花雪シンフォニア | ナノ

!アニメ設定

「おっ」

翔が楽屋に設置されていたテレビの電源を付けると映し出された画面にはかの有名な女優、羽島幽の姿が。

早速自分と同じグループであるトキヤに伝えるべく、翔は振り向いた。

「おーいトキヤ!テレビ見てみろよ!羽島幽が映ってるぞ!」
「ッ!」

羽島幽という名に反応し、いっそ見事な勢いで振り返ったトキヤ。
・・・その余りの速さに翔を含め、全員が若干引いたのは此処だけの話である。


『羽島さん、いよいよ公開まで残り一週間となりましたが「カーミラ才蔵」は羽島さんにとってどういう人物ですか?』
『・・・そうですね、彼は尊敬すべきキャラクターです。
彼は本当の愛を知っている素晴らしい忍者だと思います』

テレビの内容はどうやら、羽島幽のデビュー作『吸血忍者カーミラ才蔵』続編のインタビューらしい。
女優なのにデビュー作品が男装って一体。

というより、本当にそう思っているのか分からない位の無表情ぶりである。
実際、インタビュアーも困惑しきっているのがよく分かる。

仏頂面が多い聖川やトキヤだって此処までではない、筈だ。と翔は声に出す事無く、心中で止めた。
だが。

「・・・なんか、本当にそう思っているのか分からないレディだね、本当に」

翔が思っていたことをそのまま、レンが代弁するかのようにそのまま其の言葉を口にした。
次いで楽屋の空気は凍りついたような、気がした。


(・・・今・・・)
(二回言った)
(大事な事だから二回言った)
「レン君、今『本当に』を二回言いましたねぇ」
((那月ぃー!!))(四ノ宮!!)


レンの発言に翔、音也、真斗は内心で突っ込むが那月はそんな彼らを他所に朗らかに三人が言えなかった事を言い切った。
羽島幽の陰口や非難めいた言葉はトキヤにとって最早禁句に近い。
トキヤと彼女に一体何があったのか、未だにトキヤは話してくれない為詳細は不明だが、彼女と浅からぬ仲である事を知っているメンバーはレンに明日の朝日を拝めるだろうか、と思わず逃避した。
しかし(レンにとって)幸運にもトキヤはレンの発言を聞いていなかったらしい。

代わりに彼らの耳は思わず耳を疑うような台詞を確かに捕えた。・・・捕えてしまった。

「・・・少し緊張しているのでしょうか、いつもより声が硬いような・・・」


・・・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え?


「・・・・・・・・・トキヤ?」
「・・・何ですか、音也。私は此方に集中したいので手短にお願いします」
「・・・・・・・・・やっぱり良いや。ゴメン、何でもない」
「そうですか」

トキヤがテレビに集中する中、残りの五人は静かに目をやり、『分かる?』『いや全然』といったアイコンタクトを交わしていたのだが、勿論トキヤはそれを知らない。

▽トキヤ は しゅじんこうのひょうじょうを よみとるスキル を みにつけた !



!両想い

「栞さん、何故隠れているんです、観念して出て来たらどうですか」
「・・・・・・嫌」
「・・・・・・(グサリ)」


トキヤ君の何かが刺さった音がした気がするけどこの際無視しよう。
ぶっちゃけ今それ所じゃ無い。

というより何でこんな事になったんだろう。

トキヤ君が家の合鍵を持っていたことを忘れていた所為で、急遽トキヤ君から隠れる事にした私。
原因は只一つ。

「・・・・・・・・・・・・」

朝起きると私の髪の間から出ている二つの三角巾(仮)
髪と同色の"ソレ"は触ってみると温かいし感覚も伝わってくる。

誰に言われなくても理解した。・・・理解せざるを得なかった。


「・・・・・・猫耳?」
「―――ッッ!!」

ビクリ、と肩を大きく震わせた私の背後にはいつの間にかトキヤ君が。
・・・なんか今トキヤ君の性格的にえらく不似合いな単語が出てきたような気がする。

「・・・・・・栞さん」
「・・・・・・」
「失礼します」
「ぇ、」

スッと手を伸ばされ、思わず身体が固まってしまった私を他所にトキヤ君が触れたのは猫の耳。
・・・そう、不本意ながら何故か朝起きたら猫耳が付いていた。
原因が分からないだけに異常現象なんだけど!て、いつの間にか抱きしめられてるし・・・!
否、それよりも。

「・・・・・・ッ」
「もしかして感覚があるんですか」

その通り!分かってくれたようで何より!
という訳で、トキヤ君お願いだからその手を退けてぇぇ!!

「・・・っくすぐったい・・・」
「・・・・・・・・・」

小さくピクリピクリと反応する栞に加虐心とまではいかないが自分の中で何かが膨れ上がるのをトキヤは気付く。
その間も栞は内心で絶叫していたがトキヤは其れに気付かない。

「・・・ッと、キヤく・・・!」
「栞さん」
「・・・、?」
「予定変更です、今日一日この部屋で過ごしましょう」
「・・・・・・・・・原因を探すんだよね?」
「原因を探しつつ、二人で一日を過ごすことにします」
「・・・・・・・・・」
「おや、耳だけでなく、尻尾まであるんですね」
「!?」

耳で衝撃を受けていた為、尻尾の存在がある事まで気付かなかった栞は黒曜石の如き双眸を瞬かす。
次いでそれを指摘したトキヤの声で悟る。


(絶対にこの事態を楽しんでる・・・!)
「さて栞さん、此処ではなんですし、移動しましょうか」

いつにないトキヤの弾んだ声に栞は文字通り絶句した。

さあこの後、一体ドウナルンデショウネー?
本編では主人公に振り回されているトキヤですがそれ以外だと立場逆転するのが『花雪』クオリティ。
否どちらかと言えば『花片』Aっぽい?
でもそれだと合鍵の件諸々に矛盾が生じるか・・・(汗

20140329(再up)