同室相手が激しい誤解をしていたのと同時刻。
一十木音也はとある少女と一緒に池袋に来ていた。
「ねえねえ七海!
このギターとその隣りにあるギターを見に行っても良い!?」
「はい大丈夫ですが、・・・その、」
「大丈夫!羽島さんのロケの事は忘れてないって!」
太陽のような笑顔を向けられた春歌は少しの不安が過ぎるも音也の後を追う。
―――今日音也と共に池袋に来たのは単純に先日出会った羽島幽の勇姿をもう一度見たいと、音也にそう言ったのがきっかけだった。
行動力がある音也はそれを聞いて「俺もプロの仕事を学びたい」と頷き、すぐに幽が出演する番組を調べ始めてくれた為、今日の外出が決定したのが一連の流れである。
「・・・そうだ!羽島さんが今何処にいるのか携帯で見れば分かる筈・・・!」
そうと決まればすぐ行動。
春歌はいそいそと携帯を取り出し、ロケ現場を検索する。
それから数分。
生放送されているテレビの背景を元に何処にいるのか探す。
なんせ現在進行形で移動しているのだから場所を特定するのも一苦労だ。
彼女が羽島幽の位置を割り出し、現場に駆けつけた瞬間が事件の遭遇となる事などこの時の春歌は全く知る由もなく。
♂♀
「っ・・・」
血の気が引く音を聞きつつ、トキヤは目の前にいる金髪バーテン服から目をそらせない。
サングラスの奥に潜む獰猛な光を帯びた瞳で射抜く静雄はじっと睨みつける。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
数秒の沈黙。
たかが数秒、されど数秒。
殺気を向けられる事などそんなに無かったトキヤだったが、今回の数秒は永遠にも感じられた。
「・・・、・・・ぁ・・・?」
ふと。
無言の睨み合いを続けていたトキヤと静雄だったが此処でトキヤはある事に気付いた。
金髪とサングラスに目がいってしまっていて今まで気付かなかったが、この人の顔立ちは、
(・・・誰かに、似てる?)
熱に魘されてはいたが確かにトキヤは静雄の顔を見ている。
池袋では最早常識とされる知識、平和島静雄についてトキヤがしっかり知っていたら。
誤解なんて招く事はなかっただろうがもう遅い。
金髪、バーテン服。長身痩躯。
その単語だけで池袋の住人は自ずと察すだろうと思い、栞も静雄も敢えて紹介する事は無かったのだ。
なにせ自分達の苗字は珍しく、尚且双方の名を知っていればどんなに鈍い人間でも彼ら兄妹の関係性に勘付く事は容易い。
トキヤが正解に近付こうとしていたその瞬間。
沈黙を破ったのは静雄の方だった。
「・・・俺は、暴力が嫌いだ。
だがあいつが傷付いているのに気付いてんのに何もしないなんて俺は其処まで出来た人間じゃねえ。
だから、」
そう覚悟を決めた声音で最後の言葉を言おうとした時、
「あっ幽さんだ!おーい幽さーんっ!!」
「居」(いた)
「っ!!」
「九瑠璃!舞流!」
手を振り幽の名前を連呼する舞流と僅かに声が上擦っている九瑠璃の首根っこ付近を片手で持ち上げた静雄に本日何度目かによる驚愕がトキヤを襲う。
女子中学生とはいえ片手で持ち上げるなんて所業はトキヤでさえ無理だ。
だが目の前の金髪の青年は眉一つ動かさずに平然と持ち上げつつ移動している。
「栞の仕事の邪魔をすんじゃねェ」
「えっ?!ちょっ、幽さーんっ!ねえ静雄さんっはーなーしーてー!」
「・・・・・・」先程のチンピラ相手ならトキヤでも何とかなっただろうが、この青年を相手取れと言われたら多分無理だ。
何となくではあるが彼は肉体的に早乙女や那月と近いのではないか。
そんな予感が彼の中にあった。
―――そうして。
トキヤと静雄も次の瞬間、事件に巻き込まれる事になる。
「―――っっ羽島幽!!」
『!?』
「・・・・・・」
栞の目がゆっくりと細くなったのに気付いた者は誰もいない。
殺害予告まで、あと
主人公がまだ出ない。
早くキャラを絡ませたいけど、正直アニメ通りなので・・・。
ぶっちゃけ帝人と杏里の立ち位置を音也と春歌にしても良いかなと思ったけどアイドルの卵としてそれはダメだと思いボツ。
20150426