花雪シンフォニア | ナノ

私は今までデュラララ!!の世界に転生してしまったのだと思っていた。
だけど、その認識は今日この日をもって覆されてしまったようだ。



「栞、何処の高校に行くのかもう決めたのか?」
「・・・・・・まだ決まってない」

そろそろ進学校を決めておかないといけない時期になった。
二回目の中学生なので、成績は問題ない。恐らく推薦は貰えるだろうと踏んでるので、言うならばより取り見取りと言う奴である。

「・・・・・・」

そして今、私はリビングにて何処の高校に入ろうか悩んでいる。
机の上には沢山の高校のパンフレット。
その中から幾つかピックアップし、更に吟味しようと思うのだが中々決まらない。
とりあえず兄さん達が通う来神には行かないことは決めている。ゴメンね兄さん。
決して兄さんが嫌なんじゃないよ、ただあそこにはあの折原臨也がいるから。


その兄さんはテレビを見ていたが徐ろに私の横に座って沢山あるパンフレットの一つを手に取る。
・・・・・・一緒に探してくれるのだろうか。
それともいつまで経っても決めない私に痺れを切らしたのだろうか。
え、私死亡フラグ?


「栞が行きたいところってどういうところだ?条件や基準とか」

あ、良かった。死亡フラグは回避された。
否、元々たっていなかったと言うべきか。

「・・・あまりない。
とりあえずそんなに遠くない所が良いかな」
「交通便が良い所か。
・・・・・・栞、一応言っとくが来神には行くな。
ノミ蟲が居るからな」

・・・その折原臨也にもう会ったって言ったら家が壊れるだろうな。
現に今でさえ、米神に青筋が立っているし手に持ったパンフレットがぐしゃりと音をたて、皺まみれになってる。
下手に刺激したら私は死ぬ。これ確定事項。


「うん、分かった」

チキンな私はこの一言を返すのに精一杯だった。



  ♂♀



それから十五分後。
私と兄さんは色んなパンフレットを見たのだが、どれもピンとくるものが無いままただパンフレットを読んでいた。

「・・・・・・?」

その時、ふと目に入った一つのパンフレット。
そのパンフレットには高校ではなく専門学校と書かれていた。

(・・・・・・あれ?)

思わず眉を顰めた私はそのパンフレットに手を伸ばす。

私は高校に進学するつもりでパンフレットを取り寄せた。
なので専門学校の分は取り寄せていない筈なのだが。
そう思った瞬間、耳に入ったのは付けっ放しにしていたテレビのCM。

そのCMのキーワードに栞は耳を疑った。
『早乙女学園』『アイドル』『作曲家』『シャイニング早乙女』などなど。
ここではない、"前"の世界で聞き覚えのある言葉に栞は脳内フリーズする。

そんな中で静雄が発した言葉は遠くで聞こえたかのような錯覚を感じた。

「早乙女学園って確か倍率200倍の有名な専門学校だったよな。」
「・・・・・・・・・・・・え」

兄さんの言葉に思わず目を見開く。
兄さんも知っているのに私が知らないなんて、どれだけ世間に疎いんだ自分。
いやいやそうじゃなくて。

『早乙女学園』というのは別の物語に出てくる学校の名前だ。
"前"の記憶が曖昧とはいえ少なくともデュラララ!!では無かったことは覚えてる。
まさか、この世界はデュラララ!!とあのゲームが混ざった世界だというのか。

「つか栞が持ってるのって早乙女学園のやつじゃねェか?」
「・・・・・・・・・・・・」


恐る恐る下へ―――手元へと視線を向けると兄さんの言う通りの学園名が書かれていた。

・・・・・・え、マジですか。


あまりの驚愕的事実に私は暫くまともに志望校を選ぶことが出来なかったのは言うまでもなく。

  転生少女と世界邂逅

はい、漸く主人公が認識しましたー。それにしても遅すぎだろ・・・。
utpr要素が此処で出てきた。しかしキャラが登場するのはもう少し先になりそうです。

20120312