花雪シンフォニア | ナノ

「・・・・・・」

トキヤに手を引かれた時より雨は落ち着いてきているのを視界に入れると、栞は瞼を伏せて憂いを帯びた表情を浮かべた。


私と僕。
平和島幽という人間ではなく平和島栞がいる世界。

もう殆ど思い出せないが、それでもあの褐色の肌の男があの乙女ゲームの登場人物であるという事は分かる。

さあさあと雨が降る中、栞は傘を差しながら彼と対峙した場所へと足を運ぶ。
すると其処には傘も差さずに静かに佇む青年―――愛島セシルの姿が。


「・・・・・・」
「・・・・・・質問の答えがまだだったから、返事をしに来たよ」
「Yes.アナタがいずれ近いうち此処に来る事は分かってました」
「そう。入れ違いにならなくて良かった」
「・・・・・・」
「・・・・・・」

何故知っているのか、なんて質問はしない。
質問されたら、同じように投げ返されるのが分かっているから。

長くて短い沈黙の末、口を開いたのは彼女の方だった。



  ♂♀



山田一郎さんが入室されました

山田一郎【こんちゃー】
エルー【あ、山田さん、ばんわー】
しゃるる【やっほーw】
山田一郎【遅れましたすみません!】
エルー【だいじょぶだいじょぶ】
エルー【今話題急上昇中のアイドルについて語ってたところだよ!】
山田一郎【皆さん今なんのはな・・・アイドル?ですか?】

奏さんが入室されました

しゃるる【お】
エルー【来たねー】
奏【お待たせー!待ったかー?】
山田一郎【こんばんは奏さん】
しゃるる【待ったよ、そしてお休みなさい】
エルー【明日の朝はちゃんと起きるんだよ】
山田一郎【ww】
奏【ヒデェ!!オレに味方はいねえの!?】

しゃるる【(°ω°)】
エルー【(°ω°)】
山田一郎【(○ω●)カッ】
奏【ヤメロその顔腹立つ、つか最後の顔!
何でそんな目でこっち見るんだよおおおおお!!】





山田一郎【さて奏さんいじりも此処までにしておきましょう】
エルー【ソウダネ】
しゃるる【大体満足した】
奏【お前らオレの事嫌いだろなあそうなんだろ?】
山田一郎【知らない方が良い事もあるんですよ】
奏【お前一度面を貸してくんね?】
山田一郎【僕の顔を具体的にどうするんですか?】
奏【決まってんだろぶっとばす】
エルー【話が飛んだけど、何の話してたっけ?】
奏【え】
しゃるる【アイドルの話だよ。
最近色んなアイドルが出てきてるねーってところまで話してた】
エルー【あーそうだったそうだった】
奏【無視すんな!】
エルー【何か騒いでる人は放っておいて】
奏【おい!】
しゃるる【あれ話混ざらないの?】
山田一郎【え、そうなんですか?】
奏【・・・・・・混ざる】

しゃるる【・・・で、えーと・・・ああそうだ、アイドルっていえばさ最近羽島幽色々な番組に出てるじゃん?】
山田一郎【羽島幽ってあの有名な女優ですよね?】
奏【活動の幅が広がってアイドル扱いもされてるよな】
エルー【その羽島幽がどうかしたの?】
しゃるる【いや最近変な噂があってさ】
山田一郎【?】
エルー【噂?】
奏【・・・あ、それってもしかして例の予告のヤツ?】
しゃるる【そうそう、羽島幽の殺害予告について!】
山田一郎【え何ですかそれ】
しゃるる【最初ガセかと思ったけど、どうやら本当らしいよ】
しゃるる【ネットの書き込みでお祭り状態だしね】
奏【明日からせっかくの休みなのに物騒な話だなー】
エルー【芸能人も大変だね】






  ♂♀



「・・・見る限りだといい具合で噂が流れてるようで何より。
さーて後はシズちゃんに『妹さんが危ないよ』ってメールしておこうかな」

純粋さとかかけ離れた、最大級に歪んだ笑みを浮かべながら携帯とパソコンの画面を見る黒髪の不穏分子。
彼の脳裏に描くのは果たして有害か無害か。

  嵐の前の静けさ

というわけで察しの良い方はこの後の展開はわかったと思います。
さてこれにて8章は終了。
次から最終章です。

20140918