企画 | ナノ

今日の調理実習の内容。
レアチーズケーキとロールケーキの二種類。
おかげで家庭科室は甘い匂いで立ちこめている。
・・・制服にもついていなければ良いが。


名前が同じ班のメンバーに要領良く指示を出した結果、他の班よりも早く且つ綺麗に仕上がったお菓子に好評価を得た。
その事に他の班員は名前に感謝しつつ、出来上がったばかりのお菓子を綺麗にラッピングしたり、昼食後に食べようと準備をしているのを見て名前は小さく息をつく。

(何とか無事に終わったなあ。
静雄さんに会えたらこれを渡そうかな、幽さんも出来たら食べて欲しいけど・・・それはちょっと無理か)

名前はダメもとで一度携帯を操作して一通のメールを人気俳優に送る。
すぐに返事が来るわけがないと思っていたら、その予想を覆すが如く五分後には返事が来ていた。
内容は「今日の夕方なら空いているよ」・・・あれ、だったらこのお菓子は渡せそうだ。
というより返事が早過ぎてビックリだ。
いつも明日二日後なんてザラなのに。


そんな事を考えつつ、恥ずかしくない程度にラッピングをして家庭科室を出て。
昼食を食べて授業を受けて、待ちに待った放課後。
池袋にいざ行かんと思い立った矢先、悪童が現れた。


「おい」
「ひっ」
「なんだその悲鳴は、相変わらずムカつくな」
「だったら何で私の前に現れるんですか花宮先輩」

平均身長の名前と比べると花宮との身長差は首が痛くなるからあまり好きではない。
・・・というのは建前だ。
何故なら彼女と仲良くしている平和島兄弟も平均と比べて高いのでそれは理由にはならない。
偏に花宮の小馬鹿にするような態度が原因で余計に素敵な人間関係を築けないのが理由である。


「・・・チッ、お前オレに渡すものは無いのかよ?」
「え私、花宮先輩から何か借りていましたっけ?」

そんな自分の胃が悪化するような真似したかな、と首を傾げる名前に花宮の米神に血管がいくつか浮かび上がる。
しかし名前はそれに気付かない。



「・・・あの花宮に彼処まで言えるのって折原だけだよな」
「花宮に苦手意識を持っているくせにあんな風に言えるのって結構珍しいな」
「古橋、それはあれだ、折原は根が正直なんだ」
「そうなのか」
「オレ達から見ると完全に好きな娘苛めてる図にしか見えないし」

ぷくーと風船ガムを膨らませている原は一言で核心を付いた。
しかしその言葉は意外でも何でも無い。
花宮真という男の性格(本性とも言う)を知る者からすれば、それは簡単に予想がつくものだ。
・・・というより素直な花宮なんて想像出来ない。むしろ見た瞬間に吐血しそうだ。




「今日調理実習があったそうだな」
「何で知っているんですか」
「それ位知ってるってのバァカ」
「あ、今イラッときた」
「(無視)で?」
「は?」

原達の視線に気付いていない名前、敢えて黙殺する花宮。
この後の練習は普段よりも過酷なものにしてやろうと内心で決めた花宮はそれを一切表に出す事無く目の前の名前に催促にも似た言葉を口にする。

「オレに渡す菓子は?」
「・・・・・・え、欲しいんですか?」
「何度も言わすんじゃねえよ」

名前の胡乱気な視線に花宮の眉間の皺がより一層増した。
折原名前は普段は勘が鋭いが恋愛関係になると変に鈍いのが難点だ。
それこそお約束と言っても良いフラグを簡単にへし折る程。
・・・あの兄の仕業なのだろうか。
花宮は舌打ちしたくなった。

と此処で名前の口から(原達にとっては)一つの爆弾が投下された。

「え花宮先輩って甘いのダメなんじゃ」
「・・・・・・あ゛?」
「そう原先輩達から聞きましたけど」
「・・・・・・・・・・・・おいアイツ等は呼吸するように嘘をつく。
今後一切無視しろ(アイツ等シメる)」


「ヤベ」
「おい何死亡フラグ乱立させてんだ、オレ知らねーぞ完全にとばっちりじゃねえか」
「練習に行きたくないな」
「逝くぞ間違いなく」


背後に控える出歯亀の台詞は無視だ。というより自業自得以外の何物でも無い。
花宮は視線さえ合わせなかった。
ただそれだけの事なのに、より一層恐怖を感じたのは一体何人か。


「う、ん?よく分からないけど分かった」
「何が分かったんだ適当な事を言うなバァカ」
「あ、でもこのお菓子はダメ渡せない」
「・・・・・・あ゛?」



「・・・なああれヤバくない?(オレ達が)」
「放課後荒れるな」
(頼む折原、これ以上花宮を刺激すんなあああああ!)

山崎の心の中での悲鳴も何のその。
名前はいとも容易く、その願いを打ち砕いた。



―――死のカウントダウン、開始。





「これは静雄さんと幽さんの分だから花宮先輩の分は無、痛い痛い痛い痛い!!」
「この馬鹿女がああああああ」
「っっ痛いって言ってんだろ、その両耳は飾りか何かか今吉さんに花宮先輩の暴露本出してやるから覚悟し、」
「何で其処で妖怪サトリの名前が出てくんだ!!」


PiPiPi


「・・・・・・」
「・・・花宮先輩メールですよ」
「・・・・・・・・・・・・」←何かを悟った

自らの携帯がメールを受信したという音に花宮は戦慄した。
まだ宛先を確認していないのにも関わらず、花宮は正確に事態を把握した。
・・・出来ればしたくもなかった。
こういう時でも遺憾無く発揮される頭脳に舌打ちしたくなったが依然冷や汗は止まらない。


メールを見たくない。
即効消したとしても暫く時間を置いて消したとしても、目の前にいる情報通は何らかの形で知るに違いない。

花宮はこれ以上無い程思考を稼働させたのは言うまでもなく。

  いつだって思い通りに動いてくれない

お待たせしました!花宮夢でしたが・・・こんなんで良いのだろうか(真顔
両想いと念頭に書いていたつもりがどんどん脱線してしまい本当に申し訳無いです(汗
これは果たして両想いと言えるのか。

20140427