの人外』、悪平等ノットイコールの不知火半纏。
彼女に言われずとも自分の意志で名前に着いていくと決めている。
半纏は仏頂面ではあったがしっかりと彼女の言葉に頷いた。




「前回は失敗に終わったが・・・HE★VENSよ!
今回は必ずST☆RISHに一泡吹かせる為に一つの計画を授け―――」
「おいおい一回痛い目を見たんだから懲りろよ鳳君。
つーか大事なのは一度の失敗から何を学び、其処からどうするか、だろう?」

とん、と軽い着地音と共に現れたのは二人の人外。
(光の加減なのか分からないが)赤銅色がかった長い髪とセーラー服が特徴の少女と空色の短髪と長いアホ毛が特徴の青年。

『・・・・・・・・・・・・・・・・・・』

サングラスの奥の瞳を瞠目させているレイジング鳳。
身体だけではなく思考までも凍り付いた鳳瑛一と帝ナギ。
何を考えているのか分からないまま、表情筋を微動だにせず二人の人外を見る皇綺羅。

「・・・誰?」
「っっ安心院名前!不知火半纏!!」
「やっほー鳳君久しぶり。
ちょっと見ない間に早乙女君と同様大分容姿が変わったねえ。
ふむやっぱりこの何とも言えない感情・・・。
これこそ不老不死のスキルを持つ者だけが味わう感情というヤツかな・・・どう思う半纏」
「・・・・・・」
「もう反転しちゃったのかよ。ま、いっかいつもの事だし。
・・・おや新顔が三人いると思ったら後輩君のライバル君達か」

わけの分からない言葉が次々と飛び交うレイジングエンターテインメント社、社長室。
突然現れた二人の人外によって緊迫した空気が崩壊した瞬間だった。


「・・・ちょっとこの僕を置いて会話を進めないでくれる!?
アンタ達が一体何者か知らないけど、」
「おいおい僕達が何者かなんて、さっき君達の社長が言ったじゃないか。
・・・でもまあ初めて会う人もいるし。
そうだね自己紹介はちゃんとしようか。何事も最初が肝心だからね。
否。最初が人外だから、と言うべきかな?」
「・・・人外?」
「どういう事か説明して貰おうか」
「ああっイイ・・・!その挑発的な目!」

「・・・・・・。
僕は安心院名前。ただの平等なだけの人外だよ。
因みに後ろに居るのは不知火半纏―――『ただ其処にいるだけの人外』だ。
気にしなくて構わない」

僅かに瑛一の発言に引きつつも名前はそう告げる。
ただし奇しくもそれはかつて彼女曰くの後輩―――音也達に告げた台詞とほぼ同じの台詞だった。

「二人合わせて『悪平等ノットイコール』―――まあこれも適当に名乗っているだけだけどね」

薄く、不気味に嗤う少女。
背を向けた状態で彼女の背後にいる青年は一言も声を発さない。

「悪平等とか人外とか一体何なワケ?
この僕に分かるように説明してくれる?」
「えー?僕が君の疑問と思う事に全て完璧に答える事は可能だけどさ、それって君の為にならないと思うんだよね。
だから君がまず調べてから僕に君なりの答えを言ってくれよ、そしたら答え合わせをしてあげるし」
「何ソレ!?」

ぎゃんぎゃんと叫ぶナギの姿はまるでチワワのような仔犬を連想させる。
それをこっそりと綺羅が思ったのは勿論内緒だ。
そうしている内にぐしゃりと彼の桃色がかかった髪が乱れる。
理由は名前が無造作にナギの頭を撫でたから。

「わっはっは元気が良いねー流石十三歳」
「―――っ気安く触らないでよ!」
「突然現れたかと思えば、謎の言葉の羅列を言い、ナギを丸め込む・・・くく実に面白い!
安心院名前と言ったか?お前は俺達を楽しませてくれそうだな」
「わっはっは楽しませるどころか場合によっちゃ天国でも地獄でも見せてあげるさ。
だけど僕にあまり過激な発言をするともれなく後ろの人外の逆鱗に触れる事もあるから気を付けて」
「・・・人外、か」
「?綺羅、もしかしてこの女に興味を持っちゃった?」
「・・・」

ナギの質問にも沈黙を返す綺羅。
いつも通りと言えばいつも通りなのだがこの時ばかりはナギの勘に触ったらしい。
元々沸点が低くなっていた状態のナギである。
すぐに火山が噴火したらしい。

ちなみにこの時の会話は勿論半纏にも届いている。
表情や雰囲気では伝わってこないが内心ではマグマのように煮え滾っていた半纏の様子を誰が知っていようか。
とりあえず事態の収拾が付いたのはこれより一時間後の事である。

  安心院さんのアイドル巡りツアー

大変お待たせしました!(汗
小雪様リク内容の逆ハーに沿えてないな、と改めて振り返って気付いた。
土下座しますすみませんorz
HE★VENSに関してもう少し研究してきます(汗←逃亡

20140625