花雪シンフォニア | ナノ

結局何故シズ兄さんとセルティさんが叫んだのかよく分からなかった私の脳内は?マークばっかりだ。

・・・私、何か変な言ったっけ。
否、今はその話は置いておいて、また次の機会に聞くとしよう。
それよりも今は一ノ瀬君(仮)だ。


「・・・」


私の目の前には今荒い息を繰り返している一ノ瀬君(仮)がいるんだけど・・・うん、ホントに何でこうなったんだろ・・・?
何一つ悪い事なんてしていない筈なのに、傍から見たら充分犯罪っぽいんだけど!
ていうか相手が十代、私が二十代の時点でアウト決定だよ!
うわぁあ改めて実感するけどこのマンションがセキュリティ万全で良かった!
卯月さんに社長、その節はお世話になりましたぁぁっ!


「・・・っん、」
「!」


栞が内心感謝の気持ちを飛ばす中、トキヤの掠れた声に栞はビクリと肩を震わせた。


い、今はそうじゃなくって!


「・・・・・・熱い」

ぺたり、とトキヤの額に自分の掌を当てると感じたのは明らかに異常な体温。


(・・・えーと、看病の仕方はとりあえず・・・)


もう遅いし明日の仕事に響くといけないからと帰してしまった兄は骨折等の身体的な怪我が多く、それに対する看病の仕方は我ながらプロだと思える位だが今回は外科的なものではなく内科だ。


・・・そういえばシズ兄さん、風邪ひいた事あったっけ?


過去を振り返りながらも、栞は汗を拭く為のタオルを取りに席を立ったのだった。



  ♂♀



「・・・ん・・・?」


ぼんやりと視界に映るのは乳白色の天井。
次いで照明、本棚。

入った事も無い部屋なのにも関わらず、何故見覚えがあるのだろうか。


「・・・?」


何処で?
―――そうだ、確か。
確か、白衣の男と金髪の男。そして巷で噂の都市伝説、首なしライダーがいた場所とそっくり・・・・・・え?


トキヤは其処まで反復すると自分の思考に凍り付いた。


(・・・・・・首なしライダー・・・・・・?)


「・・・・・・・・・!?」

バッと勢い良く飛び起きたトキヤは辺りを見渡し、確信する。
やはり、此処は自分の知る部屋ではない。
見たところ、誰かの寝室であるようだがかなりシンプルに整えられている為その"誰か"の性別や人物像は掴めない。

自分が何故此処にいるのか。
それすらも分からないとは。


「・・・とりあえず、部屋を出ましょうか・・・」


トキヤの声のみ空気に響く。
他に音はなく、静寂のみ。
まるで、世界から切り離されたような感覚を覚えながらもトキヤは気だるい身体を叱咤しつつドアへと向かう。


(・・・身体が・・・妙に重い、ですね・・・)


そう思いながらドアノブに手をかけた瞬間。

がちゃり、

「!?」
「・・・・・・目が覚めたんですね」

黒曜石の双眸と目が合った瞬間、文字通りビシリと固まるトキヤ。
一方無言でそんな彼を見つめるのは、とても「良かった」と安堵しているとは思えない栞。
そんな光景が約三分程広がっていたのだが、誰もそれを見る事はなかった。

  彼と彼女の再会劇

大変お待たせしました!
漸く二人が再会しました(汗
連載当初考えていた二人の再会をどういう風にしようとしていたのか今ではもう思い出せません。
・・・どういうのにしようとしてたかな・・・(遠い目

20130418